変化と進化が問われるリアル店舗の対応
スターバックス×NTTデータ×ネットイヤーグループ 各社の取り組み
顧客の消費行動は、スマートフォンの高機能化と相まって、インターネットを介し多くの選択肢から、よりニーズに合う商品をすぐに購入できるようになり、手軽さと速さによるメリットを顧客は享受している。
しかし、リアル店舗においては朝や昼のコンビニをはじめ、飲食店・衣料品店などではレジの前に会計待ちの長い列ができるのが現状だ。この状況を変える取り組みとしてNTTデータは『レジ無しデジタル店舗出店サービス(※)』の実証実験を2019年9月から開始した。
今後加速するであろうこのような店舗のデジタル化の流れをどのように捉えているのか、店舗での体験価値を重視し、多くの顧客から支持されているスターバックス コーヒー ジャパンのデジタル戦略本部長 濵野努氏は次のように語る。
「スターバックスにおいても、お客さまから『レジの待ち時間が長い』といった声を多く頂いています。デジタルを活用し、レジに並ばない新しい顧客体験を作っていくことをめざした結果が、2019年6月に提供開始した事前注文・決済サービス『Mobile Order & Pay』(モバイルオーダー&ペイ)につながっています。顧客ニーズの多様化が進む状況下で、『スピード』や『接客』などそれぞれのお客さまに合ったサービスを提供することが体験価値をさらに高めることであると考えています」
スターバックス コーヒー ジャパン デジタル戦略本部長 濵野努氏
デジタルで企業価値を高める発想が大切
企業はどのようにデジタル活用を進めればよいのか、ブランドを維持しながらデジタル展開する考え方について、ネットイヤーグループの代表取締役社長 CEO 石黒不二代氏は「新しい技術はすぐに追いつかれる。先行優位はあるがデジタル技術のみで差別化ができるとは思えない。スターバックスはスタッフであるパートナーを大切に店の雰囲気づくりを研究し、常に顧客中心の姿勢を徹底してきた。それが根強いスタバファンを生み出し成長の原動力になってきた。このブランド力を生かしながらデジタルの仕組みを取り込んでいくことで、新たなビジネスモデルができあがってくると考えている」と話す。
ネットイヤーグループ・代表取締役社長 CEO 石黒不二代氏
濵野氏は「スターバックスの店舗では、コーヒーのカスタマイズをはじめオペレーションが複雑化していることから、デジタル化を進めて、より効率の高い新しいオペレーションを構築しています。しかし、簡素化することによる商品・サービスクオリティの低下やお客さまとのコミュニケーションが減ることは避けなければならず、バランスをとった簡素化が大切だと考えています。デジタルを活用することは必要ですが、自分たちのビジネスモデルを変え、台頭するベンチャー企業などの最新事例と同質の展開で勝負しても結果はマイナスしかないと思います。これまで磨き上げた自分たちの持つ価値が何かを考え、それをデジタル活用で伸ばし、対抗していく手法を考えていくべきです」という。
前述の『レジ無しデジタル店舗出店サービス』を主動するNTTデータSDDX事業部の部長 風間昭男は「大事なことは顧客の満足度の向上のために何を用意するのかという事。ただ、これまでのようにアナログでの対応ではコストがかかりすぎてしまうため、デジタルをどのように活用するのかが重要になります。NTTデータはデジタルを『適用』することではなく、それを使える状態にし、実際に店舗での買い方が変わることまでを意識し、『活用』することで初めて競争の源泉になると考えています。私たちが考える新しいお店の再定義は、デジタルを活用した顧客接点をどのように作っていくかということで、その形の一つが『レジ無しデジタル店舗出店サービス』です。さらにその先には消費者の満足度向上というメリットだけでなく、新たなビジネスの誕生までももたらすでしょう。」と話す。
NTTデータ SDDX事業部 デジタルエクスペリエンス担当 部長 風間昭男
リアル店舗でのデジタル化は、顧客に利便性を提供し企業にとっても得られるメリットが大きい。そのための技術は整いつつあり、今後新しい時代がやってくるのは間違いないだろう。デジタルを導入する店舗(企業)は、顧客から支持され企業価値を高める展開につなげられるかが大切になる。改めて企業自身が持つ強みとブランドを再考していくことがデジタル化には不可欠なのだろう。
(本記事は、NTTデータ×ネットイヤーグループ主催「エグゼクティブラウンドテーブル」の内容を編集・要約した上で構成しています。)