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2024.7.29技術トレンド/展望

生成AIで進化するナレッジマネジメントと期待効果

経営資源としての「情報」を活用するナレッジマネジメントは、対象の範囲や規模が大きくなるほど困難さを増す。特定のプロジェクトや組織内ではうまくいっても、組織をまたぐことで複雑化し、具体的な効果も見えづらくなる。一方、文脈を理解しドキュメントを解析する能力を持つ生成AIは、ナレッジの管理や活用の課題を解決する可能性がある。多様なドキュメントで構成されるナレッジから有用な情報を抽出・整理し再利用可能にすることで、業務効率の向上や新たなオポチュニティの発掘に寄与することができるだろう。本稿では、ナレッジマネジメントにおける生成AI活用の可能性とNTT DATAでの具体的な取り組みを紹介する。
目次

1.ナレッジマネジメントの重要性と期待効果、課題

経営資源としての「人・物・金」に続き、「情報」がいかに重要かは誰もが認識するところとなっています。その中でも知識やノウハウ、事例などをナレッジとして蓄積・共有し再利用してブラッシュアップする「ナレッジマネジメント」は、様々な課題解決に有効な取り組みです。単一プロジェクト内から組織全体、さらには企業全体まで規模の大小に関わらず、成果物の共有やノウハウの手順化、FAQの作成など、何らかのナレッジマネジメントを実施しているのではないでしょうか。
多くのナレッジは記事やレポート、図表、プレゼン資料といった「非定型のドキュメント」として形式知化されます。これらのドキュメントは内容も構造も異なるため、自動化されたシステムでの管理は困難です。また、対象が増えれば分類などの管理が大変になり、件数が増えれば再利用のために探し出すことが難しくなっていきます。ナレッジマネジメントの仕組みを目的ごとに分割することもできますが、このナレッジはどこに格納すべきか、目的のナレッジがどの仕組みに格納されているのかといった新たな課題が発生し、ユーザーの利便性が下がることもあり、悩みの種は尽きません。

2.生成AIの登場とナレッジマネジメントへの応用事例

2022年11月末にChatGPTが登場して広く世の中に生成AIが認知されてから、この技術の活用や効果が期待されています。生成AIの技術のうち、大規模言語モデル(LLM:Large Language Models)は、自然言語で記述された文章からの情報の抽出、要約や言い換え、分類などが得意とされています。このような特徴は「非定型のドキュメント」を扱うナレッジマネジメントと相性が良く、前述のいくつかの課題の解決策となる可能性があります。
NTT DATAでは海外を含むグループ全体でナレッジマネジメントに取り組んでおり、生成AIの活用も積極的に進めています。以下に弊社の取り組みの概要と効果を紹介します。
NTT DATAにおけるナレッジマネジメントの特徴はノウハウとしてのナレッジの共有だけでなく、それを詳しく知る人や組織の情報、「Know-Who/Know-Where」も合わせて共有することです。共有されたナレッジをきっかけにした有識者とのコミュニケーションやコラボレーションが、新たなイノベーションの種となっています。また、共有するためのナレッジとして新たにドキュメントなどを作成するのではなく、日々の業務のアウトプットの一部を、情報セキュリティやコンプライアンスなどを守った上で共有することを推奨しています。これにより情報共有にかかるコストを低減しています。

図1:ナレッジ共有をきっかけとしたコラボレーション発生のイメージ

図1:ナレッジ共有をきっかけとしたコラボレーション発生のイメージ

こうした営みの中で、生成AIの適用ポイントがいくつもあります。例えばナレッジを共有する際に、あらかじめ要約を作成しておくことが重要です。共有されたナレッジは検索を通じてユーザーの元に届くことが多いですが、大抵の検索システムは「ドキュメント中で検索にヒットした前後の文章」しか表示しません。要約を提示することで実際にドキュメントを開かなくても内容を推測することができるようになります。生成AIによる要約をNTT DATAのナレッジマネジメントシステムに実装したところ、検索効率や利便性が向上し、生成された要約の品質も悪くありません。また、要約の作成と同時に特徴的なキーワードを抜き出し、カテゴリ分類やハッシュタグとして活用することで検索精度を向上させることもできます。さらには、英語のドキュメントを日本語に翻訳することも容易です。
加えて、共有されたナレッジを情報源とし、生成AIに質疑を行うことで、膨大なナレッジの中から必要な要素だけを抜き出すことができるようになります。これは特に規定や規約など社内ルールの確認、定型的な事務手続きやバックオフィス業務など、正解が明らかな課題には特に大きな効果を発揮しました。現時点では手続きに必要な準備のサポート程度となっていますが、遠くない将来には手続きの半自動化や、契約条件のリスク抽出といった高度な支援も実現できるかもしれません。
このような社内業務の効率化以外にも、実業務への応用にもチャレンジしています。例えば、お客様業界のトレンドやそれに対する社内の取り組み実績をまとめる、お客様への提案に向けて課題解決に役立つ社内ソリューションを探す、過去の類似事例とその関係者を探すなど、ビジネスの仕込みからクロージングまで生成AIが活躍できるチャンスは多くあります。

3.生成AIで倍増するナレッジマネジメントの効果

ナレッジマネジメントはあくまでも課題解決の手段であり、導入することが目的になってはいけません。サービスの利用件数や共有されたナレッジ数のモニタリングも必要ですが、効果を示すにあたり、もともとの課題解決にどれだけ寄与したかを示す必要があります。NTT DATAにも解決すべき課題は多くありますが、その中でもまずは「経営へのインパクトがある取り組み」であることをアピールするためにも、KGIとして売上向上を設定し、そこにつながる営業力の強化に焦点を当てました。とは言え、ナレッジマネジメントが売上や営業力強化に直接どれだけ寄与したかを単純に示すのは不可能です。NTT DATAでは売上に至るまでの営業のプロセスを、変化が定量的に把握できる粒度まで分解し、いくつかの重要項目をKPIとして設定しました。具体例をひとつ挙げるとすれば、社外からの連絡へのレスポンススピードの変化の計測です。ユーザーに同意を得た上で、メールやチャットの応答速度を定量的に評価し、ナレッジマネジメントの取り組み前後を比較すると、60%以上の改善が見られました。もちろん、サービス利用者数や利用件数、蓄積されたナレッジの件数なども、大切なKPIのひとつとなっています。

図2:代替指標によるナレッジマネジメントの効果測定の考え方

図2:代替指標によるナレッジマネジメントの効果測定の考え方

NTT DATAでは、この他にもビジネスチャンスの創出につながる行動を指標化して継続的にモニタリングし、あわせて定性評価としてアンケートやヒアリングを定期的に実施しています。これまでは自組織のケイパビリティだけでお客様への期待に応えようとしていましたが、ナレッジマネジメントをきっかけにグループ会社をまたいだコラボレーションが生まれたことで「新たな提案に繋がった」「実際に受注に至った」という声も確実に増えており、効果を実感しています。
こうした取り組みに生成AIの技術を取り入れることで、さらなる効果の増大に期待できると考えています。先に挙げた検索精度や効率の向上は、これまでの業務をさらに改善しビジネスのスピードを加速させるでしょう。ナレッジが活用されればコミュニケーションやコラボレーションの機会も増大し、イノベーションを生むための試行回数も増大していきます。また、生成AIとの対話を通じて埋もれていた技術や商材を発掘し、他のナレッジと掛け合わせることで思わぬ使い方が見つかり、新たなビジネスに発展するかもしれません。グローバル拠点との異なる言語の壁も、これまでよりはるかに容易に超えることが出来るでしょう。具体的な評価はこれからとなりますが、ユーザーからの好意的な意見や建設的なフィードバックが多く、手ごたえを感じているところです。こうした期待を現実のものにするために検証と評価を繰り返して、私たちはナレッジマネジメントを次のステージへ進めていきます。

4.おわりに

適切な課題設定とその解決手段のひとつとしてのナレッジマネジメントの適用は、確実に効果を生んでいます。生成AIのナレッジマネジメントへの活用は、情報の整理・検索・再利用の課題を解決し、企業の競争力をさらに高める大きな可能性を秘めています。生成AI技術の進化とともにさらなる利用方法が開発され、ビジネスの新たな価値創造に寄与することが期待されています。NTT DATAでは、こうした営みから得た経験やノウハウを投入したコンサルティングメニューや、取り組みを支えるソリューション群を、既にサービスや製品として提供しています。ご興味のある方は是非お声がけください。ビジネスの価値をさらに高める源泉となるナレッジの活用促進で、皆さまのお役に立てることを願っています。

図3:ナレッジマネジメントにおける生成AI活用機能の例

図3:ナレッジマネジメントにおける生成AI活用機能の例

「情報×人のつながり創り」を支援するナレッジマネジメントソリューション「knowler」を提供開始
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