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1.AIエージェントとは
近年、「AIエージェント」はさまざまな業界や業種での活用が期待され、注目されています。NTT DATAでは、生成AI活用のコンセプトである「SmartAgent™」に基づき、AIエージェントに関連するサービス提供を実施しています。SmartAgent™とは、利用者の指示に応じて、AIエージェントが自律的に対象業務のタスクを抽出・整理・実行し、新たな労働力を提供するものです(※1)。
そのサービスの一例である「LITRON® Sales(リトロンセールス)」は、営業領域における各種業務(データ入力、アポイントメント準備、提案書作成、契約書・社内文書作成など)を自律的に支援・代行するサービスです。(※1)。
本サービスを活用することで営業担当者の負担となっている事務処理、資料作成、日程調整などの業務負担を低減し、お客さまへの提案活動など付加価値業務に充てられる時間を創出するとともに、社内外の多様なインプット活用を通じた仮説構築力や提案力の向上を支援します。今後、段階的にユースケースを拡大していく予定です。
NTT DATAは今後もSmartAgent™を中核に生成AIを活用した新サービスの提供を進めていく予定です。
2.Agentspace と NotebookLM Enterprise
Google Cloud社 から AIエージェントを活用するプラットフォームとして Agentspace が発表されました。 NTT DATA では、 SmartAgent™ に Agentspace を活用することをめざしています。

図1: Agentspace 利用開始画面(画像は2025年3月時点のものです)。

図2: Agentspace の画面(画像は2025年3月時点のものです)。
Agentspace は、企業のデータを統合し、AIエージェントを活用して従業員が必要な情報を迅速に取得できるようにするプラットフォームです。2025年4月1日現在では許可リストベースでの一般公開となっています。
Google Cloud にはこれまで、フルマネージドのAI開発プラットフォームである Vertex AI やAIを活用した会話型インターフェースの開発プラットフォームである Dialogflow がありました。 Agentspace の登場により、AIエージェントによる情報検索の以下の課題を解消できます。
- サイロ化された膨大なデータソースからデータを収集
- 目的を達成するための複雑なタスクの自動化
- データアクセスのセキュリティー確保
Agentspace は、 Google Cloud からサードパーティのアプリケーションまで、組織が使用しているさまざまなデータプラットフォームをAIエージェントの参照先に設定できます。そのため Agentspace によって、従業員は企業内の膨大なデータから必要なデータに効率的にアクセス可能になります。タスクの自動化については、近日中に複数のAIエージェントによる自動化がノーコードで実行可能になる予定です。また、検索結果が Google Cloud の IAM によるアクセス制御に基づいて出力されるため、セキュリティーも確保されます。
NotebookLM はアップロードしたファイルの内容を理解する際にサポートしてくれるツールです。チャットを通じてAIにファイルの内容に関する質問をし、回答が得られます。回答の根拠となる元ファイルのテキストを参照することも可能です。現在、 NotebookLM Enterprise が一般公開されています。 NotebookLM Enterprise では、Microsoft Officeファイル(Word, PowerPoint)がデータソースとして利用可能になりました。また、 Agentspace と連携することで、さらにデータを効率的に活用できるようになります。
3.Agentspace の導入効果
今回、 Google Cloud社 にご協力いただき、GA(一般提供)前に Agentspace のトライアルを行いました。本トライアルでは営業活動支援のAIエージェント構築に向けて、LITRON Salesのユースケースを参考に、図3のように顧客の課題などの情報をインプットし、その課題解決に役立つ事例資料を回答するケースを想定し、AIエージェントを Agentspace で実装しました。AIエージェントの参照先には、 Google Cloud Storage を設定し、そこには社内事例について記載されたMicrosoft Office PowerPointファイル(計21ファイル)が保存されています。

図3:事例提供AIの利用イメージ
トライアルでは以下の確認を行いました。
- AIエージェントの設定難易度
AIエージェントを実装するにあたり、接続ソースの設定が容易かどうかを確認しました。また、AIエージェントの出力形式を設定できるかも確認しました。 - 適切な事例を提案できているか
AIエージェントに対し、事例に関係するキーワードや課題を交えて質問し、キーワードに関連する事例、課題解消につながる事例を提供するかを確認しました。回答に提供事例の概要、参考にしたファイル名、事例がどの程度参考になるのかの点数とその根拠を出力するように指示し、その結果も確認しました。 - 課題解決シナリオを提案できるか
特定の課題に対する課題解決シナリオを提案するように指示し、その回答が適切な課題解決シナリオとなっているかを確認しました。
「AIエージェントの設定難易度」は非常に簡単です。AIエージェントの参照先と機能を選択するだけで簡単に構築できました。出力形式についても、図4のように Agentspace の構成画面から自然言語で設定可能でした。

図4:出力形式の設定例(画像は2025年3月時点のものです)。
「適切な事例を提案できているか」について、結果はキーワードでの質問も課題からの質問でも提案可能でした。事例の参考度の評価理由からドキュメントの内容の具体性や詳細性を考慮していることが分かりました。キーワード検索では見落としてしまう好事例も提案できる点が有効です。
「課題解決シナリオを提案できるか」について、結果は提案可能でした。「現状把握と課題の検討」、「深堀分析と課題の定義」、「施策の検討と実行」、「効果検証と改善」と流れを提案し、各段階での取り組みの例も合わせて提案しました。また、接続しているストレージのさまざまなファイルを参照して課題解決シナリオを提供しており、幅広い事例から課題解決シナリオを提供していることが分かりました。
以上の結果を踏まえて、 Agentspace はAIエージェントによる検索アプリを簡単に構築可能だと確認できました。検索アプリは課題解決シナリオの提案まで可能な高性能な事例提供AIとして利用可能だと分かりました。
4.Agentspace と NotebookLM Enterprise の連携
本トライアルにおいて、事例提供AIとしての有用性を確認しました。たとえば、「事例の資料から詳細を確認したいが、ページ数が多過ぎる」といったケースにおいて、NotebookLM Enterprise との連携が有効です。
前述のとおり、 NotebookLM ではAIとのチャットを通じて資料の理解を深められ、引用元もそのまま参照できるため、このような状況に最適です。 Agentspace と NotebookLM Enterprise を連携するとAIエージェントの検索結果にあるファイルを検索結果の画面で NotebookLM Enterprise のソースに追加できます。つまり、この連携により、参考事例の検索から、参考事例の理解まで非常にスムーズに行えます。
このように、 Agentspace は従業員が企業内のナレッジに簡単にアクセスし、知見として活用する仕組みの構築に貢献できます。
5.最後に
AIエージェントに注目が集まる中、今回 Google Cloud社 に協力いただき、 Agentspace のトライアルを行いました。本トライアルの結果は非常に期待できるもので、今後の Agentspace のアップデートを注視していきたいと考えています。引き続き、SmartAgent™で Agentspace の活用をめざして検証を続けて参ります。