クラウドが求められる背景とトレンド
スモールスタートやすぐに実現したいといったビジネスニーズの変化やAI、IoT、5Gといった日々進化するIT技術の活用、安定運用やコスト最適化といった既存システムの継続運用が昨今のIT環境に求められており、IT環境は非常に高度化・複雑化しています。
クラウドマーケット全体の成長率は非常に高く、2025年には約40兆円となると見込まれています。既存システムのクラウド化となるマイグレーション市場は非常に大きく、更に、市場成長率であるCAGRの観点からマネージドの市場が最も成長すると予想されています。2025年にはクラウドが従来のIT環境への投資を上回ると見られていますが、IT市場自体の成長に伴い従来のIT環境への投資も減少するのではなく、ゆっくりと成長していきます。そのため、今後も従来のIT環境とクラウド環境の両方のアーキテクチャが併存し、ハイブリッドクラウドのアーキテクチャが一般的になると予想されます。
ハイブリッドクラウドに向けたITオペレーションの変革
これまでのITオペレーションでは、各々のプロジェクトの中の限られた運用体制の中で、アプリケーションのリリース、処理能力確保による安定稼働、障害発生時の迅速な解析・復旧、セキュリティリスクの分析・対処など多岐にわたる業務をこなしつつ、コスト低減に向けたさらなる運用改善が求められ続けてきました。
また、これまでのインフラストラクチャーは真に必要性が認められない限り、容易な変更を許容されず、変化によるリスクを排除する考え方が主流でしたが、パブリッククラウドは様々なハイパースケーラが激しく優位性を競っているサービスであり、利用者の必要性に関係なくハイパースケーラ側の都合で進化していきます。そのため、パブリッククラウドの運用では、クラウドサービス側の変化をキャッチアップしながら機能追加・変更が安定性やセキュリティなどに与える影響を見極め、進化による利便性を享受しつつ、これまでどおりの運用品質を確保する必要があります。加えて、開発者目線で捉えると、パブリッククラウドの新しい機能を有効活用して生産性の高い開発やアーキテクチャの最適解を求め続けることが正しい姿であり、同じシステム要件であったとしても時代とともに最適なアーキテクチャは変化していきます。つまり、ビジネスニーズに応じたインフラストラクチャーをオンデマンドで実現できるパブリッククラウドの恩恵を得られる一方で、運用現場には広範囲な技術理解力および柔軟な対応力という高いレベルが要求され、既存の体制やプロセスでは現実的に受け入れることが難しく、ビジネスアジリティと安定性確保の両立が実現できません。
一方、従来のシステムではハードウェア・OS・ミドルウェアと様々な組み合わせパターンを意識したITオペレーションが求められてきましたが、パブリッククラウドではハードウェアベンダ・OSディストリビューション・ミドルウェアバージョンなどの違いをIaaS/PaaSの各レイヤに応じて汎化・抽象化したサービスとして提供されており、これまでバリエーションが多すぎて整備困難であったITオペレーションの標準化が現実的となってきました。そのため、サイロ化された運用を個別最適し続けるのでなく、標準化されたITオペレーションを策定し、専門的な集約組織によるアウトソーシングサービスを立ち上げて適用範囲に広げていくことで、全体最適を目指すことが重要となります。
この枠組が浸透することで、開発プロジェクトがこれまで各々担っていたITオペレーション業務から解放され、新たなビジネスニーズへのIT活用に集中でき、ビジネスアジリティが向上します。加えて、アウトソーシングサービスを提供する組織においても、従前のように少人数で幅広い運用業務をこなす形態ではなく、安定運用・障害解析・セキュリティ・コスト最適化などオペレーション分類ごとで専門性の高いチーム編成を行うことにより、新しい技術を取り入れながらサービスの生産性と品質を追求しつづける市場価値の高いエンジニアを育てることが可能となります。
NTTデータにおけるHybrid Cloud Managedの取り組み
NTTデータでは、当社がが提供するクラウドサービスだけでなく、ハイパースケーラを含めた様々なパートナー企業と連携しながら全体最適化されたプラットフォームを「Hybrid Cloud Managed」としてマネージドサービス化しています。そのプラットフォーム上でシステム開発の生産性や質を高めていく「Cloud Consulting」や「Cloud Template」を、IaC技術などを活用しながらすぐに利用できるアセットとして展開し、更にIT投資を最大化するために各システムの継続的な改善を追求し続けるxOps/Hyperatomationに取り組んでいます。