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2024.10.29業界トレンド/展望

金融業界データドリブンカンパニーへの変革~地域金融機関におけるデータ活用事例~

近年金融業界は、既存金融サービス領域への異業種の参入、デジタル化による顧客行動の変化など、外部環境の変化による影響を大きく受けている。金融機関にとって既存データの有効活用はこれまで以上に重要な課題となっているが、「何から始めたらよいか分からない」、「何のためにやるのか明確でない」といった悩みを抱えていることが多い。
本稿では、NTTデータが持つ金融機関支援の豊富な経験や実績、ノウハウをもとに、データ活用の【はじめの一歩】として効果的なデータ活用のユースケースを紹介する。

目次

金融業界におけるデータ利活用の動向

近年、ユビキタスコンピューティングが実現されてきていますが、2030年にはこの流れはさらに進むと予想されます。金融業界でもフルデジタルが実現され、個人に最適化した高度な金融サービスが提供されるようになるでしょう。また、業界を横断した業務やサービスによってお客さまのニーズに応えていくという変化が生じると考えられます。

では、金融機関の現状はどうなっているのでしょうか。データをもとに経営判断を行う「データドリブン経営」の観点において、データ利活用成熟度は次の4つのフェーズに分類することができます。Stage 0は「経験と勘による属人化」、Stage 1は「実数把握の高速化」、Stage 2は「意思決定の高度化」、そしてStage 3は「意思決定のスマート化」です。都市銀行は基盤やBIツールの導入が完了しており、それらを活用した予測や提案などのStage 2「意思決定の高度化」に注力していくフェーズにあたります。一方で、地域金融機関はこれから基盤やツールを導入し、Stage 1「実数把握の高速化」に注力していかなければならない段階です。

地域金融機関で実践中!効果的なデータ活用ユースケースとは…?

1. データドリブンカンパニーへの変革を成功に導く進め方とは

事例の紹介の前に、まずデータドリブンカンパニーへの変革について弊社として推奨している進め方や考え方について共有します。

弊社テクノロジーコンサルティング事業本部では、データやテクノロジーを起点にしたコンサルティングによりデータドリブンカンパニーへ導き、その結果お客さまのビジネス価値を創出するというミッションを掲げて活動しています。事業本部の活動の中で、弊社の過去10年以上に渡る実績をベースにした「デジタルサクセス®プログラム」というプログラム・方法論を整備しています。これは、企業のデータ活用やデジタル変革を成功に導くためのNTTデータのノウハウ・方法論を体系化した支援プログラムです。下図が示すように、データドリブンカンパニーへの変革に向けて必要となる4つの要素である(1)ビジネス(2)IT・Tech(3)データ・アナリティクス(4)人材・組織を段階的に変革していくプログラム/メソドロジーになります。

デジタルサクセス®プログラム

デジタルサクセス®プログラムをもとに弊社が推奨している進め方は、まずはデータドリブンでどのような変革を行いたいのかという変革の方向性を”大きくざっくり”考え、変革に向けて優先となる業務やテーマから”小さく早く”スタートさせ、効果が見込まれた業務やテーマの中で習慣化させます。そして、他部門やテーマに横展開してユースケースを積み上げながら拡大させていくというアプローチです。ここで重要なのは、構想を作り上げる際には、数週間から長くても3カ月程度を目途として、100%の完成度を追い求めないということです。目指すビジョンは大まかに優先となる業務やテーマを決め、早々に着手して、活動を通じてビジョンや各種計画をブラッシュアップしていくことが重要です。

まず、”大きくざっくり”考えるとはどういうイメージか、地域金融機関の事例をご紹介します。本事例では、総合企画部や営業企画部といった本部としてのデータ利活用で目指す姿や方向性を示しています。従来は各部が保有するデータの依頼や取得に時間を要していたため、サマリされた計数を集計し、部長から役員へ報告していました。しかし、役員からの要望による修正や各部へ追加の依頼といった手戻りが多く発生していました。また、営業部門への共有タイミングが月次報告間近だったため、集計値をもとにした打ち手を考える時間がありませんでした。さらに計数のみのデータから示唆は得られず、経営陣は限られた情報の中で判断せざるを得ませんでした。

そこで、データ利活用で目指す姿として、手戻りなく誰もがデータを自由にすばやく閲覧や共有、深堀ができるという将来像を示しました。これが実現されれば、営業部門が数値をもとにした現状理解や打ち手を検討する時間が生まれ、経営陣には深堀りしやすい形で事実が共有され、適切な判断ができるようになり、全体として生産性の向上にも寄与できるようになります。本事例は1か月程度の期間で整理されています。

本部としてデータ利活用で目指す姿

次に”小さく試しながら”実践するには、どのような取り組みから始めると全行の活動につながっていくのでしょうか。下図は弊社がご支援した事例をベースに、金融機関におけるBIでのデータ利活用がどのような業務に適用されているかを整理したものです。

金融機関における業務別のデータ利活用(BI)

2. データ活用の【はじめの一歩】

とある金融機関の取り組みが全行でのデータ利活用につながった糸口は、最初のユースケースにおいて、BIによるデータ集計などの業務の自動化や、過去データの再活用により事実に基づいた打ち手の検討ができるということを、マネジメント層に体感してもらえたことだそうです。データ利活用には、各業務部門からのボトムアップと合わせて経営層からのトップダウンの活動がとても重要になります。

では、トップダウンの活動につなげるための、マネジメント層の目に触れるユースケースについて具体的にご説明します。下図は経営・営業情報の一元化・高度化というユースケースです。データ利活用前はレポート作成に多大な工数がかかっていたため更新頻度が限定的で、結果のサマリの報告に留まっていました。そのため、レポートから経営層が何か示唆を得て、意思決定を行うことが出来ませんでした。

そこで、まずはIT部門に限らず誰もがデータを利活用できるBIツールであるTableauを導入しました。ビジネス部門で複数データの自動集計や加工を出来るようにし、ビジネス部門自らレポートやダッシュボードを作成出来るようにしました。また、ブラウザーで関係者へ集計データや作成したレポートを共有できる環境を構築しました。

経営・営業情報の一元化・高度化(データドリブン経営)

このユースケースで創出できる効果として、大きく3点あります。1点目は、経営・営業情報の一元化・効率化という観点で、複数データの自動集計や加工などの業務効率化により工数が削減され、現状把握や戦略立案に時間を充てられます。2点目は、多角的な視点を持った経営判断という観点で、さまざまな切り口でデータ分析をすることで読み取れる事実が増え、事実に基づく効果的な打ち手の判断ができます。また、作成したレポートをそのまま関係者に共有できるので、マネジメント層との合意形成の時間も短縮されます。3点目は、目標達成に寄与する施策の検討という観点で、今まで確認することができなかった計数情報以外に、顧客情報やマーケット情報といったデータを組み合わせて現状を把握できるようになります。その結果、支店ごとに置かれている状況に合わせた提案すべき商品などが明確になり、店舗の目標達成に寄与できるようになりました。

経営・営業情報の一元化・高度化(データドリブン経営) | 創出価値

まとめ

データ利活用には、各業務部門からのボトムアップと合わせて経営層からのトップダウンの活動がとても重要になります。経営層にアプローチできる取り組みとして、「経営・営業情報の一元化・高度化」を例としたユースケースから始めることが地域金融機関におけるプロジェクトの進め方のポイントとなります。現状を正しく把握し、そこから深堀分析をしていくことで、課題をスピーディーに発見して次のアクションにつなげること、またそれを繰り返していくことで業務改善が実現されると考えます。

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