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2022.9.5業界トレンド/展望

「オーダーメード」は社会課題も解決!4つの機能で個人情報利活用を加速する

個人情報利活用と聞くと漠然と不安を抱く人も多いのではないだろうか。しかし個人情報利活用はもはや、単に「便利」をもたらすだけではなく、社会課題の解決、ひいては持続可能な社会の実現にもつながる。
個人情報利活用を支える情報銀行の未来と、そこで必要となる4つの機能について見ていこう。
目次

情報銀行は、これからの社会に必要不可欠

これから、どんな社会が到来するでしょうか?少子高齢化をはじめとした社会課題への対応のため、地域産業の再活性化や人々の生活圏の変化への対応が必要になり、私たちの生活は根本から変わっていくことが予想されます。
たとえば少子高齢化による働き手減少の影響は、過疎地や人口の少ない地域から出始めています。これに対する解決策として最初に思いつく出生率の向上は、なかなか進んでいないのが現状です。では、人が二倍(あるいは数倍)働くという案はいかがでしょうか。これも解決策になりますね。限りある時間のなかで単純に労働時間を二倍にすることはできませんが、効率を二倍にすることはできます。効率的な労働を実現する一つの手段がデータ活用です。
もう少し具体化すると、たとえば洋服は、毎年たくさん作られてたくさん廃棄されています。これを、データを活用してオーダーメードにするだけで、資源としてはかなり削減できるでしょう。無駄に作らなければ、無駄に働く必要がなくなります。またオーダーメードになることで、付加価値の高い製品になり、単価が上がることで働く人の給与を上げることも可能になるでしょう。結果、同じ給与を得るために必要な時間が短縮され、あまった時間をまた別の仕事に充てることができると考えています。

私は今後、生活者ひとりひとりに対してよりフィットした、オーダーメードの商品やサービスの提供が当たり前になってくると考えています。現在でもパーソナライズされたサービスはありますが、よりオーダーメードに近づけるためには個人情報の活用方法を変えていかなければなりません。これまでの一企業による個人情報の独占的な活用、あるいは断片的な個人情報の的外れな活用ではなく、多くの企業と連携した個人情報の活用の促進が必要になってくるのです。

こうした社会の実現に必要な、個人情報の利活用を支援する機関が「情報銀行」です。

情報銀行とは、データを活用することで個人に合わせたオーダーメードの商品やサービスを提供したいと考える企業が、個人に個人情報の提供を依頼し、個人がその依頼に同意して、個人情報を提供するための同意や個人情報の管理を行う仕組みです。情報銀行は、個人の同意に基づいて提供されたデータを蓄積し、それを複数の企業や機関が共有することで、精度・ボリュームともに高い情報を活用したビジネスの発展に寄与します。
また、情報銀行を経由してデータの提供をすることで、個人にとっては、自分のデータの流通を、自らコントロールすることが可能になると言う大きなメリットがあります。
銀行が、「産業の血であるお金」を流通させることで、新しい価値の創発を支援する機関なら、情報銀行は、「産業の知であるデータ」を流通させることで、新しい価値の創発を支援する機関となります。

情報銀行が企業や生活者に新たな価値を提供するために必要な、4つの機能

NTTデータでは、情報銀行の広がり方については以下のように考えています。

図1:情報銀行の広がり方

図1:情報銀行の広がり方

まず、個人情報を預かり管理する、お金でいえば、「貸金庫」のような機能を持つ情報銀行が立ち上がります。個人が金融機関を選べるのと同じように、この時期の情報銀行についても個人は使い分けます。ある人は、すべての個人情報を一か所に集めて管理するでしょうし、またある人は、旅行に関するデータはA情報銀行、ヘルスケアに関するデータはB情報銀行、お金に関するデータはC情報銀行というように、データの種類によって、情報銀行を分けて使うことになるでしょう。この時期を第一世代と呼んでいます。今はこの時期です。
このような管理をすると、個人情報を活用したい企業側には不都合な場合があります。一人の人のデータを集める際に、複数の情報銀行とやりとりが必要になるからです。そこで、情報銀行を相互に接続するプラットフォーム(欧州ではPIMS(Personal Information Management System)と呼ばれる)を用意し、データを活用したい企業はPIMSに接続すれば、どこにデータがあるのかを意識せずにデータを収集・活用することができるようになります。この段階が第二世代です。ちなみに、すでに総務省は情報銀行を相互に接続するための実証実験を実施しています。
さらに第三世代に進むと、個人情報がすべてデジタル化され、情報銀行(PIMS上)に管理されるので、そのデータを活用して、「デジタルな私」を創ることができるようになります。My AIと言われるもので、デジタル空間上にもう一人の自分が出来上がるわけです。この「デジタルな私」が仕事をして、「フィジカルな私」が、寝ているときも遊んでいるときも、収入を得てくれるようになるのではないかと、私は考えています。

では、情報銀行が第三世代に到達し、企業も個人も便益を得るためには具体的にはどんな機能・仕組みが必要でしょうか。NTTデータではこれまでの取り組みから以下の4つの機能が必要になると考え、一部すでに提供を開始しています。

  • (1)データ事業者がデータを直接見ることなく、データを活用することができる機能
  • (2)個人が自分の個人情報の提供履歴を確認、管理することができる機能
  • (3)データ活用事業者がデータの所在を意識しなくても活用できる機能
  • (4)個人が自分の個人情報を安全に管理できる機能:情報信託機能

もちろん、現在の情報銀行は、(4)の機能だけでなく、特に(2)の機能を有しているものもありますが、ここでは機能ということで、あえて分けて説明します。

個人情報の不必要な開示を防ぎ、自分の個人情報開示履歴を把握する

まず初めに、(1)データ事業者がデータを直接見ることなく、データを活用することができる機能について詳しく見ていきます。

個人情報を活用するシーンになると、気になるのは、あちこちに自分の個人情報がばら撒かれてしまうのではないかということでしょう。マイナンバーカードを身分証に使うときに考えられたことですが、必要なのは、顔写真による本人確認と、住所、氏名の確認です。マイナンバーそのものは、たとえば、レンタルビデオ店での会員証発行の際には必要ありません。しかし、マイナンバーカードを提示することで、それを店員さんに見られてしまうわけです。(実際には、カード発行時に配布される袋状の保護フィルムに入れておけば、これを防ぐことができます)。
こうした不必要な個人情報の開示を防ぐために、提示しなければならない個人情報等を二次元バーコードの状態で提供し、店員に分からない状態で、かつシステムとしては正しく読み取ることができるようにする機能が求められます。

これにより、個人情報を開示する側にとって、必要以外の相手にデータを知られてしまうことなく、個人情報に基づくサービスを受けることができるわけです。この機能を利用することで、スタジアムやコンサートなどでの不法な転売を防ぐことができますし、シルバーパスや障がい者割引、学割などのサービスを受けるときに、わざわざ書類を提出したり、事務所で申請したりすることなく必要な情報を引き出し、二次元バーコード化して提供することで、ダイナミックにサービスを受けることができるようになります。

NTTデータではこの機能をID Wallet®︎として提供しています。

図2:ID Wallet

図2:ID Wallet

次に、(2)個人が自分の個人情報の提供履歴を確認、管理することができる機能についてです。

みなさんが個人情報を提供する際、それがアンケートに答えるときでも、懸賞に応募するときでも、保険の契約をするときでも、車の契約をするときでも、必ず個人情報の取り扱いについて、開示を受けて同意をしています。おそらくほとんどの人がその取扱規約を熟読することなく合意をして、提供してしまっていると思います。そしてその記録をとっている人は、ほとんどいないでしょう。しかし、それでは自分のデータを管理できていることにはなりません。よく読んでみると、もしかしたら、知らない第三者に情報が開示されている可能性だってあるのです(提供先の企業名が書いていない場合も多々あるからです。)

後で、知らない企業からDMが送られてきたり、勧誘の電話がかかってきたりして、実は自分がその企業にデータ提供をしていたということを知ることになるのです。そのようなリスクを避けるためにも、自らがどのような同意をして、どのような企業に、どのようなデータを開示しているのかを把握しておく必要が出てきます。またときには、利用の停止をお願いする必要も出てくるでしょう。そのようなとき、いつ、どこで、どのような企業に、何のデータを提供することに同意したのかを振り返ることができれば安心ですね。Consent Wallet®は、こうした同意の履歴を保有し、振り返ることができるようになるサービスです。

図3:Consent Wallet(同意管理サービス)

図3:Consent Wallet(同意管理サービス)

データ事業者がよりデータを活用しやすくなる

(3)データ活用事業者がデータの所在を意識しなくても活用できる機能は、少し複雑です。例えば、みなさんが保険に入りたいとなったときに、問診票に答えたり、書類に回答したりします。今後さらに進んだサービス、よりカスタマイズされたサービスを受けたい場合には、健診データや歩数データ、体重の変化や、食べている食事内容なども必要になります。これらの情報があって、初めて保険会社は見積もりが可能になるのです。
ということは、見積もりが欲しい企業全てにこれらのデータを開示しなければなりません。しかも、その中から実際に保険に加入するのは一社で、それ以外に提供した個人情報は、ある意味使われない(もしくは、勝手に使われる)個人情報になるのです。なんとなく気持ち悪いですね。
また企業としても、お客さまにならなかった個人の情報を保有することは、ときにリスクになります。漏えいなどがあった場合、お客さまではない人となると、どのように連絡を取れば良いでしょうか?すでに引っ越していたら、連絡の取りようがありません。企業にとっても、必要以上に個人情報を保有することはできれば避けたいことです。

このようなときに、(3)の機能が役に立つわけです。詳しい個人情報を開示することなく、開示したのと同じ結果を得ることができる。都合が良さそうなことですが、この機能を使えば実現ができるわけです。

最後に(4)個人が自分の個人情報を安全に管理できる機能は、いわゆる情報銀行を運営するために必要な機能を提供するものです。具体的には、個人情報を提供するための利用目的やメリットなどが書かれたオファーと呼ばれるものの管理や、情報銀行の仕組みの中で個人情報を提供することに同意した場合の履歴管理。また、自分の個人情報を提供する先の企業が信頼をおける企業であるかを確認するための審査を行い、その結果の共有をする機能も持っています。(4)の機能を上記の(1)から(3)と連携して活用することで、情報銀行は安心安全な個人情報の活用、流通ができるようになります。

情報銀行が実現する未来

NTTデータでは、生活者ひとりひとりが主人公である社会の実現をめざしています。個人情報を活用することで、もっともっといろいろなことがオーダーメードやカスタマイズされて提供されることが、その実現を加速するでしょう。たとえば、教育の分野ではすでに行われている、苦手な問題やわからない問題を中心に問題集が個人ごとに編集されるだけではなく、自分のなりたいもの、やりたいことにあわせたカリキュラムが組まれ、複数の大学の講義を掛け合わせたカリキュラムが組めるようになることが考えられます。また、働くということにおいては、子育てのタイミングや住居などを決めることを、就職や企業での立場などに合わせて考えるのではなく、自分たちの人生設計に合わせた働き方をオーダーメードでできるようになり、必ずしも企業の中での線形的な出世だけが重要になるわけではない世の中がやってくるのではないでしょうか。そのような世の中であれば、だれもが自分らしく生きることが可能になり、それを支えるしっかりとした社会基盤とともに、私たちの暮らしが豊かになるのではないでしょうか。

そしてそのために一番大事なことは、個人のみなさんがきちんと個人情報を管理するという自覚を持って、経済活動などを行うことです。気がついていないだけで、みなさんの個人情報はあちこちで活用されています。そしてそれにより、みなさんも便益を受けています。それでも知らないところで活用されるのではなく、きちんと活用されていることを理解したうえで、便益を受けることが重要です。
お金もそうですが、データも重要な資産です。ぜひ、これを機に、自分が個人情報についてどのように管理しているのか、あるいはできていないのかについて、考えてみてください。

本記事は、2022年6月22日に開催されたMyDataカンファレンス(※)での講演をもとにしています。

(※)MyDataカンファレンス

欧州を中心に、全世界30カ国から、約400人の参加者を集めて開催されたGDPRなど欧州の規制に関するノウハウ、欧州での個人情報関連ビジネスのノウハウを共有することを目的としたカンファレンス。NTTデータは、2019年から法人会員となり、MyDataカンファレンス2019からスポンサーとして、活動を支援している。この活動により得たノウハウをもとに、日本での個人情報関連ビジネスの立ち上げを行っている。

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