テレワーク導入が加速した一方で…
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、”3密”や”ソーシャルディスタンス”といった新しい概念が定着しつつあります。働き方に目を向けてみると、2020年4月上旬の緊急事態宣言発令を機に、テレワーク(リモートワーク)を導入する企業が増加しました。東京都が実施した「テレワーク導入率緊急調査」(※1)によれば、4月時点でテレワークを導入している企業の割合は6割を超えているといいます。
一方で、テレワークが普及しても、出社せざるを得ない業務があるのも事実です。freee株式会社が行った調査(※2)では、頻度に差はあるものの、テレワーク中に出社の必要がある社員の割合は8割近くにのぼることが分かりました。出社が必要な理由の上位は、「取引先から送られてくる書類の確認・整理作業」や「請求書などの取引先関係の書類の郵送業務」「契約書の押印作業」となっています。契約書や請求書は、出社対応が必要な書類のトップ2としても挙げられており、いわゆる「紙文化」「ハンコ文化」が、テレワークのスムーズな実施を阻んでいることが分かります。
紙文化・ハンコ文化にも新しい様式を
こうした状況を受けて内閣府・法務省・経済産業省は2020年6月19日、「特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない」との見解を示しました(※3)。従来、法的には求められていなくても「重要な文書だから」という理由で押印していた文書についても、不要な押印を省略したり、押印以外の手段で代替したりすることができるようになりました(※4)。これによりコロナ禍での「新しい生活様式」(※5)の1つの要素として、一気にペーパレス化や脱ハンコを進める動きが加速していくと考えられます。
現状、押印して処理されている文書は、契約書、見積書、発注書、納品書、請求書などさまざまです。これらを「ハンコを使わず」「電子的に」扱うにはどのようなことを考える必要があるか以下に挙げてみます。
1.押印の必要があるか?(※6)
図1:文書への押印要否
2.電子的な保存は許可されているか?
図2:文書の電子保存可否
e-文書法と呼ばれる法律によって、例外はあるものの、文書全般について電子的に保存することが認められています。ただし、電子的に保存する際には、次に示す要件を満たす必要があります。
3.法令要件を満たせるか?(※7)
図3:e-文書法で求められる要件
表1:e-文書法で求められる要件とそれを実現する方法
要件 | 概要 | 実現するための方法の例 |
---|---|---|
見読性 | 電子化された文書が、読み取れる状態にあること | 互換性の高いフォーマット(PDFなど)で文書を保存する |
完全性 | 原本のまま保存され、改ざんや削除が出来ない状態であること | 電子証明書と電子署名で本人性を担保する タイムスタンプで非改ざん性を担保する |
機密性 | 許可されている人だけが文書にアクセスできる状態であること | パスワードやアクセス権限を適切に設定、運用する |
検索性 | 必要な文書を必要な時に、容易に探し出せる状態であること | フォルダ構成やファイル命名規則を適切に設定、運用する |
※押印をせずに契約書の効力を保持させるためには、内閣府・法務省・経済産業省によって示されている立証手段であるメール本文や送受信履歴などを適切に保管しておく必要があります。
4.要件を満たした運用が出来るか?
以上のような要件をきちんと満たして文書を取り扱うには、現場での適切な運用が不可欠です。そのために、特にセキュリティの観点から必要な要素についてまとめます。
表2:e-文書法で求められる要件について定めるべき社内規程の内容
要件 | 社内規程に記載しておくべき内容の例 |
---|---|
見読性 |
|
完全性 |
|
機密性 |
|
検索性 |
|
おわりに
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/05/12/documents/10.pdf
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60536320Z10C20A6EAF000/
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_newlifestyle.html
https://www.hitachi-solutions-create.co.jp/column/management-strategy/electronic-document-law.html