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2020.12.23INSIGHT

2020年冬のトレンドは、90年代発売のあの名曲?―脳科学×AIが届ける新たな音楽との出会い―

時代とともに変わりゆくトレンド。ビジネスを成功に導くカギともいえる、“トレンドの先読み”をAIで行う事が出来ないか。今回紹介するのは、こんな願いを叶えるような取り組みです。
NTTデータが保有する最新の脳科学の技術をもとに、「曲を聞いた時の脳活動推定」を元に導き出された「2020年の音楽トレンド」。このトレンドに最も近い過去の楽曲は、なんと1992年にリリースされた稲垣潤一の「クリスマスキャロル」でした。
分析過程の紹介とともに、脳科学×AIによるトレンド分析の可能性をひも解きます。

無意識の領域から音楽トレンドを掘り起こす

今回の分析で用いた技術NeuroAI-Musicは、音楽を聴いているときの脳活動をシミュレーションするもの。実際に被験者に音楽を聞かせなくても、音楽に対する複雑な脳の反応を評価することができます。これまでNTTデータでは、広告動画などを対象にこうした脳情報を利用することで、従来のAIよりも正確に広告効果推定ができることを示してきました。今回行ったのは、楽曲の特徴を脳情報として可視化し、ヒットチャートとの関係を科学的にAIに理解させるもの。それによってAIに音楽マーケットのトレンドを予測しようとする世界でも類の無い試みです。

NTTデータとNTTデータ経営研究所は、人間の脳活動を推定する技術 NeuroAIとBillboard Japanのチャートデータ楽曲を用い、1年にわたる共同研究の末、脳情報化による新たな特徴の獲得、ヒットソングの特徴の可視化、未来の音楽トレンドを予測することに成功しました。

脳科学×AI活用の可能性(1)新たな楽曲との出会いを提供

現在の楽曲ストリーミングサービスで一般的になっているプレイリスト形式の利用は便利な反面、ユーザーの行動履歴に基づいて作られるなどの理由で、ジャンルや年代が一定になりやすい傾向があります。そこで、脳情報を利用することで、「聴いた時に脳へ与える刺激が似ている」という観点で楽曲を選ぶことができます。例えば、瑛人の香水(2020)から石川さゆりの天城越え(1986)がリコメンドされるような、ジャンルも年代も超えたプレイリストが出来上がります。今までは聴かなかったようなジャンルからも、好きになれる楽曲との出会いを提供します。

“NeuroAI selected Playlist”与える脳刺激が似ている楽曲をリスト化

脳科学×AI活用の可能性(2)なぜこの曲が流行ったの?「ヒット要因の可視化」でヒット曲を量産!?

これまではヒットソングの人気の理由を定量的に分析することは難しく、後付けで定性的な分析をしていました。しかし、歌詞、コード進行等の分析に加え、音楽を聴いているときの脳活動情報を得ることで、ヒットの要因を可視化できるようになりました。
可視化したヒットの要因を使えば、ヒットの可能性を大きく秘めた楽曲をつくることが可能となります。

コロナ拡大前後の歌詞の変化
コロナ拡大前と、コロナによる自粛等が始まってからの楽曲の歌詞から単語を抽出し、変化の大きかった単語を大きさで表現。「夜」、「君」、「僕」など、自粛期間を反映するような閉じた世界観を連想させる単語が増加

楽曲特徴を脳情報化した楽曲マップ
NeuroAI-Musicを用いて脳活動を予測したデータと楽曲の音声信号の周波数解析から音色の特徴を抽出し分析した結果をプロット

脳科学×AI活用の可能性(3)本当にトレンディな曲のランキングは?

ヒットの要因を更に定量的に分析し、トレンドを把握するため、アーティストの既存の人気などの影響も加味したうえで、楽曲の特徴(脳情報・歌詞特徴・コード進行特徴等)のみ定量化する“チャートモデル”を制作しました。これはどんな楽曲を持っているものが、その週のチャートポイントを多く獲得するのかを定量的に説明する「その週のヒットの方程式」のようなもの。
Billboard JAPAN HOT 100の2020年上半期チャートを対象とし、実際のランキングと楽曲特徴チャートモデルに基づくランキングを比べると、後者ではOfficial髭男dism、LiSA、菅田将暉などに加え、wacci、ヨルシカ、iriといった次世代アーティストたちもランクインする、新旧の楽曲が混交するランキングとなりました。このチャートモデルにより、楽曲の特徴からトレンドを把握する可能性を見出すことができました。

Billboard JAPAN HOT 100(総合ポイント)トップ20楽曲特徴のみに基づくスコア トップ20
1位PretenderOfficial髭男dism1位別の人の彼女になったよwacci
2位I LOVE…Official髭男dism2位紅蓮華LiSA
3位白日King Gnu3位PretenderOfficial髭男dism
4位紅蓮華LiSA4位ただ君に晴れヨルシカ
5位宿命Official髭男dism5位まちがいさがし菅田将暉
6位D.D.Snow Man6位花に亡霊ヨルシカ
7位イエスタデイOfficial髭男dism7位LOVE SCENARIOiKON
8位まちがいさがし菅田将暉8位Stand Out Fit InONE OK ROCK
9位Imitation RainSixTONES9位君はロックを聴かないあいみょん
10位マリーゴールドあいみょん10位DropoutSEKAI NO OWARI
11位115万キロのフィルムOfficial髭男dism11位ハルノヒあいみょん
12位バッド・ガイビリー・アイリッシュ12位ノーダウトOfficial髭男dism
13位ノーダウトOfficial髭男dism13位会いたいわiri
14位Teenager ForeverKing Gnu14位空の青さを知る人よあいみょん
15位馬と鹿米津玄師15位クリープハイプ
16位しあわせの保護色乃木坂4616位どろんKing Gnu
17位Lemon米津玄師17位脳漿炸裂ガールれるりり
18位ソンナコトナイヨ日向坂4618位アイノカタチfeat.HIDE(GReeeeN)MISIA
19位無限大JO119位怪物さん feat.あいみょん平井堅
20位インフェルノMrs.GREEN APPLE20位Wherever you areONE OK ROCK

対象期間:2019年11月25日(月)~2020年5月24日(日)
図:Billboard JAPAN HOT 100の2020年上半期と楽曲特徴のみからトレンドを評価したランキング

未来のランキングを予測する

このチャートモデルを用いてトレンド楽曲の特徴を把握することで、過去のランキングの変化パターンを学習し、未来に支持される楽曲特徴を予測することもできるようになりました。
実際のチャートデータに加え、「急に聴かれるようになった」楽曲について指標化したデータ(急上昇トレンド指標)を対象に新たなチャートモデルをつくり、将来のランキングを予測したところ、4か月後のランキングを高い精度で予測できました。

例えば、2020/7/20週のチャートデータを2020年3月に予測したところ、YOASOBI、ヨルシカ、Rin音、Novelbrightなどによる楽曲の順位上昇を予測が的中しています。

2020年7月20日週の急上昇トレンドランキング

2020年3月に予測したランキング実際のランキング
1位夜に駆けるYOASOBI1位裸の心あいみょん
2位ただ君に晴れヨルシカ2位夜に駆けるYOASOBI
3位花に亡霊ヨルシカ3位花に亡霊ヨルシカ
4位だから僕は音楽を辞めたヨルシカ4位snow jamRin音
5位snow jamRin音5位秒針を噛むずっと真夜中でいいのに。
6位Walking with youNovelbright6位ただ君に晴れヨルシカ
7位別の人の彼女になったよwacci7位欲望に満ちた青年団ONE OK ROCK
8位君の知らない物語supercell8位星影のエールGReeeeN
9位秒針を噛むずっと真夜中でいいのに。9位パラボラOfficial髭男dism
10位宿命Official髭男dism10位Walking with youNovelbright
11位ADAMASLiSA11位怪物さん feat.あいみょん平井堅
12位裸の心あいみょん12位別の人の彼女になったよwacci
13位ビンテージOfficial髭男dism13位115万キロのフィルムOfficial髭男dism
14位さよならの今日にあいみょん14位だから僕は音楽を辞めたヨルシカ
15位ハルノヒあいみょん15位Wherever you areONE OK ROCK
16位コーヒーとシロップOfficial髭男dism16位紅蓮華LiSA
17位空の青さを知る人よあいみょん17位TSUNAMIサザンオールスターズ
18位満月の夜ならあいみょん18位未完成家入レオ
19位マリーゴールドあいみょん19位君がくれた夏家入レオ
20位涙そうそう夏川りみ20位夏色ゆず

図:2020年7月20日週のランキング(予測と結果)

今年の冬は稲垣潤一「クリスマスキャロルの頃には」で決まり

この技術を用いて1990-2015に流行した冬ソングを分析し、2020年現在のトレンドに近い順番に並び替えると以下の表の通りになりました。
上位には切ない曲も明るい曲もランクインし、発売年もバラバラです。脳科学を用いると、思いもよらないトレンド曲が見つかることがわかります。
今年のクリスマスパーティは、最もトレンドを抑えた「クリスマスキャロルの頃には」で盛り上げてみてはいかがですか。

順位 曲名 歌手名 発売年
1位クリスマスキャロルの頃には稲垣潤一1992年
2位SEASONS浜崎あゆみ2000年
3位departuresglobe1996年
4位冬がはじまるよ槇原敬之1992年
5位寒い夜だから・・・TRF1994年
6位White Lovespeed1998年
7位ロマンスの神様広瀬香美1993年
8位スノーマジックファンタジーSEKAI NO OWARI2014年
9位Winter, againGLAY1999年
10位冬のうたkiroro1998年
11位レット・イット・ゴー~ありのままで~松たか子2013年
12位粉雪レミオロメン2006年
13位WISH2005年
14位WHITEBREATHT.M.Revolution1997年
15位All I Want for Christmas Is YouMariah Carey1994年
16位白い恋人達桑田佳祐2002年
17位EverythingMISIA2001年
18位クリスマス・イブ山下達郎1983年
19位雪の華中島美嘉2003年
20位Lovers AgainEXILE2007年

より多くの人に、新しい音楽との出会いを

自分がよく聞くジャンルや好きな歌手の曲ではなくても、ふとCMやコンビニで耳にして、「この曲いいな」と思うことがありますよね。世界が広がるような新しい出会い(セレンディピティ)を偶然に頼らず、脳科学を用いて必然的に生み出すこともできる楽曲分析。他にも、レコード会社に対しトレンド楽曲の特徴を踏まえたリリース曲の選定サポートをしたり、YouTubeなどの配信プラットフォームから新人発掘のサポートをしたりといった用途への展開も期待されています。

今後も、音楽との出会いを広げるために、音楽チャートと脳科学的な分析を組み合わせた研究開発を進め、精度向上とサービス提供を目指します。

関連ページ

脳科学とAIで音楽トレンドを可視化、ヒットソング予測に成功(https://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2020/090300/
脳情報通信技術から生まれた基盤技術 Neuro AI (https://nttdata-neuroai.com/

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