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2021.7.19業界トレンド/展望

自律分散型社会がもたらす、個々がつながり輝く世界

New Normalな世界を見据えて今注目されている自律分散型社会。自律型分散型社会とは、個々が多様性を維持しつつ自律的に発展する社会を指し、その肝はそれぞれが思い通りに“らしさ”を発揮できることだ。自律分散型社会の実現に向けてテクノロジーが果たす役割と金融の在り方を提示する。
目次

自律分散型社会とは何か?

“自律分散型社会”とは何かご存知ですか?多くの人にとっては見慣れない言葉だと思います。自律的に分散している社会?それはどのような社会なのか?イメージしづらいかもしれません。一方で、インターネットで検索をしてみると検索結果は約35万件(2021年6月時点)と、かなりの数に上ります。

自律分散型社会は、これからの新しい社会像を考える上で欠かせない、知っておくべきキーワードと言えるでしょう。なぜなら、自律分散型社会は「これまでの社会をけん引してきたGAFAが描き、実現しつつある世の中をさらに進化させたもの」とも言えるからです。

具体的にどのような社会形態なのかというと、「自律したもの同士がオープンにつながりながら形成される社会」です。どこかに過度に集中せずにバランスよく分散している社会、とも言えます。個々が自律している(自律可能な)ことと、それぞれがネットワークでオープンにつながっていることの2つが、自律分散型社会実現の前提となります。
自律する単位は同じ組織に属する、共通の趣味、嗜好(しこう)を持つ、エリア的に近いなどさまざまで、個人の場合も複数人のグループの場合もあります。それらのグループが分散して存在する中で、おのおのの考え方やあり方のイメージ、判断でつながったり、時には形を変えたりしながら社会を形成していく、それが自律分散型社会です。

自律分散型社会のイメージ

自律分散型社会のイメージ

そもそもなぜそういった社会が必要になるのでしょうか?まずはその点から説明します。

New Normal~新常態はCOVID-19から生じたものなのか?

COVID-19の発生により、まさか現実になるとは想像し難かった社会が今到来しています。映画やアニメに描かれているような未来社会とまではまだいきませんが、それでもCOVID-19による行動様式の変容は、確実にその未来との距離を縮めた、それほどのインパクトをもたらしています。

このインパクトそのものには、急激な変化についていけない、対応が難しい、ある部分では格差を助長する等、社会にとってマイナスな側面もあります。一方でDX活用が促進されることでポジティブな変化、進化も社会に与えています。
では今到来している社会は、COVID-19がもたらしたものなのでしょうか?仮にCOVID-19が無ければたどり着けなかった社会なのでしょうか?

そうではありません。“New Normal”と言われる新常態として到来した新たな世の中、社会は、玉石混交、ポジネガありながらも、これまでのごく当たり前だった社会が必要な要素を取り込みながら進化したものです。この進化は確かにCOVID-19により後押しされましたが、実は、大きな流れはそのずっと前から始まっていました。

New Normalの中で自律分散型社会に至るこれまでの社会の流れ

ICTにおける集中と分散の変遷

ICTにおける集中と分散の変遷

その大きな流れとはどのようなものでしょうか?ある時点から社会の流れを作ってきたのはテクノロジー(ICT)です。ICTの歴史をひもとくと、集中型の仕組みであるメインフレームから始まり、分散型のクライアントサーバー(CS)型、そして集中型の中央集権(クラウド)型へと変遷しています。
この変遷は「集中」と「分散」の入れ替わりとも言えます。ICTにおける「集中」と「分散」とは、”データ保管(台帳)”と”処理(サービス)”のそれぞれが集中方式 or 分散方式のどちらの形態を取るかということです。例えば、ホスト型は”データ保管”も“処理”もいずれも集中方式です。

以前の分散型であるCS型も実はデータ保管・処理ともに分散型でしたが、それは限られた用途の局所的なデータ保管や処理に対象が限られており、相互接続も限定的でした。CPUやメモリ、NWといった要素技術の進歩がまだこれからだったからです。

中央集権型はまさにその課題を解決したものです。中央集権型では、大量のデータでも効率的かつ効果的に保管し、時にはクライアント(エッジとも言う)で下処理などを行いながら大量データを集めて処理を行います。ここからAIを始めとした新たな利便性の高いテクノロジーが生まれたのです。

一方で新たな問題も出てきます。中央集権型では保管も処理もサービス提供元に集中しますが、その保管の在り方や処理の提供の仕方が個々人からすると想定外のものとなる場合もあります。例えばサービスの突然の変更/停止があげられます。また、データは誰のものなのか、どこまで使ってよいのか、その選択権限は誰が持つべきなのかなど、GDPRで規定されるデータの取り扱いも一例です。

GDPRの例ではセキュリティーと利便性のバランスの問題になりますが、従来はGAFAに代表される企業がそれぞれ先進的なサービスの提供とあわせてこうしたデータの収集、保管、分析、活用、提供を一手に担っていました。ただし、そういった全体管理機構とも言うべき企業体によるデータの寡占化やプライバシーの問題、サービス内容の突発的変更などが同時に生じており、原点回帰としてあくまでデータの主権と、活用にあたっての選択は個々に与えられるべきだ、という考え方が出てきています。自律分散型社会の“自律”とはまさにここから出てきた考え方です。

こうした問題の解決を目指し、「集中」と「分散」の入れ替わりが再び発生するとなると、次は分散型、それも”データ保管”も”処理”もいずれも分散してそれぞれは自律して成立しつつ、相互につながってもいる型だと考えられます。これからは台帳もサービスも過度に集中・依存することなく成り立つことが求められる一方で、それらがつながることで新たな価値が生じることも期待されているからです。

なぜ自律分散型はこれまで成し得なかったのか

スマートフォンを始め、個々の手のひらにアポロ13の数倍のパフォーマンスを発揮できるデバイスが収まり、自身にまつわるデータの重要性も高まっています。データそのものが第4の資源と言えるでしょう。そのような今の時代に、「データ活用含めた主権は個々に自律させてそれぞれの判断で動かしていく」自律分散型の考え方・ICTの仕組みはフィットしそうです。

ここで1つ疑問が湧いてきます。前述の通りデータの寡占化やプライバシー、サービスの突発的変更などの問題が同時に生じており、データの主権と活用にあたっての選択は個々に与えられるべきだという動機があったにもかかわらず、なぜこれまでこういった概念は実現しなかったのでしょうか?
その理由は下図の通りいくつかありますが、技術的なハードルと、技術的には解決可能だが実現にあたってのコストが現実的ではなかった、という2点に集約されます。

自律分散型実現にあたっての課題と解決につながった要因

自律分散型実現にあたっての課題と解決につながった要因

社会のあり方から見た自律分散型社会

ICTから見た自律分散型社会の輪郭とその実現性についてはおぼろげながら見えてきました。では社会のあり方、社会からの要請から見た自律分散型とはどのようなものでしょうか。
実は、すでにCOVID-19も相まって社会の要請から自律分散型社会になっている部分もあります。主だったものとして、以下の例が挙げられます。

  • テレワークやシェアオフィス、ワーケーションに代表される場所に限定されない働き方の実現
  • COVID-19解決を目的とした組織や国を超えたデータおよびナレッジを共有する世界的な動き
  • ギグワーク(1~3時間などの短い時間だけ働き、継続した雇用関係のない働き方)の一般化や副業許可も含めた働き方の多様化
  • 都市部に居住するという価値観からの変化として、地域主義の加速

テレワークやシェアオフィスは就業場所に関する“自律”、データおよびナレッジ共有の動きは、従来の特定の個がそれらを独占(寡占)するのではなく、共通の目的のために必要に応じてこれらの利用を自律的に認めるという観点で“自律”しています。いずれも個々がそれぞれ自律、物理的にも精神的にも分散しながら、一方でつながっている状態を維持することで実現可能となります。

「何を実現するのか、自身に属するデータをどのように使うのかという判断が他者に一方的に委ねられるのではなく、個々に選択肢と選択権が与えられ、それぞれの判断で選択が可能であるべきだ」――自律分散型社会は、そんな価値観の元に成り立つ社会です。

自律分散型社会がもたらすものと金融のこれからのあり方

インターネットやスマートフォンの普及により世の中はより“オープン”に、かつ他と“つながる”ことが当たり前の社会になっています。過度にクローズドな、他とつながれないというのはディスアドバンテージにも成り得ます。自律分散型社会がそんな世の中にもたらすものとしては、例えば以下のようなものが挙げられます。

  • 個々が各自の個人情報を含むおのおのの情報について、自由度と裁量を持って管理と利用が可能
  • データ連携基盤の上でおのおのがつながり、さまざまな壁を越えて多種多様な連携が実現することによるイノベーションの発現
  • セキュアな接続と情報共有による信頼関係の醸成と、それらに基づく信頼度の高いサービスの実現

個の組織や個人だけで実現できることには限界がありますが、オープン性という広く他者とつながるための仕掛けを用意し実際につながることで、相乗効果のみならず指数関数的な効果を得やすくなります。昨今の技術革新により“オープン”、“つながる”がこれまで以上に深く、かつ容易になり、自律していることとともに今後の必須要件とも言えるでしょう。

そのような社会の中で、金融機関に求められるのは、自律分散型社会を行き交うデータの評価および目利き力、そしてデータマネジメントに関わる機能です。この機能は、お金を軸に金融機関が従来担ってきた役割にそのまま通ずる部分があります。その特性と強みを活かす形で、従来通りの金融機能を担いながら、個々の自律形成の礎となる”オープン”と“つながる”の促進、そしてその先にある自律分散型社会の形成そのものを担うこと、その流れにおいて強いケイパビリティを持つということがこれからの金融には求められますし、存在感を発揮する部分にもなると思います。

自律分散型社会における金融機関の役割

自律分散型社会における金融機関の役割(※)

(※)内閣府「「スーパーシティ」構想について」

※出典情報を基に当社にて編集

最後に

New Normalな世の中の到来はまさにこれからとなりますが、新たな社会に変容していくことは間違いありません。その一つとして自律分散型社会という考え方を取り上げました。生活者としての観点からも企業やビジネスといった観点からも、自律分散な考え方とその考え方に基づく社会が形成されていくであろうことは想像に難くありません。
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