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2024.9.6事例

日本政策金融公庫が挑むローコード活用と共創での変革

日本政策金融公庫(JFC)は、中小企業や個人事業主、農林水産業者向けの事業資金、国民向け教育資金の融資等を行う政府系金融機関。2023年に基盤システムの更改に伴い顧客接点として重要な「インターネット申込システム」を更改。当初は現行と同様Javaでの開発を予定していたが、NTT DATAの提案を受け、ローコードプラットフォームを採用。この選択により、サービスの拡張や変更が容易になり、高速開発が可能となった。JFCは質の高いサービス提供と持続可能な社会の実現を目指しており、NTT DATAと共創している。この取り組みの内容や成果について、両社の関係者へのインタビューを実施した。
目次

インターネット申込システム更改の背景

--JFCは2023年5月、融資の申し込みをオンラインで受け付けるインターネット申込システムの更改を実施しました。更改の背景について教えてください。

日本政策金融公庫 小林 広樹 氏

日本政策金融公庫
小林 広樹 氏

日本政策金融公庫:小林 氏インターネット申込システムは、24時間365日いつでも国民生活事業の事業資金や教育資金の借入申込をオンラインで受け付けるサービスです。基盤の廃止に伴う基盤更改を検討しており、当初は現行システムと同様にJavaを利用する想定でしたが、NTT DATAからの提案で、ローコードプラットフォームを導入することにしました。

NTTデータ:茂松インターネット申込システムは、お客様の事業継続を支えるために、有事の際においても円滑な業務の継続を可能とするセーフティネット機能として、高いセキュリティ品質や安定稼働が求められていました。また、サービスの拡張や変更が容易、かつ迅速に実装できることも望まれていました。そこで、効率的にセキュリティ対策及び保守性を向上でき、お客様の要望や社会の変化に応じて柔軟に追加開発が可能なローコードプラットフォーム『OutSystems』(※1)を使用することとしました。

(※1)OutSystems:

https://www.outsystems.com/ja-jp/

ローコードプラットフォームで実現する、高アジリティ開発のねらい

--OutSystemsや、それを使って実現しようとした内容について教えてください。

NTTデータグループ:島倉OutSystemsは世界的に評価されているローコードプラットフォームで、国内外のさまざまな業界や業務で活用されています。フルスクラッチでの開発と比較して2~5倍の生産性が出るケースが多いです。今回は、OutSystemsでシステムを実現できることを事前に実機検証しました。システム全体の主要な65%の機能を対象に、機能面においては現行システムと同レベルのUIやロジックを実装できること、非機能面においては性能要件ピークの負荷に耐えて業務継続できることを確認しました。そして、実機検証の結果をもとにOutSystemsでも機能・非機能要件を実現できることを訴求しました。

NTTデータ:茂松品質面において、OutSystemsで構築されたアプリケーションは、自動生成するコード自体のセキュリティレベルが高いというメリットがあります。生成されたコードは静的脆弱性診断が自動的に実施されるため、開発時に効率的にセキュリティを担保できます。また、属人性の排除による保守性の向上によって運用時の安定性も期待できます。NTTデータの持つ技術力に加えて、OutSystemsを導入することにより得られる品質向上効果も今回のプロジェクトのポイントです。

日本政策金融公庫:小林 氏提案には、インターネット申込システムへのローコードプラットフォーム適用だけでなく、中長期的な『共創』の実現という観点が含まれていました。これは、ビジネスパートナーとして共に成長していくことへの意気込みを感じさせ、とても心強く思えました。Javaなどのプロコード(従来の専門的なプログラミング言語での開発)と比較して習熟難易度が低く、高速開発ができるOutSytemsの導入をきっかけに、JFC職員のITスキルの向上や業務効率化、そしてお客様への質の高いサービス提供につなげていける可能性を感じました。

NTTデータ:小林JFCがお客様へアジリティ(俊敏性)高く価値提供を行っていくためには、JFCとNTT DATAが一体となり、共創関係を構築し、BizDevOps(※2)を実現していくことが有効だと考えています。更改プロジェクトでのプロトタイプ検証によるUI/UX改善(ユーザーインターフェースと体験の向上)を始めとし、段階を踏んで一体となったチームを構築していくことを意図していました。

図1:BizDevOpsの実現

図1:BizDevOpsの実現

(※2)BizDevOps:

ビジネス部門(Biz:Business)、開発部門(Dev:Development)と運用部門(Ops:Operations)の3つの部門が一体となって協力し、ビジネスの生産性を高める概念

--導入効果についてお聞かせください。

日本政策金融公庫 佐伯 菜生人 氏

日本政策金融公庫
佐伯 菜生人 氏

日本政策金融公庫:佐伯 氏良かった点の1つ目は、設計段階でユーザー部門が実際に動く画面を確認でき、スムーズに合意形成ができたことです。通常であれば開発後に想定と異なる仕様があっても、時間的な制約等から全てを反映いただくことが難しい場合もあります。しかし、今回はプロトタイプ検証の段階で動作を見ることができ、早い段階から細かな仕様まで踏み込んで検討して取り組めました。これによって、お客様にとってより使いやすいシステムを実現できたと思います。

2つ目は、生産性の向上です。特に製造と単体テスト工程で期間短縮ができ、テストで出た不具合にも素早く対応できました。インターネット申込システムでは、お客様の要望や社会の変化に応じて機能改善を実施していく必要があります。近年では、新型コロナウイルス感染症拡大をはじめ、地震や台風等の自然災害も頻発しており、政策金融の役割を意識して、迅速かつ安定的に対応することの重要性は一層高まっています。いかなる危機や緊急時においても、お客様の事業継続を支えることが使命です。そのため、高い生産性で柔軟に開発ができることはリリース後の保守運用の観点でも非常に大きなメリットです。

更改後のUI改善及び共創の取り組み

--インターネット申込システムの更改は無事成功し、その後JFCとNTT DATAでは、よりユーザビリティの高いシステムを追求して「UI改善」や中長期的な「共創」の取り組みを進めているようですね。

日本政策金融公庫:佐伯 氏システムリリース後も、継続してNTT DATAとUI改善に取り組んでいます。改善案を検討していく段階で修正後の実際の画面を確認することができたため、イメージの相違なく進めることができました。迅速に改善対応を実施できたことで、お客様やユーザー部門にとってよりユーザビリティの高いシステムにすることができました。

NTTデータ:中嶋JFCとNTT DATAが共創し、一体となったプロジェクトチームを構築するには、双方の理解を深める必要があります。NTT DATAはJFCの業務や課題をより理解し、JFCはIT知識を強化することが求められます。UI改善の取り組みでは、JFCの業務やユーザー視点の課題について理解を深め改善に活かすことができました。JFC職員がIT知識を深めるための取り組みとしては、インターネット申込システムで導入したOutSystemsについての実践的な勉強会を実施しました。

日本政策金融公庫 吉原 恒介 氏

日本政策金融公庫
吉原 恒介 氏

日本政策金融公庫:吉原 氏JFC職員はIT部門であっても実際にシステムの実装部分にはあまり携わりません。自分たちが関わるシステムがどのように作られているのかを知る機会があるのは、有意義だと感じました。

NTTデータグループ:鈴木勉強会では、OutSystemsについての座学での講義とアプリケーションの模擬開発を実施しました。開発する題材は、JFCとNTT DATAで一緒にワークショップを行い検討しました。JFC職員の実際の業務課題を解決するためのアプリケーションをテーマに、業務を把握しているJFC、システム開発の知識のあるNTT DATAが互いに意見を出し合うことで、新たな気づきのあるワークショップになったと思います。

図2:JFCとNTT DATAでの合同ワークショップでの検討アイデア

図2:JFCとNTT DATAでの合同ワークショップでの検討アイデア

--ワークショップで検討したアイデアを基に、JFC職員5名が2チームに分かれて、「タスク管理」と「文書管理」の2つのアプリケーションをわずか9時間で開発されたとお聞きしました。

日本政策金融公庫:吉原 氏今回勉強会に参加したメンバーは、全員開発未経験の若手のメンバーでした。初めて触るOutSystemsの使い方から学び、作りたい内容に合わせたDB設計や画面デザイン、そして実際にアプリケーション開発までを実施することができました。若手のJFC職員たちがこういった機会で開発を体験できたことは、今後業務を進めていく上でも非常に意味があることだと考えています。また、勉強会を通じて、NTT DATAとの間に「顔の見える関係」を構築できた点もよかった点と考えます。

図3:実際にJFC職員が9時間で開発したシステムの一画面(タスク管理システム)

図3:実際にJFC職員が9時間で開発したシステムの一画面(タスク管理システム)

図4:実際にJFC職員が9時間で開発したシステムの一画面(文書管理システム)

図4:実際にJFC職員が9時間で開発したシステムの一画面(文書管理システム)

より質の高いサービス提供を目指して

--最後に、これからの展望についてお聞かせください。

日本政策金融公庫:吉原 氏JFCは、より質の高いお客様サービスの提供や、JFC職員のDXリテラシーの向上を引き続き目指していきます。その上で、開発にスピード感があり、品質やセキュリティ面も確保しやすいローコードプラットフォームは1つの手段として有効だと考えています。実際にインターネット申込システムの更改で高い生産性が出た成果もあるため、今後も適性のあるシステムを見極めながら活用していきたいです。

NTTデータ:小林お客様の利便性向上や業務の効率化のためには、お客様や現場のユーザー部門からの要望をプロアクティブに(先を見越して主体的に)収集し、アジリティの高いシステム開発を行っていく必要があります。JFCとの共創の中で、これまで以上に要望や課題をすぐにシステムに反映していける体制づくりやプロセス整備にも貢献していきたいです。政策金融としての価値を迅速かつ効果的に提供することで、お客様の事業継続や地域・我が国の成長・発展を支え、共にサステナブルな社会を実現していきます。

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