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2024.8.2業界トレンド/展望

CX変革におけるData Cloudの役割とは

CX変革には、顧客の成功を再定義し、あらゆる顧客接点を通じて優れた体験を創出することが重要だ。企業と顧客がつながり続ける価値を創造するために、Salesforce Data Cloud(以下、Data Cloud)が果たす役割は大きい。個人情報を扱う上での課題にも注目しながら、Data Cloudをはじめとするソリューションの活用方法について解説する。
目次

1.今求められるCX変革とは

今、企業に求められるCX変革

CX変革として優れた顧客体験を創出するには、「顧客の成功をより大きく再定義する」ことと「接点横断×高解像度で優れた顧客体験を設計する」という2つの要素が必要です。

顧客の成功をより大きく再定義する

顧客の成功をより大きく再定義するとは、単に商品・サービスを顧客に提供するだけではなく、顧客がその商品・サービスの先に求めているより大きなニーズを捉え、一連の行動を支援するサービスを増やすということです。

運動靴メーカーが提供する顧客体験を例に説明します。この運動靴メーカーは、はじめに「自分に合った運動靴を入手する」という顧客の成功体験を支援していました。その後、顧客がなぜ運動靴を入手したいのかという動機に着目。顧客が最終的に求めているのは「健康寿命の最大化」であると定義し、ランニング支援アプリの提供や、ジム運営、サプリ販売といった新規サービスを創出することで顧客接点を拡張し、横断的な支援を実現しています。

サービス領域が拡大するほど、企業が提供する顧客体験は競争優位性が高くなると言えます(図1)。

図1:運動靴メーカーが提供する顧客体験の例

図1:運動靴メーカーが提供する顧客体験の例

接点横断×高解像度で優れた顧客体験を設計する

優れた顧客体験を提供するためには、フェーズやチャネルが変わっても一貫した体験を提供すること、さらには、顧客の置かれている状況に合わせた体験を提供することが必要です。

近年は価値観の多様化などを背景として、テレビCMのような同一の内容を全体に発信するマスマーケティングから、属性ごと、顧客の状況ごとに最適化したマーケティングが求められるようになっています。パーソナライズの解像度を上げるとは、同じ顧客であっても、状況(=利用文脈)ごとにアプローチを変えるということ。この利用文脈に合わせた高解像度な体験も、優れた顧客体験の要素の一つと考えています。

「つながり続ける価値」の創出

ここまで挙げてきた要素を顧客の視点で見てみると、「つながり続ける価値」の創出と言い換えることができます。機能価値、体験価値を超えて、よほどのことがない限りは他社に乗り換えたくない、という「つながり続ける価値」をいかに生み出せるか。これが、企業に求められるCX変革なのです。

図2:接点を横断した一貫性(サービス横断)のイメージ

図2:接点を横断した一貫性(サービス横断)のイメージ

2.Data Cloudの強みとCX変革における役割

CX変革の2つの要素に対するData Cloudで解決可能な課題

1章のCX変革の2つの要素を考えたときに、データ活用という点でいくつかの課題が考えられます(図3参照)。

これら課題の解決につながるのが「Data Cloud」です。企業が持つあらゆるデータを顧客接点で活用するためのプラットフォームですが、ほとんどの機能がGUIの操作で完結するため、改修が容易で、スピード感のあるアップデートが可能です。また、CRMとCDP(Customer Data Platform)の連携を強化する機能を具備しており、個人データを最大限に活用することができます。

図3:優れた顧客体験の実現にあたっての課題

図3:優れた顧客体験の実現にあたっての課題

CX変革を実現する上でのデータ活用の課題に話題を戻しましょう。

まず、「顧客の成功をより大きく再定義する」ためには、分散する大量データの収集、個人情報の統合、全チャネルで一貫した顧客接点の実現が必要です。

Data Cloudの標準機能では、分散した大量の顧客データを容易に集めることが可能です。集めたデータは、異なる顧客情報テーブルのデータモデルにマッピングし、名寄せし整理していきます。この時の名寄せの精度が、顧客体験の品質につながります。Data Cloudの「ID解決」を使用すれば、ある程度複雑な名寄せのロジックを実装することが可能です。

またData Cloudの一番の特徴は、個人情報を扱う点で、CRMと有人チャネルにおけるデータ活用に重きを置いていることです。そのため、どのような顧客体験を提供するかをあらかじめ考え、データの活用方法を検討していくことが必要です。

「接点横断×高解像度で優れた顧客体験を設計する」という点では、爆発的に増加するパーソナライズパターンへの対応、さらには、高速かつ柔軟な改善・拡大という課題が挙げられます。

生成AIを活用して膨大なデータから顧客一人ひとりにあった最適な提案を絞り込むには、適切な提案パターンを作成することが重要です。最初に描いた業務や顧客体験がベストとは限らないため、設定を柔軟に変更できるData CloudのGUI操作はPDCAを繰り返す運用に適していると考えます。

Data Cloudには大量の個人情報が格納されているため、データの取り扱い、特に「同意管理」を適切に行う必要があります。ここからは、個人情報の同意管理に関わる最近の動向や課題を説明し、Data Cloudの強みをご紹介します。

3.同意管理の重要性と課題

個人情報管理の重要性

社会における規制動向の観点

2022年に個人情報保護法が改正され、企業が個人情報を扱うための責務が多く追加されました。また、罰則金も大幅に引き上げられ、規制が強化されつつあります。社会全体でも、企業の個人データ活用に関する規制への関心が高まっています。顧客から同意をもらい、その内容に基づいてデータを利活用することは、まさに競争のカギになっています。

同意管理を重視する流れは今後も加速するでしょう。その理由に「レピュテーションリスクの増大」と「同意パターンの増加」の2点が挙げられます。

図4:個人情報管理の重要性

図4:個人情報管理の重要性

レピュテーションリスクの増大

レピュテーションリスクの実例を2つ紹介します。同意管理が、単に法律を遵守し同意を取得するだけの容易なものではないことを、理解いただけるのではないでしょうか。

まずは、鉄道系企業の事例です。顧客の安全性を高めるために、防犯カメラを使った犯罪歴のある人物を探索するセキュリティ向上施策を実施しました。もう1つ、小売業の企業様の例では、会員規約で同意を得た範囲で、自社サービスの会員データの販売に力を入れていくというリリースを発表しました。

いずれも、同意を得た範囲でデータを利活用する取り組みであり法令上は問題がないのですが、SNSなどによる情報発信・拡散により、結果的に社会的に大きな批判を受けることになりました。

図5:レピュテーションリスクの増大

図5:レピュテーションリスクの増大

同意パターンの増加

CX変革には、あらゆる顧客接点で一貫性のあるアプローチがより一層必要になります。そして、連携するサービスやチャネルは、多様化していくことが想像できます。結果的に、顧客から得られる情報量も増加。それに伴い、管理すべき同意情報の量・バリエーションが増えていくことになります。この変化にしっかり順応して、より優れた顧客体験を提供していくために、仕組みを十分に整えていく必要があります。

図6:同意パターンの増加

図6:同意パターンの増加

同意管理の課題はライフサイクル管理

同意管理に関して最も多く話題に上がる課題が「ライフサイクル管理」です。

なかでも、同意の取得段階では、顧客との認識齟齬を防止するという課題があります。例えば、規約の作成では、法律上の要件を満たすため、厳密性や正確性が求められます。一方で、あまりにも難しすぎる内容になると顧客に伝わりづらいため、バランスの調整が必要です。

同意情報の管理・活用のフェーズにおいては、顧客からの要求対応が大きな課題となってきます。顧客は自身のデータの第三者提供履歴の開示、データの利用停止、データの削除などの要求が可能になりました。こうした要求に、いかに対応していくかも重要な課題です。

図7:同意管理の課題はライフサイクル管理

図7:同意管理の課題はライフサイクル管理

望ましい同意管理の在り方

同意管理の実現に必要な4つの要素

前項で、同意管理に関する2つの課題を紹介しましたが、さまざまな課題を踏まえ、望ましい同意管理を実現する4つの要素について説明します。

図8:同意管理の実現する4つの要素

図8:同意管理の実現する4つの要素

同意取得時は、顧客との認識齟齬の発生を防ぐために「法律要件を満たす分かりやすい規約」「できる限り同じ画面フォーマット」の2つの要素が必要です。具体的には、適切な規約の作成や、画面フォーマットの統一が挙げられます。

残りの2つの要素は、同意取得後の観点であり、「同意情報の一元的な管理」「顧客自身で同意情報を操作」が挙げられます。顧客からの要求対応や、最適な施策を実行していくための情報の一元管理、顧客自身で同意情報を参照・変更・削除するための仕組みの提供が必要になります。

「一元管理」と「同意情報操作」で発揮されるData Cloudの2つの強み

「同意情報の一元的な管理」「顧客自身で同意情報を操作」という2つの要素を実現する上で、Data Cloudには2つの強みがあります。

1つ目は、取得した同意内容を一元管理する標準データモデル「同意管理モデル」です。Data Cloudへの同意情報の取り込みを容易にし、同意内容に従って、顧客接点で必要な情報を適切に連携します。

2つ目は、同意管理操作を可能にする「同意API」が備わっている点です。同意情報の参照や削除といった、顧客自身による同意情報の操作を実現するためのAPIを提供している点は、他のCDP製品にはないData Cloudの強みだと考えます。

図9:同意管理機能を具備しているData Cloud

図9:同意管理機能を具備しているData Cloud

同意管理製品とのコラボレーションによる補完

一方で、Data Cloudは同意管理に必要な要素を全て網羅しているわけではありません。カバーしきれない課題に対しては、サービスを組み合わせることを検討します。NTTデータが提供する同意管理サービス「Consent Wallet®」では、生成AIを使った最適な規約の作成支援や同意の取得画面、同意内容の確認・変更といった操作画面を同一のフォーマットで提供することが可能です。まさにData Cloudがカバーしきれない領域を補完することができます。

図10:同意管理サービス「Consent Wallet®」の機能例

図10:同意管理サービス「Consent Wallet®」の機能例

Data Cloudの強みを生かした望ましい同意管理の実現

望ましい同意管理の実現には、同意管理製品とData Cloudそれぞれの強みや機能を掛け合わせることが重要です。これにより、複雑化・多様化する顧客とのタッチポイントでのデータ利活用を適切に行い、より優れた顧客体験の提供が可能になります。

図11:Data Cloudによる望ましい同意管理の実現

図11:Data Cloudによる望ましい同意管理の実現

4.まとめ

同意管理の例のように、社会で提供されていないような顧客体験を企業が提供していくと、求められる役割が増加したり、変化したりします。そのため、少し先に求められる役割を見据えながら、Data Cloudをはじめとするソリューションの生かし方を考えていくことが重要です。 NTT DATAでは、CX変革のための構想立案から成果創出まで、デザイン・データインテリジェンス・カスタマーエンゲージメントを融合して、End to Endでお客様の成功を支援します。

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