世界の拡大
20世紀末から21世紀にかけて、テクノロジーは経済の成長エンジンの一翼を担い始めています。ITインフラは指数関数的に進化を続け、ソフトウェアにより複雑な機能が実現され、これらの進化がビジネスの急速な拡大を現実のものとしています。テクノロジーが持つ強力な進化力と成長力をビジネスに組み込んでいくことが、今後の経済発展には欠かせない推進力となっていくのです。
そして今、進化を続けるテクノロジーが社会に大きな変化をもたらし、我々が過去目にしてきた世界を拡大しようとしています。ビジネスはもはや国境を越え、地球上のあらゆる国・地域でのサービス提供を可能としました。また、テクノロジーは産業の垣根すら見えなくしています。スマートフォンやSNSの普及、IoTの実装、そして個人と個人、個人と企業をつなぐデジタルプラットフォームの登場がそれを後押ししています。さらにデジタライゼーションの波は、デジタルならではの顧客体験やビジネスモデルの開発など、既存マーケットや社会の価値観を変え、新たな市場を創造しています。
テクノロジーはさらなる世界の拡大、例えば、生命神秘の解明による人類の活動領域の拡大にも寄与しています。人工知能を用いてタンパク質の三次元構造を高精度に推定することによる新薬開発の高速化や、既存薬再開発における標的分子探索への人工知能の応用など、未知のウイルスへ対抗する中でもテクノロジーの力が援用されています。さらに今後、遺伝子、タンパク質、脳といった人体構成組織の解明が進むと、人が持つ物理的・生理的そして時間的な制約が撤廃され、健康増進や長寿命化による生産年齢人口の引き上げや、より深い長期的な記憶の実現など、人類の活動限界を超越していくかもしれません。このようにテクノロジーは、従来の世界に存在する様々な領域、境界、制約を越え、生活やビジネスの行う場や対象をさらに拡大していくための重要な成長エンジンになっていくでしょう。
世界が拡大していく過程として、世の中の神羅万象がデジタルデータ化されていく現在、人、自然などを含めた物理世界に存在するあらゆるものをデジタルで再現し、シミュレーションすることが可能になれば、今まで考え付かなかったレベルの意思決定ができるようになるかもしれません。テクノロジーの進化によるリアルな世界とデジタル世界との融合は、全く新しい世界を生み出していくでしょう。
そして、テクノロジーがもたらす様々な可能性を吟味し、社会やビジネスの発展に対してどのような手を打つことができるのか、それを地球規模の視点で考え、挑戦していくことが、持続可能な将来を築く経済成長の原動力になっていくでしょう。