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2019.10.3技術トレンド/展望

5G×金融の可能性

5Gの注目が上がる中、各事業領域でのインパクトについて様々な方面で議論されている。本稿では、金融領域にフォーカスを絞り、5Gが金融に与える影響についての議論を行いたい。

5Gの注目度が上がっています。最近のマスコミの報道などでビジネス上の可能性がいろいろと取り沙汰されており、各業界でのインパクトも論じられております。筆者が専門である金融業界ではどういうインパクトがあるのか、本稿で論じたいと思います。先に結論めいたことをお伝えすると金融領域ですぐに5Gを使った革新的なビジネスが立ち上がる可能性は低いと考えておりますが、その理由などは後述いたします。

まずは、5Gとは何か?という点について簡単に整理します(図1参照)。5Gがこれまでの4Gと異なるところはあえて言えば大きく3つポイントがあります。通信の領域についての(1)高速(2)大容量(3)高信頼の3つになります。したがって、企業が現状提供している商品・サービスあるいは商品・サービスに係る内部事務等において通信環境が(1)~(3)が劇的に改善するとより、これまでできなかったことができるようになる、もしくは大幅に良くなる領域が存在する、というのが5Gビジネスの可能性を考えるにあたっては重要になります。

図1:5Gの特徴(※1)

図1:5Gの特徴(※1)

こういった5Gの整理を踏まえて、金融領域での影響はどうなるでしょうか?金融機関が提供している商品・サービスあるいは商品・サービスに係る内部事務等において通信が(1)高速になったり、より(2)大容量(3)高信頼になったりすることで困ることはないものの、現状(1)~(3)が満たされないがゆえにやりたいことができていない、ということはほぼないものと思います。言い換えれば金融領域においては5Gで改善できるペインポイントがほぼ存在しない、ということです。

しかしながら、すぐに何かが起きないにしても何かに影響があるのではないか?という点については否定することはできないと思います。筆者としては以下の2つのパターンを考える必要があると考えております。1つ目のパターンとしては、5Gがダイレクトに影響を与えそうな領域の変化が最終的に金融にどういった影響を与えるか?という点になります。このパターンの場合は影響する範囲が極めて広範囲(自動運転の深化の話もあれば、工場のIoT化の話も入ってくる)にわたるため正確に見通すことは難しいと思います。しかしながら金融以外の領域のデジタルデータがより高頻度かつ大容量に流通するということを簡単に予想され、それが融資や決済などのサービスとの連携や高度化につながることは容易に予想できますし、そもそも産業セクターの在り方自体も変わってしまい、これまでの金融のノウハウが使えなくなる可能性もあります。ただ具体的な絵姿はパラメータが多すぎて示しづらい、ということになります。
2つ目のパターンとしては金融に閉じずに一事業会社として他業種を含めて共通的に起こりうる変化があるかどうか?という点になります。例えば経理や人事、総務などはどの業種であっても普遍的に存在します。こういったものは業種ごとの色が出ない分、5Gを活用することで共通的なベネフィットを生み出す可能性があるといえます。5Gはモバイル通信にかかわる技術であることから、遠隔地とのやりとりかつ場所に依存しない場合の高度化というところには一定の貢献をする可能性があると考えます。技術的にはいわゆるVRやテレイグジスタンス(※2)といわれているような領域に該当しますが、高臨場かつインタラクティブなやりとりを可能にすることで出張や客先の訪問という対面での接触の意味がなくなるということが可能性としては上げられると思います。
以上、5Gの現時点での可能性を思考実験的に整理してみました。これから5Gに触発されて新しい取り組みが各所から発表されていくことになるとおもいます。そういう動向を確認しながら金融分野への影響は注視していく必要があると考えております。

※2

ロボットやVRを使って、遠隔地にいる人や物が近くに存在するように感じさせる技術

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