ITのイマを俯瞰しミライを予見する羅針盤「NTT DATA Technology Foresight 2021(※)」。最新トレンドを紹介する本シリーズの第3回は、革新的な技術変化を示す「技術トレンド」から、「ソフトウェア主導の拡大」と「データ駆動の進展」を紹介します。
TT03 ソフトウェア主導の拡大
ソフトウェアがサービスからモノまで価値を規定する時代が本格化しています。ビジネス活動の多くがソフトウェアを必要とする一方、その開発を担う専門家不足が問題となっています。ソフトウェア開発を容易にするツールの充実、AI活用による生産性向上、連続的改善に最適化した組織作りが今、注目されています。
ローコード/ノーコードと呼ばれるツールは、専門家でなくとも簡単な画面操作のみでソフトウェアを作成し、クラウド上で運用することができます。これらツールの活用によりユーザ自身が自分の業務に合ったソフトウェアの開発を担うことができます。
ITの専門家によるソフトウェア開発の生産性を向上させるため、AIの活用が始まっています。自然言語処理AIを応用することで、異なるプログラミング言語間の変換や、自然言語からプログラムの自動生成を、より高い精度で実現できるようになりました。現在、このようなAIはOSSプロジェクトのソースコードを学習データとして活用しています。今後、ソースコードの性質が違う、業務ソフトウェアの開発で利用するためには、それに適した学習データを集める必要があるでしょう。
物理的なモノ作りでもソフトウェアの重要性が増しています。特に自動車は、ソフトウェアのアップデートにより製品の買い替えよりも早いサイクルで新機能を提供し、ユーザへの提供価値を高めているのです。こうしたソフトウェアによる継続的な価値提供を実現するために、自動車メーカーでは、よりモダンなソフトウェア開発手法の導入と、それに合わせた組織構造の見直しを始めています。同様の動きは、今後あらゆる産業へ広がっていくでしょう。
TT04 データ駆動の進展
データ駆動をより幅広い領域で活用すべく、データ収集・分析技術の改善やプライバシー保護対策の具体化が続いています。
膨大な量のデータを集め、分析を経て意思決定や課題解決を図るデータ駆動は、今や社会やビジネスの基礎となりました。ミリ秒単位で計算する精確な与信判断から圧倒的なスピードで開発されたワクチンまで、多くの成果がデータ駆動によってもたらされており、一部の企業はより多くのデータを集めるべく惜しみない投資を続けています。
このデータ駆動を進めるための技術開発が非常に活発です。例えば、衛星リモートセンシングは高精細かつ高頻度な衛星画像の取得を、Edge AIは捉えることが難しいリアルタイムな蚊のモニタリングを実現しようとしています。また、100年前の詳細な街並みといった直接収集することが困難なデータについても、既存のデータとAIから新たに生成する挑戦が始まっており、データ収集の自由度を高めています。こうして収集されるデータは膨大な量となり、もはや人がハンドリングできる範疇を超えています。そこで、AIによるデータの分析支援が進行しており、論文の要約や表データからの情報抽出など、支援可能な対象の幅を広げています。
データ駆動が加速する一方で、プライバシー侵害のリスクが増加しているのも事実です。各国で法や規則の整備が進む中、プライバシー保護を技術的に担保すべく、Federated LearningやOn-Device AIといった、データを外に出さずに活用する試みが具体化しつつあります。データ駆動が進展する上でデータ活用とプライバシー保護の両立は喫緊の課題であり、技術によるアプローチは今後も注目すべきでしょう。