データで考究する生命課題
データ活用はヘルスケアのあらゆる領域で進み、健康の追求という生命課題に対し多大な効果をもたらしています。
医療機関が持つ膨大なデータによって具体化するAI画像診断が、健康の追求に資するべく医師を強力に支援し始めています。その精度は医師と同等以上に到達し、複数疾患の検出など実際の医療現場を想定した機能も備えつつあります。さらに、変異した遺伝子を画像から推定するといった、従来の診断プロセスをも変えていく可能性も見えてきています。
また、日々の生活で取得可能なデータも健康に大きく寄与しています。心拍などの生体データを連続的に取得し分析することによって、より早く、自覚症状の無い段階での異常検知が可能となりました。さらに、膨大な人数のDNA情報の活用により、多くの疾患に対する遺伝的リスクが解明されつつあります。そして、これらを組み合わせた分析サービスの登場は、個人に最適化された予防の実現を予感させます。
対症療法しか存在しない疾患を本質的に解明できれば、人々の健康維持は全く新たな局面を迎えます。近年、難病に対する治療法の確立を目指し、アミノ酸配列データを用いたタンパク質の立体構造の推定や、従来よりも格段に精緻な脳データの取得・解析といった人体の解明が本格化しています。このようにデータ駆動のヘルスケアはその境域をさらに拡大し、生命課題の解決に新たな可能性をもたらしていくでしょう。
データ活用時代のセキュリティ
データ活用がビジネス成長の前提となった時代において、個人のデータは益々その価値を高めています。そのため、提供者である個人がサービサーに不信感を抱かず、むしろ信頼を寄せてデータ提供に同意する環境の整備・維持が絶対的な前提条件といっても過言ではありません。
まず、サービサーへの攻撃に対する防御は第一の条件です。クラウドやモバイルの利用が拡大する中、全てのサイバー攻撃や不正な侵入を防ぐという従来の考えは限界を迎えています。そこで、あらゆるログの自動解析による異常検知や低スペック機器の暗号化など、侵入された際の被害の最小化を目指した技術が具体化しており、一層強固な防御の実現が期待されています。
また、個人に配慮したデータ利用という観点も益々重要になっています。世界各地でデータ利用に対する法整備が進む中、個人が自らの情報を制御可能とするサービス設計や、個人を特定しないデータ利用のための技術開発が進んでいます。これらを追求していくことが個人からの信頼獲得に大きく寄与するでしょう。
生命や社会の安全確保といった公益とプライバシーのバランスは、ITの強力な個人追跡能力ゆえに議論も多く、新たな規範を求める局面を迎えています。個人からの信頼維持のためにも、この相反するバランスの追求が今後の社会やビジネスにおける主導権の獲得には必要不可欠となるでしょう。