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1.テレワークはなくならない
2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染急拡大により、私たちの働き方は大きく変化し、テレワークが拡大しました。
ワクチン接種や感染予防対策が進み、感染者数が低減した時期もありましたが、各種変異株の発生等により、従前のオンサイト中心の働き方に完全に戻ることはできていません。
感染状況が落ち着いたとしても、場所を選ばずに業務ができる等のメリットにより、今後もテレワークは残ると考えられます。また、NTTグループでは今後、リモートワークを基本とする新しいスタイルへの変革を図ることとしています。(※)
2.テレワークで把握しづらくなったシステム開発現場の課題を見いだす
テレワークにより利便性が高まった部分がある一方、システム開発現場では得られた周囲の人の忙しさや、誰かが話し合っている様子といった、非言語情報を感じ取りづらくなっています。テレワーク中心の業務では、メンバーの状況把握が困難であるため、マネジメントの難易度が高くなりやすいと考えられます。
このような状況への対策として、NTTデータでは同意を得た一部のプロジェクトを対象に、社員の行動データ(コミュニケーションログ等の一次情報)を活用した、データドリブンでのプロジェクトマネジメントの高度化に向けた取り組みを行っています。
3.人的ネットワーク分析とは
「ネットワーク」とは、「頂点」が「辺」で結ばれたものを示すものです。
仮にプロジェクトメンバーを「頂点」、コミュニケーションのやり取りを「辺」として表すことで、プロジェクトのコミュニケーション構造を、人的ネットワークとして可視化することが可能です。
リモート環境下でのシステム開発では、メンバーの状況を直接目で見ることができない分、テレワークによって得づらくなった情報を補うことが望ましいと考えられます。そこで、ネットワーク分析の手法と、人々の行動データを有効活用することで、次のことが実現できるようになります。
「プロジェクト全体のコミュケーション状況」の「可視化」を行い、大規模システム開発プロジェクトであっても、目で見て容易にプロジェクト全体のコミュニケーション構造の概観を把握できる。
つまり、プロジェクト全体の人的ネットワークを可視化することで、リモート環境になることにより見落としてしまう可能性があるプロジェクト内の各種課題(過負荷な状況になっている社員の存在等)を見いだすヒントになると考えています。(図1)
図1:人的ネットワーク分析の概略
また、ネットワーク分析の手法は、コミュニケーション状況を人的ネットワークとして可視化するだけではなく、多様な分析に活用できます。
例えば、「中心性」という値を算出することで、ネットワーク内におけるその人物の中心度合いを定量的に表し、プロジェクトのキーマンを把握することにも利用できます。他にも、ネットワークごとの特徴値(クラスタリング係数等)を用いて、定量的な値で階層的な組織か、フラットな組織かを評価することなども可能です。(図2)
図2:人的ネットワーク分析で算出可能な定量値例
このように、これまで定量的な状況把握が困難で、各人の感覚に頼ってきたコミュニケーションマネジメントがデータドリブンで可能となり、より一層リモート環境下でのシステム開発を高度化できると考えています。
4.人的ネットワーク分析で見いだしたシステム開発現場の課題
現在、コミュニケーションマネジメントの重要性の高い、実際の大規模システム開発プロジェクトへ、人的ネットワーク分析を適用した実証実験を行っています。
実証実験の中で、可視化したネットワークや中心性の値に着目することで、以下のような課題を抱えた社員またはチームの存在を、人的ネットワーク分析から特定できることを確認しています。(図3)
【例】
- (1)マネジメント/フォローが行き届いていないメンバーの特定
- (2)チーム内のコミュニケーションが分断されているチームの特定
- (3)極端に中心性の値が高く、負荷が高まっているメンバーの特定
図3:実証実験により得られた示唆例
5.今後の取り組み
リモートワークでの働き方におけるコミュニケーションの重要性は高く、テレワークが普及した現在において、新しいコミュニケーションマネジメントが求められています。その中でネットワーク分析の手法により、コミュニケーション状況の可視化・定量化を行い、リモート環境下でも状況・課題を把握できることを、今回のシステム開発プロジェクトでの実証実験で確認しています。
人的ネットワーク分析はシステム開発に限らず、全般的な組織改善に向けたエンゲージメントの高いチームのネットワークの特徴分析や、組織をまたいだ連携状況の可視化などに対しても活用できると考えているため、各種検証および現場への適用を検討しています。
今後、あらゆる活動がデータドリブンとなるトレンドを踏まえ、NTTデータは積極的なデータ活用により、企業活動を改善し、お客様・社会に貢献していきます。