1.導入の背景と課題
~“データが資産“という企業文化の下、データの利活用によるイノベーションを目指す~
JCBでは2017年度、データの利活用によるイノベーションを、全社横断的に推進するためにイノベーション統括部を新設。同部では“決済データをビッグデータとして利活用してマーケティングを強化する”、“AIを用いて社内事務のプロセスを革新し低コスト化と業務品質向上を目指す”などを重要な取り組み課題と位置付けた。
このイノベーション活動の一環として様々なAIツールの利活用を検討する中でDataRobotを知り、同じような機能を持つ複数のツールの比較検証を行なった。AIツールの導入にあたり、業務部門から反発はなかったという。これはJCBの文化が背景にあると、マーケティング部 副主事の上柳汐美 氏は語る。「JCBでは、新たな施策の前段階として、データをデータウェアハウスから自分たちで抽出して分析したうえで検討するといったように、データを分析すること自体が全社的に定着している文化があります。物作りをしている企業と違って、私たちのビジネスは“データを資産にして成り立っている“という意識が強いのかもしれません」(上柳 氏)
こうした企業文化を背景にして、DataRobot導入に向けた比較検証を実施することになった。
マーケティング部 副主事 上柳 汐美氏
2.導入の経緯
~精度、コスト、ユーザビリティの観点で検討しDataRobotの 導入を決定、成果を見据えたサポートが決め手に~
JCBではDataRobotの導入前に、他社製品と比較評価するためのPoCを実施。主に「精度」「コスト」「ユーザビリティ」の観点で検討を進めたという。具体的には、複数部署の実際の業務から具体的な案件を集めて分析し、それぞれの製品で精度にどれぐらいの差があったのかを比較した。
コストの比較では、製品ごとにライセンス形態や課金形態が異なるため、具体的な使い方を仮定して総合的なコストパフォーマンスを算出したという。また、特に重視したというユーザビリティでは、「誰が使うことができるのか?」「メンテナンスは大変でないか?」という踏み込んだ観点でも検討した。当然、国内ベンダーによる充実したサポートなども考慮した。「トラブル時の対応はもちろん、どのように使って、どのような価値を出すか?という成果に紐づいたサポートを重視しました。そして、業務部門側がDataRobotを使って課題解決していけるという実感を持てたのが大きかったです」(上柳 氏)
こうして、DataRobotが総合的に優れていると評価し、決定に至ったという。導入にあたっては、各部門での業務が複雑であったため、業務部門へのヒアリングや分析要件設計・実行といった一連のプロセスで苦労したという。
しかしNTTデータのデータサイエンティストが業務内容を一緒に理解し、実現性の高いモデルやデータフローを構築。業務部門に対して予測・分析結果を丁寧にわかりやすく説明したことで、業務部門、マーケティング部、NTTデータの三位一体での信頼関係・協力体制を構築することができたという。
「データサイエンスの専門知識だけではなく、SIerとしてデータフロー・システム実現方式まで一気通貫で検討支援いただきました。企画段階からこれらを考慮することで、より実現性を高めることができたと思います。」(上柳 氏)
3.導入効果
~データ分析に対する意識の向上と、年間数千万円以上のビジネス効果を創出するサービスも~
JCBでは現在DataRobotを活用して、プレミアムカードサービス改定方針の策定や、非効率であった架電業務の効率化などを実現している。プレミアムカードサービス改定方針の策定では、属性や利用状況からお客様を分類し、それぞれの特徴を特定するプロセスをDataRobotで実行。お客様毎により価値を感じていただけるサービスを検討できるようになったという。
また架電業務の効率化では、架電の必要度判定のためのロジックが老朽化しており、お客様への架電業務が非効率になっていた。この複雑化したロジックを、DataRobotで飛躍的に高精度なモデルへと刷新することに成功。年間数千万円以上のビジネス効果を生み出している。
さらに、他の業務部門でも様々な取り組みが進んでいるという。プレミアムカードサービス改定方針の策定を推進したマーケティング部 部長代理の高島氏は、「DataRobotによって将来のライフタイムバリューの観点で分析ができるようになりました。これはブレスト段階からNTTデータさんが入り、私たちを肯定するだけでなくデータサイエンティストの目線で建設的な意見も遠慮なく出してくれた結果だと思います。我々JCBが持っている知見と、データサイエンティストが持っている知見をミックスさせることができ、非常に感謝しています」と話す。
JCBでは今後も、業務部門・マーケティング部門・NTTデータの三位一体の体制でDataRobotによる業務改革やサービス向上を実現していくという。
マーケティング部 部長代理 高島 慧氏
4.今後の展望
~データの利活用を文化面・環境面で支え、より高度なデータ活用を実現したい~
JCBでは現在、高度なデータ活用の一環として「JCB消費NOW」を展開。JCBの持つデータを元に、日本国内の現金消費を踏まえた消費動向を可視化。加盟店に提供するだけでなく、社会的な価値の創出も模索しているという。
こうした新たな取り組みに対して上柳氏は「データを使って新しい価値を生み出せるように、文化と環境の両面から働きかけていきたい。データ利活用の高度化を実現するためには、実業務を推進している各部の取り組みが不可欠です。我々の活動は『こんなデータを使ったら既存課題が解決できるのでは、もっと価値の高い洞察が得られるのでは』というような、データ利活用に対する気づきや好奇心を高めるための種まきであると考えています。その種が将来的には、JCBが持つ膨大なデータから社会的価値を生み出すことに繋がると思っています。」と語る。
企業紹介
株式会社ジェーシービー
所在地:東京都港区南青山5-1-22 青山ライズスクエア
設立:1961年1月25日
資本金:106億1,610万円(2021年6月末現在)
事業内容:クレジットカード業務、クレジットカード業務に関する各種受託業務、融資業務、集金代行業務、前払式支払手段の発行ならびに販売業およびその代行業
URL:https://www.global.jcb/ja/
※ 記載されている内容は2022年4月現在のものです。
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