ITシステムは"常に変化していくサービス"
ITシステムにおける品質はどういった指標値で評価されるべきでしょうか。これまでは設計・開発フェーズにおける「ITシステムのQCD(品質、コスト、納期)」が中心に論じられており、ITシステムの製品としての完成度が重視されてきました。しかしながら、完成したITシステムがお客様ビジネスに貢献し企業価値を生み出すのは、ITシステムが稼働を始めた後の保守運用フェーズに入ってからとなります。ITシステムを、"完成した製品"ではなく"常に変化していくサービス"として捉え、ITサービス提供者側の視点だけではなく、お客様視点における要望や期待を即座にサービスに反映させていくことが重要です。ITシステムのサービス開始が、お客様との共創(コラボレーション)の始まりになると考えています。近年サービスサイエンスの分野において重要な概念となっている「お客様事前期待」を考慮したITサービスを提供することで、お客様満足度向上にもつなげることが可能となるでしょう。
ITシステム稼働後の品質指標値
NTTデータでは、従来の保守運用フェーズを、お客様へITサービスを提供するための重要なフェーズと位置付けており、本フェーズにおける最適な品質指標値の検討と標準化を進めています。本検討を進めるにあたっては、品質管理モデルとして、ITIL V3参考1でも取り上げられている「狩野モデル」をベースにしています。狩野モデルとは、狩野 紀昭氏によって考案された品質要素の分類および特徴づけの手法として開発されたモデルです。お客様の認識する品質を、基本品質、性能品質、魅力品質の3つの領域に分類して整理することができます。
品質分類 | 概要 | 市販製品の例 | ITサービス提供の例 |
---|---|---|---|
基本品質 | 充足されれば当たり前と受け止められるが、不充足であれば不満足を引き起こす品質属性。 |
|
|
性能品質 | 充足されればされるほど満足し、不充足であればあるほど不満足を引き起こす品質属性。 |
|
|
魅力品質 | 充足されれば満足を与えるが、不充足であっても仕方がないと受けとられる品質属性。 |
|
|
これらの品質分類を参考にして、ITILやISO20000、非機能要求グレードの定義参考2や、プロジェクト事例およびヒアリング等をおこない、ITサービス提供時の品質指標値の検討を進めてきました。その結果として、指標値の定義や測定手順をまとめたものを「ITSMメトリクス(社内呼称)」として作成しました。ITSMメトリクスでは、可用性、キャパシティ、情報セキュリティ、サービス継続性の4大分類で基本品質要素および性能品質要素を整理し、複数の中分類と個別の指標値を定義しています。魅力品質要素については、お客様満足度を大分類とし、ビジネス貢献度を中心にした中分類および個別指標値を定義しています。
NTTデータでは、サービス提供フェーズでのさらなるお客様満足度向上と、お客様ビジネスをITで支援するための継続的な付加価値の提供を目指し、「お客様が求めている魅力品質」の検討を引き続きお客様と共に進めていきます。