協調指向インタラクション
人が機械を効果的に活用していくために、その使い方は変化を続けており、より自然な振る舞いに合わせた利用方法が生み出されています。その結果、人と機械が協調しながら作業を行うといった新たな使い方も生まれ、それがITの持つメリットを最大限活用したサービスの革新を引き起こそうとしています。
例えば、手術支援ロボットの登場により、人が直接感じることができる立体的な視覚や触覚を医師へ伝えることができるようになりました。直感的な情報を人に直接提示することで、従来の内視鏡手術よりも簡便かつ患者の負担が少ない手術を可能にしています。
さらにAIを利用した行動認識技術により、機械が能動的に人をサポートすることが可能になってきています。レジなし店舗では来店した顧客の行動を継続的に認識することで、顧客は決済サービスを意識することなく商品を手に取るだけで買い物を行うことができます。機械やサービスの存在を意識させずに、実店舗での新たな購買体験が実現されているのです。
直感的な機械の利用による人の能力の最大化、機械による能動的なサポート、これら双方のメリットを組み合わせることで人と機械の新たな協調関係を作り出すことができます。人がただ運転するだけで、AIが車に危険回避動作をさせるように、人の柔軟な対応力と機械による正確で素早い判断の組み合わせにより、これまで以上に安全・安心といったメリットを享受することができます。この人と機械の協調関係の追求が、ITサービスにおけるユーザとの関係を新たな段階へと引き上げ、サービスの革新をもたらしていくでしょう。
知能を持つ物理接点の拡大
急速な拡大を続けるITサービスは、ソフトウェアが持つ特性により柔軟に素早く成長できる一方、ITサービスを下支えする物理的な作業を人手に頼る以上、その成長には限界があります。この成長の限界を超えるべくAIを活用したロボットの活躍が始まろうとしています。
ECサービスで注文した商品を顧客の手元まで物理的に届ける宅配ロボットは、AIによる精確な視覚を獲得できた結果、道路標識や信号に従い、人や周囲の障害物を避けながら、適切かつ安全に街中を移動することが可能になりました。
他にも、シミュレーションで集めた大量の動作データをAIに学習させ、ロボットに組み込むことで、これまで実現が難しかった人の手のような器用な動きを行わせることができるようにもなりました。この器用さの獲得は、例えば道具を使った緻密な組立作業を可能にし、さらなるロボットの活用シーンの拡大を実現するでしょう。
また、従来よりも低価格な部品を使うことで、動きの精度は低いですが、その分柔らかい関節を実現したロボットも登場しています。柔らかい素材で作られたロボットは周囲に対し安全であり、環境に合わせて形を変えることで、災害現場などこれまで利用が難しかった場所での活用が期待できます。
この柔らかさを持つロボットと、AIによる視覚や緻密な動きが組み合わされることで、複雑な作業をもこなせるロボットが、従来よりも低コストに実現できる世界が訪れるかもしれません。そしてこのようなロボットが、ITサービスと物理世界をつなぐ新たな接点として活躍の場を様々な分野に広げていけば、限界を超えたさらなる成長が現実のものになっていくでしょう。