1.導入の背景と課題
~進みたい人の芽を摘むことなく、データ活用フロー全体の民主化・自由化を目指す~
株式会社ユナイテッドアローズは「真心と美意識をこめてお客様の明日を創り、生活文化のスタンダードを創造し続ける。」を理念に、国内アパレル業界の牽引者としてファッションアイテムを発信し続けている。昨今は、収益性の高い企業体への生まれ変わりと、今後の成長に向けた土台を作るために様々な変革を実践している。こうした中、米DataRobot社が提供するAI Cloudプラットフォーム「DataRobot」を導入。クレジットカード不正利用検知やEC商品出荷量予測など、大きな効果を挙げている。
ユナイテッドアローズでは、ITソリューション本部ITサービスプラットフォーム部IT戦略デザインチームがデータ活用のための基盤の構築や環境の整備、AIを使った機械学習などの実務上の活用サポートを担当している。シニアマネジャーの中井氏がデータ整備の方針策定、基盤の設計、データ活用事案の発掘を担当し、メンバーの一人の福地氏がデータ基盤の運用、データ利用ルールの設計、機械学習モデルの構築と運用を担っている。中井氏は「元々はデジタルマーケティング部門でDWHの構築などを情シス部門とは別で独自に行っていたが、その後に今のチームに異動しECサイト構築を担当することになった。マーケティングやECサイトに関わる業務理解があったため、情シスでいながら現場課題の解決を主導できていた」と語る。IT戦略デザインチームでは、データ活用フロー全体の民主化・自由化を目標に活動しているという。以前は、各業務部門がそれぞれ営業を受けたAIツールを導入しPoCが乱立。「AIツールは既存業務にいかにフィットさせるかが重要」(中井氏)だが、既存業務と課題の分析ができていない状態で導入していたためにクリティカルなソリューションになっておらずPoC段階で頓挫し、自然消滅するケースも多かったという。また、その各種AIツールのサポート対応でチームの業務負荷も増大していた。中井氏は「データを使う側に渡すことに苦労していたので、データ活用フロー全体の民主化・自由化を目的に、データを使える環境を用意したかった」と振り返る。また「情シスが全体を意識しすぎて統制することで、“できる人に対応した環境が作れない”や“もっと進みたい人の芽を摘む”ような状態に陥りたくなかった」と語る。
ITソリューション本部 ITサービスプラットフォーム部 IT戦略デザインチーム シニア マネジャー 中井 秀 氏
2.導入の経緯
~収益化や効果が見込めるテーマを見極めることを重視し、DataRobot導入を決定~
中井氏は、元々CRMの分析をやっていた中で、より高度な分析を行えるAIでやってみたいという思いがあったという。こうした中、ユナイテッドアローズに見合ったAIサービスの検討を開始。当時「分析はできるがデプロイはできない」という製品が目立つ中、クラウド上で提供され、モデルをデプロイすることにより簡単に利用可能な状態にすることができ、APIを通してシステム連携が簡単にできるAIプラットフォームという理由でDataRobotを選択。ただし、導入にあたってはしっかりとROIが見込めるテーマを見極めることを重視したという。
また、ユナイテッドアローズでは、コロナ禍によるECサイト需要の増加と、それに伴う決済不正が想定以上のペースで増加し早急な対応が迫られていた。中井氏は、不正分析からデプロイ、業務実装までを圧倒的なスピードかつセルフサービスで実現できるDataRobotならば対策できるという確信を持ち、これを最初のテーマとしてDataRobotの導入を決定。店舗で利用していたクラウド型総合決プラットフォームで高い実績があったNTTデータから導入することにしたという。導入決定後にはNTTデータと共同で「機械学習とは?」といった初歩レベルのセミナーを皮切りに、社内で「テーマ創出ワークショップ」を実施。各部門の参加者が独自に考えたテーマを元にグループワークでディスカッションを行った。EC開発、デジタルマーケティング、IT部門で実施予定だったところ、人事部門、MD推進部門、商品部門、お客様相談室などから12名が参加、現在もワークショップで創出されたテーマから、MD推進部門やお客様相談室で実際に試験運用しているテーマもあるという。
ITソリューション本部 ITサービスプラットフォーム部 IT戦略デザインチーム 福地 あゆみ氏
3.導入効果
~導入後1ヶ月半で約1億円のビジネスインパクト。予測精度や工数でも効果~
最初のテーマとなった「DataRobotによるECでの決済不正検知」では、導入後1ヶ月半という短期間で不正利用を激減。約1億円のビジネスインパクトという大きな成果を挙げることに成功した。また、それに続くテーマとして社内から様々なテーマを集めた結果、物流部門でのEC商品出荷量予測業務にDataRobotの活用が見込めたという。EC商品出荷量予測業務では、自社ECの注文から出荷における必要人員の予測を人為的に行っていた業務で、従来は1人の担当が行う“属人化した業務“であった。これをDataRobotに置き換えることで“いつでも誰でもできる業務”へと昇華させることに成功。予測の精度、予測にかかっていた工数ともに大きな効果を得ることができたという。主担当だった福地氏は成功の秘訣として「徹底した現場目線が重要でした。現場への綿密なヒアリングを行い、実務を詳細に理解することに時間をかけました」と語る。さらに「NTTデータとの月例定例ワーキングでは、豊富な他社事例などをもとに様々な方面からのアドバイスがもらえる。NTTデータ側のノウハウが膨大なので、社内だけでは解決できないことが解決できている実感がある」(福地氏)ともいう。
4.今後の展望
~AIを使いたい人が使いたい時に使えるようにしていく~
ユナイテッドアローズでは、今後もさらに“AIを使いたい人が使いたい時に使えるようにしていく”という。中井氏は「AIに対する認知の差は、業務とデータとの距離に比例しています。EC、物流などデータと距離が近い部門ではAIを使わざるを得ないし、AIで改善される可能性も高い。それ以外の部門は自然の流れに委ねることも重要。ただし“データとの距離は遠いが、AIによって改善が見込めるテーマ”というものがあり、これはIT側の部門が気付かせてあげる必要がある。そのために認知を広げたい」と今後の意気込みを語る。
企業紹介
株式会社ユナイテッドアローズ
所在地:東京都渋谷区神宮前三丁目28番1号
設立:1989年10月2日
資本金:30億30百万円
事業内容:紳士服 ・ 婦人服および雑貨等の企画 ・ 仕入 および販売
URL:https://www.united-arrows.co.jp/
※ 記載されている内容は2023年3月現在のものです。
【DataRobot】の概要資料は、こちらからダウンロードください。