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2023.5.15事例

フォルクスワーゲングループSEAT事例にみる欧州自動車業界のDXトレンド

フォルクスワーゲングループ傘下の自動車メーカーSEAT(セアト)は2019年、DXの推進を目的とする新たな取り組み、「SEAT:CODE」を設置した。NTTデータは戦略的パートナーとして、SEAT:CODEの組織づくりやプロセスの構築などを支援。ビジネスとテクノロジーを融合させた視点から、様々な施策をサポートしている。SEAT:CODEはエンドユーザー向けアプリの新規開発など多くのプロジェクトを推進し、大きなビジネス価値を創出しており、世界各地で同様のDX拠点の展開を進めている。SEAT:CODE成功の舞台裏と今後の展望について、プロジェクトを担当したNTT DATA DeutschlandおよびNTT DATA Spainの社員が解説する。
目次

「SEAT:CODE」を支えるNTTデータとの戦略的パートナーシップ

世界の自動車産業はいま、大きな変化の波に直面している。自動車の性能そのものだけでなく、マーケティングや販売、顧客との関係づくりなど、自動車ビジネスは全方位で変わりつつある。

こうした潮流を察知し、意欲的にDXを推進しているのがスペイン・バルセロナ郊外に本社を置く自動車メーカーSEATである。「SEAT」と「KUPRA(クプラ)」の2ブランドを軸に乗用車の製造・販売を行っており、従業員は全世界で約1万5000人。販売台数は74カ国で約47万台、2021年の売上高は96億ユーロに上っている。

SEATがDX推進拠点の「SEAT:CODE」を立ち上げたのは2019年のことだ。その目的は大きく3つある。

図1:SEAT:CODEの設立目的

図1:SEAT:CODEの設立目的

第1に、新しい製品やアプリケーション、サービスの商品化にかかる時間の短縮。第2に、標準的な技術をベースとしたアジャイル開発によるコスト効率と柔軟性の向上。第3に、品質および納期に関するコミットメントの確実な履行だ。これら3つの目的に沿ったさまざまなDX施策が動き出しているが、その対象は社内だけに留まらず、エンドユーザー向けのDXも並行して進めている。

社内向けのDX

  • 社用車申請に関する従業員向けセルフサービスポータルの実装
  • インバウンド物流を効率化するコントロールタワーの構築

エンドユーザー向けDX

  • まもなく発売される新型車の予約システムのデジタル化
  • KUPRAブランドのオンラインカーコンフィギュレーターを通じた新たな体験の提供

SEATはデジタル変革の推進およびプロセスの効率化のための戦略パートナーに、NTTデータを選んだ。技術力、柔軟性、イノベーションとその遂行力が戦略的パートナーとして評価されたためです。このパートナーシップのミッションは、SEAT:CODEを設立し、マーケティングやセールス、サプライチェーン、生産、財務、人事などのコア領域において、新製品とモバイルアプリケーションの開発を開始することだった。

NTT DATA Deutschland David Andrews

NTT DATA Deutschland
David Andrews

NTT DATA Deutschlandでフォルクスワーゲングループを担当するDavid Andrewsは、プロジェクトの成果に自信を見せる。

「戦略的パートナーシップを結んでから1年足らずの間に数百名のプロフェッショナル人材を集め、クラウド、データ分析、IoT、Web/JAVAなどの領域でプロジェクトを立ち上げました。すでに成果も現れており、エンドユーザーのデジタル体験は大きく向上しました。また、サプライチェーンの効率を大幅に高め、デジタルプロダクトの開発期間を大幅に短縮できました」(Andrews)

優秀かつ国際色豊かな人材を集めてスタートしたDX拠点

NTT DATA SpainのEdmon Tutusausによると、SEAT:CODEにおける成功の背景には、周到な準備があったという。

「NTTデータはSEATへのカスタムセットアップを作成するにあたり、スピードと予測可能性、および品質を確保できる組み立てラインと、ソフトウェアの継続開発をサポートする組織構造が必要だと判断しました。ガバナンスと文化の面では、SEATとSEAT:CODEによるハイブリッド型ガバナンス方式をとりつつ、新しいブランド(SEAT:CODE)のもと、新製品の開発と組織の継続的な発展を、価値に基づく経済モデルで実現していくことが求められました」(Tutusaus)

図2:組織構造とコンセプト

図2:組織構造とコンセプト

とりわけ、SEAT:CODEに参加する人材の確保には力を入れたという。いかに優秀なプロフェッショナル人材をまとめて獲得できるか―。それは、SEAT:CODE立ち上げ時における最大のチャレンジの1つだった。

「SEATは、メンバーが誇りをもち、参加したいと思えるような技術コミュニティとなる拠点をつくりたいと考えていました。そのためには、拠点の場所をバルセロナの中心地に置き、これまでにない新しい手法で世界中から人材を集めなければなりませんでした」(Tutusaus)

また、SEAT:CODEのカギは“技術”であり、SEATはリリース管理において最高レベルで自動化された製品開発を行うという明確な方向性をもち、先進技術を取り入れる必要があった。

SEATとの合意に基づき、最初の1年間はNTTデータのメンバーがSEAT:CODEの取締役会に参加した。SEAT:CODEの円滑な早期立ち上げを実現し、確実な目標達成をめざすためである。こうした体制のもとで、開発の現場ではアジャイルフレームワークのScrumを活用し、最初の半年で30のプロジェクトを立ち上げた。NTTデータはSEATに対して成果物の品質と開発速度を約束し、業績連動型報酬システムを採用した。

技術的な観点では、クラウドファーストの方針のもとマルチクラウド環境を構築。その環境ですべての開発が行われる。同時に、活用する技術要素も整理した。また、多様なクラウドプラットフォームを管理するためのテクニカルオフィスも設置した。

NTT DATA Spain Edomon Tutusaus

NTT DATA Spain
Edomon Tutusaus

「SEAT:CODEが独自の開発チームを作るためには、人材がとても重要でした。そこでNTTデータは、SEATが具体的な人材価値を定義できるようサポートしました。例えば人材確保やスコアリングなどの採用活動支援を行ったり、参加型のブートキャンプの開催、技術イベントの立ち上げなどを行いました」(Tutusaus)

NTTデータはSEAT:CODEの組織づくりにも深く関与している。NTTデータはキャパシティおよびデマンドのマネジメントプロセスを実現するために、柔軟なチーム編成を可能にする組織モデルを提案した。

「各チームは基本的に、それぞれが独自で開発目標を達成するだけの能力を備えています。いわばプロダクト志向型の専門家集団であり、プロダクトの見積から開発、展開までを担当。スクワッドとプロダクトオーナーは精通するビジネスニーズとの整合性を取りつつ、柔軟にプロジェクトを進めてることで常に価値を提供します」(Tutusaus)

SEAT:CODEのコンセプトを他分野にも展開

NTTデータは、SEAT:CODEの成功を青写真として、お客様がより速く、より効率的にグローバル展開できるようにすることを目標としており、着実に実績を積んでいる。

「この3年の間に、ドイツ向けソフトウェアサービスの多様なビジネスエリアのブランドアプリケーションでの提供、中国向けのソフトウェア開発、メキシコ向けのMVP立ち上げなど、数々の成功事例が生まれました。私たちがSEAT:CODEで経験し、成功を収めたモデルはほかのお客様にも適用できます。お客様と共に、高い生産性を持つチームを立ち上げ、迅速な価値提供を可能にするのは、ビジネスと技術を融合できる専門知識と経験です。コンサルティング、コーディング、リスキリングによってお客様の組織の変革をサポートするモデルでDX拠点づくりを支援しており、お客様から高く評価されています」(Andrews)

Andrewsは、「SEAT:CODEのコンセプトをほかのビジネス領域にも展開できる」と続ける。

「例えば、コンテンツ制作やデジタルマーケティング、あるいは販売関係の事業部などでも有効でしょう。すでに、こうした構想が具体化しつつあります。NTTデータの強みは、ビジネスとテクノロジーを融合する専門知識と、コンサルティングや人材育成を通じてお客様の組織変革をサポートしてきた実績です。こうした強みをベースに、お客様の変革への取り組みをコンサルティングから実装、そして人材のリスキリングなどを含めてサポートしていきます」(Andrews)

図3:NTTデータならではの充実したDX支援

図3:NTTデータならではの充実したDX支援

プロダクトやアプリ、サービスなどの商品化スピード、アジャイル開発の方法論をベースとする高いコスト効率性と柔軟性、品質とデリバリーの保証。大きな価値を創出するNTTデータのDX支援プロジェクトは、世界の多くの企業から注目を集めている。

本記事は、2023年1月24日、25日に開催されたNTT DATA Innovation Conference 2023での講演をもとに構成しています。

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