はじめに
「高齢者」という言葉から、あなたはどんな人を想像しますか?
囲碁や盆栽が趣味の「サザエさん」の波平さんでしょうか?実は…波平さんは54歳なんです(※1)。
一般的に、高齢者とは65歳以上の人を指すと言われています。
「サザエさん」のテレビ放送が始まった1955年の平均寿命は、男性が63.60歳、女性が67.75歳で(※2)、おおむね平均寿命を超えた人が「高齢者」と呼ばれていました。この平均寿命は、2020年には、男性が81.41歳、女性が87.45歳に達し(※2)、過去最高を更新しています。また、同年、100歳以上の高齢者は8万人を突破しました(※3)。
これまで高齢者は限られた年齢層の人を指していましたが、人生100年時代(※4)と言われる現在、高齢者という言葉に、40歳も年齢差のある人々が含まれる様になりました。年齢だけ見ても幅広いにもかかわらず、私たちは依然として「高齢者」をひとくくりにし、ステレオタイプで捉えてしまってはいないでしょうか?
NTTデータの金融デザインセンターでは、高齢者が抱えている課題の解決に寄与するサービスの創出に向け、機会探索を目的としたインタビューを実施しました。全国の55歳~75歳の男女20名を対象に、「健康」「つながり」「お金」「デジタル」に関する現在の困りごと、将来の不安、コロナの影響について、お話を伺いました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000207430.html
高齢者の4つのセグメント
高齢者の人物像を解像度高く理解するため、年齢や性別等のデモグラフィック属性ではなく、インタビューでの発言から見えてくる姿勢や考え方から、高齢者を4つのセグメントに分類しました。ギャップシニア(※5)という考え方に着目し、「健康行動をとること・社会とつながりを持つことに積極的かどうか」と「自分の体力に自信を感じているか」の2つの軸で整理を行いました。
図1:高齢者の4つのセグメント
2014年に日本総研が命名。加齢に伴う体力低下により「できること」が減り、「やりたいこと」との間に生まれたギャップを我慢している人々。
各セグメントの特徴
インタビューで見えてきた各セグメントの特徴をご紹介します。
図2:セグメントAの特徴
図3:セグメントBの特徴
図4:セグメントCの特徴
図5:セグメントDの特徴
UXリサーチで仮説を検証する
いかがでしょうか?高齢者のリアルな姿が浮かびあがってきたでしょうか?
このように、インタビュー等の手法を用いて、ユーザーの発言や行動を観察、背景にあるニーズを分析して、それを満たす示唆を導出する一連の調査・分析をUXリサーチと言います。企画~開発~運用のあらゆる場面で、ユーザーの声を判断のよりどころとするユーザー中心アプローチにおいて、UXリサーチは重要なプロセスの一つです。
デザイン思考の浸透に伴い、ペルソナを作ったり、アイディエーションワークショップを行ったりすることは、珍しいことではなくなってきました。一方、想像で作ったペルソナが本当に存在するか、出てきたアイディアが本当にユーザーにとって価値があるかを検証しないまま、検討を進めているケースも見られます。ペルソナやアイディエーションの効果を高めるためには、UXリサーチによる仮説の検証が鍵になります。
さいごに
NTTデータは、2020年8月3日、大手町に金融機関のお客様向けのラボ「SPLAB™(スプラボ)」をオープンしました。SPLABでは、「手法」「人材」「情報」「場」の提供を通じて、お客様の社会課題を起点としたビジネス/サービス創発を支援しています。
SPLABのビジネス/サービス創発のプロセスに活用されているのがUXリサーチです。SPLABでは、課題やアイディアなどの仮説の構築と検証を行き来しながらビジネス/サービスを具体化しています。また、UXリサーチのケイパビリティの向上のためにUXリサーチャーという職種の定義もしました。今後もSPLAB発のUXリサーチを定期的に行い、技術に加えて人や社会に関する情報を蓄積し、社会課題の解決に寄与するビジネス/サービス創発に貢献します。
図6:SPLAB概要