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2024.5.27技術トレンド/展望

スタートアップとのセキュリティサービス共創のコツ

近年、オープンイノベーションが重要視されている。先進的な技術をもつスタートアップとの共創は、自社や顧客、そして社会の問題解決に貢献し、自社の競争力強化につながる。しかし、スタートアップの見つけ方や共創の方法が分からず困っている企業は多いのではないだろうか。本記事ではNTT DATAにおけるセキュリティサービス共創の事例をもとに、共創に向けた戦略立案およびスタートアップ調査や選定のポイントを解説する。
目次

1.なぜスタートアップに着目するのか

スタートアップとは、新しい企業であって、新しい技術やビジネスモデル(イノベーション)を保有し、急成長をめざす企業のことです(※1)。サイバーセキュリティ領域のスタートアップに着目すると、その拠点や世界からの投資先は、米国やイスラエルに集中しています(※2)。サイバーセキュリティのスタートアップへの投資額は、2023年は82億USドルで、2022年の163億USドルと比べて軟調な投資状況となっています(※3)。しかし近年は生成AI技術によるサイバー攻撃の脅威が高度化しているため、AIによる攻撃に対してのセキュリティ対策やAIを活用したセキュリティ対策の市場が伸びることが予想されます。

スタートアップは、先進的な技術やサービスによって社会課題に対しスピード感をもって対応する一方、経営面や営業力の向上が課題となっています(※4)。そこで、NTT DATAでは、セキュリティ領域において事業を行っているスタートアップとの協業を重要視し、スタートアップが保有する先進的なセキュリティ技術やサービスを、NTT DATAがグローバルで展開しているセキュリティマネージドサービスへ組み込み続けています。これにより、NTT DATAは社内のセキュリティガバナンス強化だけでなく、世界中の顧客や社会課題を先回りして解決する、包括的なセキュリティサービスを提供することが可能になります。

(※1)経済産業省, スタートアップの力で社会課題解決と経済成長を加速する

https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/kaisetsushiryou_2024.pdf

(※2)NTT DATA INSIGHT, 最先端セキュリティ技術活用のコツ

https://www.nttdata.com/jp/ja/trends/data-insight/2022/0930/

(※3)Crunchbase news, Cybersecurity Startup Funding Hits 5-Year Low, Drops 50% From 2022

https://news.crunchbase.com/cybersecurity/funding-drops-eoy-2023/

(※4)経済産業省, 行政との連携実績のあるスタートアップ100選

https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/public_procurement/catalog_point-interview.pdf

2.スタートアップ発掘からビジネス展開までの全体像

スタートアップ発掘からビジネス展開までの流れの一例を図1に示します。フェーズ1では、戦略立案とスタートアップ調査を実施します。フェーズ2では、スタートアップの技術やビジネス適合性をPoC(※5)により評価し、スタートアップを選定します。そしてフェーズ3では事業化を進め、実績が積み上がってきたら、フェーズ4でビジネスをさらに拡大し、グローバルにも事業展開していきます。

本記事では、フェーズ1および2を中心に、スタートアップと共創するためのポイントをご紹介します。

図1:スタートアップ発掘からビジネス展開までの流れの一例

図1:スタートアップ発掘からビジネス展開までの流れの一例

(※5)

PoCとはProof of Conceptの略で、日本語では概念実証と訳されます。PoCでは、新しいアイデアや技術の検証を行い、サービスやビジネスの実現可能性を最小の構成環境で実証していきます。

3.戦略立案とスタートアップ調査のポイント

戦略立案と調査対象領域の決定

スタートアップとのイノベーションの起こし方には、コンサルティング起点と技術起点の2通りのアプローチがあります。コンサルティング起点とは、自社や顧客が抱えている問題を分析し、その問題を解決しうる技術を保有するスタートアップを見つけていく方法のことです。一方、技術起点とは、今後数年の間に市場の拡大が見込まれる技術領域やサービスを先読みし、その領域で尖った技術やビジネスモデルを保有するスタートアップと共創することで、競合他社にはない独自の価値を自社や顧客に提供する方法のことです。このような2つのアプローチの方法から、自社のビジネス戦略に照らし合わせて選択していくことがポイントです。

NTT DATAは、セキュリティコンサルティングからインシデント発生時の対応までを一気通貫で行うUMDR®サービス(図2)を2023年12月に発表しました(※6)。その中の15個のサービスカテゴリそれぞれに対して、NTT DATAのケーパビリティ分析や独自の情報網によるセキュリティ市場のトレンド調査などを実施しています。そしてNTT DATAとして注力するセキュリティの技術領域やスタートアップと組むべき技術領域を、上記2通りのアプローチで決定しています。

図2:NTT DATAが提供するUMDR®サービス

図2:NTT DATAが提供するUMDR®サービス

スタートアップの情報収集

スタートアップはWeb媒体での情報発信が未成熟なことが多いため、検索エンジンでの情報収集が難しいことが多いです。手始めに情報収集したい方は、Crunchbase(※7)やKEPPLE DB(※8)といったスタートアップのデータベースを活用するとよいでしょう。

NTT DATAでは、シリコンバレーの拠点やイスラエルにあるNTT Innovation Laboratory Israelと連携し、先進的なセキュリティ技術を保有するスタートアップを現地で調査しています。また国内外のグループ会社とも連携し、各国でのスタートアップ動向やグループ会社におけるスタートアップとの共創成功事例も収集しています。加えてベンチャーキャピタルや、アクセラレーター、アナリスト、ベンダー、セキュリティのカンファレンスおよびデータベースなどを通して、多方面から提携候補の企業を調査しています。

(※6)NTT DATA, NTT DATA Introduces New Global Cybersecurity Strategy to Help Clients Boost Protection Against Cyber Risks

https://www.nttdata.com/global/en/news/press-release/2023/december/ntt-data-introduces-new-global-cybersecurity-strategy

(※7)Crunchbase

https://www.crunchbase.com/

4.スタートアップ選定のポイント

スタートアップの机上選定

スタートアップの情報収集をしたら、その結果を表に整理していきましょう。企業リストの整理の仕方として、ロングリストおよびショートリストを作成する方法があります。

ロングリストとは、一定の基準でスタートアップをスクリーニングした後の、候補企業のリストのことです。スクリーニングの基準は組織のビジネス戦略によって異なりますが、スタートアップの提供サービス分類や、財務、企業規模、地政学リスク、経済安全保障リスク面などの観点から設定します。

ショートリストとは、ロングリストに残ったスタートアップを分析し、総合的な観点で絞り込んだ企業リストのことです。ショートリストを作成する際は、スタートアップのビジョンやサービス内容、顧客事例、第三者評価、競合他社との差別化要素、市場や製品の成熟度、自社ビジネスとの適合性などを踏まえ、総合的に判断します(図3)。

NTT DATAでは、国内外の拠点に数多く在籍しているセキュリティスペシャリストとスタートアップとを繋ぎ合わせ、グローバルレベルで次世代のパートナー企業を選定しています。

図3:ロングリストとショートリストを作成するときのポイント

図3:ロングリストとショートリストを作成するときのポイント

PoCの実施

提携したいスタートアップ候補が決まったら、スタートアップとPoCを実施することが一般的です。

PoCを実施する際は、PoCの目的とゴール、技術やサービス面の評価基準、自社ビジネスとの適合性評価基準、および検証後にビジネス共創を本格化するかどうかを判定するための基準を、具体的かつ測定可能であるように前もって設定しましょう。サービスを定量的に評価する際は、ITILが提示している評価シート(※9)が参考になるでしょう。

これらの基準が定義されていなければ、PoC実施自体が目的となり、ビジネス共創につながらない“PoC貧乏”になってしまいます。またPoCの目的とゴールや基準の概要をスタートアップにも共有し、自社とスタートアップの間でPoCに対する認識を合わせるようにしましょう。認識を合わせることで、スタートアップからより適切なサポートやアドバイスを受けられることがあります。

NTT DATAでは、スタートアップだけでなく顧客を含めたPoCも積極的に実施しています。顧客からのフィードバックは、スタートアップの技術やサービス、自社ビジネスとの適合性を評価するために欠かせないものであり、今後の共創を判断する上で重要な材料となります。

PoC実施後のアクション

PoCの実施後、設定した基準に対する到達状況や評価結果の概要をスタートアップに共有しましょう。仮に結果が基準に達していなかったとしても、共有した情報をもとにスタートアップが今後の開発ロードマップに機能改善を加えたり、代替策を提示したりする場合があります。評価結果が良好であり共創を進めることになった場合は、事業化に向けた計画を立てていきます。

(※9)ITIL, Six Steps for a Successful Vendor Selection

https://blog.itil.org/2012/07/six-steps-for-a-successful-vendor-selection/

5.まとめ

本記事では、共創に向けた戦略立案およびスタートアップ調査や選定のポイントについて解説しました。スタートアップと連携する際に大事な点は、スピード感です。スタートアップもお付き合いする企業を選ぶ側であり、商機が見える企業を優先します。スタートアップと連携する場合は、自社の意思決定者を共創体制にいち早く組み込むことが重要です。

NTT DATAでは、本記事に記載したポイントを踏まえ、スタートアップとの先進的なセキュリティサービス共創に注力しています。先進技術を活用したセキュリティ対策もぜひNTT DATAにお任せください。

NTT DATA Introduces New Global Cybersecurity Strategy to Help Clients Boost Protection Against Cyber Risksについてはこちら:
https://www.nttdata.com/global/en/news/press-release/2023/december/ntt-data-introduces-new-global-cybersecurity-strategy

NTT DATAのCybersecurityについてはこちら:
https://www.nttdata.com/global/en/services/cybersecurity

NTT DATA Technology Foresight 2024についてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/technology/trend-listing/

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