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IT人材不足が迫る今、ますます高まるプログラミング教育の重要性
「プログラムはIT時代の読み書きそろばん」といった表現を聞いたことがあるでしょうか。小学校でプログラミング教育が必修化されて約2年。論理的な考え方や課題発見力につながるという側面もあり、これからの時代における基礎的な学びとしてその重要性は高まりつつあります。
また、経済産業省がまとめた「2050年の労働需要の試算」によると、「問題発見力や的確な予測などが求められるエンジニアのような職種の需要が増える一方、事務・販売従事者といった職種に対する需要は減る」とされており、将来のIT人材不足を見据えたうえでも、プログラミング教育は注目を集めています。
一方、プログラミング教育の必要性は感じながらも、なにから始めればいいか分からないといった保護者が少なくないのも現実。こどもからプログラムについて尋ねられても、全く答えられずにアタフタなんて話は珍しくありません。
そんな保護者の方に参考にしていただきたいのが、毎年NTTデータが小学生を対象に実施しているIT教育施策『NTTデータ アカデミア』を通じて得られた、プログラミングの考え方や声掛けのコツです。『NTTデータ アカデミア』はSDGsの目標のひとつ「質の高い教育をみんなに」に基づき、ITに触れる機会創出を通じた地域・社会貢献やSTEAM教育(Science、Technology、Engineering、Art、Mathematicsの統合的な学習)の普及などを目的に開催しています。
「プログラミングに詳しくないためこどもに教えるときの参考にしたい」という保護者の声も多く、2022年夏の開催では310組に参加いただきました。実際に体験して、「プログラミングは難しそうという先入観を持っていたが、こどもが難なく習得し、夢中になっている姿を見て驚いた」や「家でも継続してやってみたい」という感想がありました。
こども向けのプログラミング言語『Scratch(スクラッチ)』で仕組みを理解する
プログラミングといえば、アルファベットや数列、記号を組み合わせた複雑なコードを何行にも渡って入力する印象があるかもしれません。そのため、こどもやプログラミングに詳しくない保護者が学ぶには難しいのでは?と思っていないでしょうか。そういった懸念を払拭するため、NTTデータ アカデミアでは、こども向けのビジュアルプログラミング言語で、無料で誰でも使い始めることができる『Scratch(スクラッチ)』を使用しています。プログラミングのしくみをひとつひとつ整理しながら理解できるので、意外と簡単に使うことができるのです。
その仕組みを知ってもらうためにも、NTTデータ アカデミアで実際に教えているプログラミングを例に取り、『Scratch(スクラッチ)』の操作を説明します。
図1は、Scratchのプログラム画面です。左エリアには「命令」のアイコンがあります。このアイコンをクリックすると、命令の具体的な内容が書かれた「ブロック」が現れます。真ん中エリアは命令のブロックをドラッグ&ドロップする場所。一般的にプログラミングといえば、ソースコードと呼ばれるアルファベットや数列の入力が必要ですが、Scratchなら命令のブロックをドラッグ&ドロップするだけでプログラミングが可能です。右エリアでは、このプログラムに基づいて、命令した通りにキャラクターが動きます。
図1:Scratch操作イメージ(1)
実際のカリキュラムの中で、図2のような、猫がマウスを追いかけて動くようなプログラムを書きました。
図2:Scratch操作イメージ(2)
この動きをプログラミングするには、まず、図3のように、「イベント」のアイコンを選択。すると、さらに具体的な複数の命令のブロックが現れます。ここでは、複数のブロックのなかから「緑の旗がおされたとき」を選択。同じように「うごき」のブロックから「マウスのポインターへむける」を選択。これらのブロックを真ん中の画面にドラッグ&ドロップしてブロックを組み合わせます。この時点で、右の画面にある緑の旗を押すと、「ねこがマウスの方向を一回向いて止まる」というプログラムが実行されるというわけです。
図3:Scratch操作イメージ(3)
次に、図4のように左エリアの「せいぎょ」のアイコンから「ずっと」のブロックを真ん中の画面にドラッグ&ドロップして組み合わせると、マウスの方を向いて猫がその場でくるくる回転するプログラムが実行されます。
図4:Scratch操作イメージ(4)
同じように図5のように、左エリアの「うごき」アイコンから「マウスのポインターへいく」のブロックを選んで、真ん中のエリアにドラッグ&ドロップして、先ほど作ったブロックに組み合わせます。すると、右エリアでマウスを動かすと、猫が、マウスを追いかけてついてくるアニメーションが完成。これは、「猫がマウスの方を向いて、マウスの方へ行く、それをずっと繰り返す」というプログラミングを実行したことになります。
図5:Scratch操作イメージ(5)
このように、『Scratch(スクラッチ)』ではコンピューター言語を使用せずに、画面上で命令が色分けされたアイコンを動かし、ブロックと呼ばれるプログラムをつくることで、誰でも簡単にゲームやアニメーションをプログラミングすることができます。しかし命令を組み立てる考え方はプログラミングと変わりないので、とても簡単な操作でプログラミングの基礎能力を身に付けることができるのです。
講師の役割は答えを教えることではなく、答えにつながる気づきを与えること
NTTデータ アカデミアの講師は、全員がNTTデータグループの社員。こどもたちにとって分かりやすい教室を実現するために、社員向け講師セミナーを定期的に開催しています。そんな講師のみんなが最も心がけていることは、「答えそのものを教えるのではなく、答えにつながる気づきを与える」です。考えるきっかけとなる声掛けを行い、こどものやりたいことを分解して、ヒントを出すようにしています。
例えば、「猫を動かして走るようにしたい」とこどもから尋ねられたら、「走るときの手や足の動かし方はどうなっているかな?」とか「スピードは歩くときよりもどうなるかな?」といった形で、一緒に考えて、悩みながら進めます。プログラミングはこちらが与えた命令通りにしか動きません。思い通りに動かなかったらどこが違うのかを考え、何度もトライして失敗し、「あ!こういうことか!」という気づきの機会を大切にします。
そういった教え方の心がけにより、NTTデータ アカデミアに参加したこどもからは、「作る仕組みがわかってプログラミングのすごさがわかった」、「プログラムを改良してほかの人に見せたり、ほかの人の作品を見たり遊んだりできたのがよかった」といった感想がありました。
また、講師として参加しているNTTデータグループの社員にも、新しい発見がありました。講師の一人は、「普段は当たり前にプログラミングをしていますが、一つの動きを分解して考える論理的な思考力など、基礎的な考え方の重要性を再認識して、自分にとっても学びとなりました」と得られた気付きを語ります。
運営に携わった社員も「参加したお子さんが、プログラミングを好きになってくれて、将来ITに興味関心をもってもらえるようなきっかけとなるイベントにしたいと頑張っています。いつかこのイベントがきっかけでNTTデータグループに興味をもってもらえたらうれしいし、どんな業界でもよいので、社会の仕組みをつくる人財になってくれたら、そんなに喜ばしいことはありません」と意気込みます。
日本の社会貢献・地域貢献に留まらず、NTTデータグループの海外拠点も巻き込んだ展開をしていきたい
NTTデータは、プログラミング教育やIT教育が盛んになる前の2004年から、社会貢献活動として小学生を対象に継続的に「こどもIT体験教室」を開催してきました。そして現在は、NTTデータ アカデミアと名前を変え、NTTデータグループ17社が連携して開催しています。2021年度では、NTTデータグループ全体で91回のNTTデータ アカデミアを開催し、2,886名に参加いただきました。
NTTデータ アカデミアは、SDGsの目標のひとつ「質の高い教育をみんなに」に基づき、全国にあるグループ会社とともに定期的に開催することで、多くのこどもたちにプログラミングに触れる機会を提供しています。また世界的に意識されるSTEAM教育(Science、Technology、Engineering、Art、Mathematicsの統合的な学習)の観点をカリキュラムに導入することで、分野横断的な学びを推進し、ITに触れる機会創出を通じた地域・社会貢献を目的に開催してきました。今後は、日本だけに限らず、NTTデータグループの海外拠点とも、“IT教育”という観点で連携することを目指しています。
NTTデータグループは今後も、SDGsおよびSTEAM教育に通ずるIT教育を推進するために、「地域のこどもたちに寄り添い」「こどもたちのITや社会に対する探求心を育て」「IT体験を通じてこどもたちが主体的に行動する力を養える」よう、より多くのこどもたちの探求心を育む活動を進めていきます。
NTTデータでは2023年3月18日・19日にてNTTデータ アカデミアを開催予定です。
2月中旬以降に下記サイトで募集を開始しますので、皆さまからのご応募をお待ちしております。
NTTデータ アカデミア ウェブサイト
https://www.nttdata.com/jp/ja/about-us/socialactivity/academia/nttdata/