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2020.7.13INSIGHT

新型コロナ NPO支援にみる社会貢献のかたち
~ソーシャル×テクノロジ人財がSDGs達成を加速する~

さまざまな社会課題に対し、きめの細かい支援をするNPO。その多くが少数の団体で運営されており、それぞれの運営基盤は必ずしも盤石とは言えない。コロナ禍はそんなNPOに対し、感染症対策や活動資金の調達など多くの問題を突きつけた。
「このままではNPOの存続が危ない」 NPO連携の中心的役割をはたす日本NPOセンターは複数のボランティアとともに、「新型コロナウイルスお役立ちサイト」を立ち上げた。
本稿では、プロジェクトに携わった2人のNTTデータ社員のかかわりと、これからの社会課題解決に向けたIT人財活用のヒントを掘り下げる。

1.支援するNPOに、届かない支援

―「NPO向け新型コロナウイルスお役立ちサイト」の目指すもの

コロナ禍によって多くの市民が多様な課題に直面する一方で、課題解決に向けて支援活動するNPOの一部も、存続の危機に立たされている。このようなNPOに対して、行政も様々な支援スキームを用意してはいるが、その存在すら認識していないNPOも多いという。そこで、NPOの基盤強化に向けて「新型コロナウイルス」NPO支援組織社会連帯(以下、CIS)の呼びかけ人でもある茨城NPOセンター・コモンズ 事務局長の大野氏が現場のNPOに役立つ助成金や感染症対策等の情報を知らせるサイトを作成した。そのサイトをプロトタイプとして、情報を整理し、活用しやすい形で開示するウェブサイトを構築するプロジェクトを始めた。NPOの現場から聞こえてくる現状に、一刻も早く助けになる情報を届けたかった-CIS情報提供チーム内でウェブプロジェクトを担当する日本NPOセンター三本氏は語る。今回のコロナ禍は全国規模であり、誰もが被害者たりえる点が特徴的だったが、プロトタイプを基に短期間でスピード感をもってリニューアルを完遂。今後、繰り返し起こりうる危機に備え、情報の集約や発信を誰でも簡単に行える基盤にすることを目指している。

ウェブサイトの構築とひとくちに言っても、必要なのはプログラミングのスキルだけではない。NPOのニーズを見極めて必要な情報を得やすい構成とすることや、今後の拡張性を考えて設計をすることなど、全体を見渡す視点も求められる。さらに、集まった参加者にはそれぞれのバックグランドがあり、直接会って話ができない環境のなかで、多様なスキルを持つ人々をまとめ、ひとつのプロジェクトとして前に進めていく力も重要だ。三本氏は、多くのプロジェクトを手掛けてきた豊富な経験に期待して、NTTデータに声を掛けたという。手を挙げたのは、IT企業社員としてさまざまな経験を積んでいるが、ウェブサイト構築は専門外の2人だった。

―動き出した、人と人とを「つなぐ」想い

増田:私は4年前から業務で岩手県宮古市の復興支援案件に携わり、地元の方々と密にコミュニケーションを取ることを大切にして仕事を進めてきました。自社と顧客だけでなく社会のためになる事業を生み出せるようになりたいと考え、個人的に地方都市のPRや行政改革支援などにも携わっています。社外の活動ではいつも新鮮な気づきを得ることができ、知見や人脈を社内にフィードバックすることで業務にプラスになる強い手ごたえを感じています。本プロジェクトにも同じイメージを持ち、参加を決めました。

丹羽:私はもともと一個人としての社会との関わりについて大きな関心を持っていました。社会との繋がりの中で、自分の強みをどう活かせるのか、それがどう評価されるのかを知りたいという思いがあり、参加を決めました。普段は新規ビジネスの企画担当であるため、技術面でのスキルが要求されそうなこのプロジェクトに不安がなかったわけではないですが、「やってみなきゃわからない」精神で飛び込んでみることにしました。

図:NPO(市民活動団体)のための新型コロナウイルス対応お役立ちサイト

図:NPO(市民活動団体)のための新型コロナウイルス対応お役立ちサイト(※)

2.チャレンジと苦労、得たものは

増田、丹羽はプロジェクトの中で、情報項目の設計と運用改善をメインにプロジェクトをリードした。三本氏は、増田はプロジェクトの根本の意義を理解して全体最適に尽力、丹羽は立ち上げ期から参画し、課題の整理において周囲を巻き込む形でリーダーシップを発揮するなど、期待通り、NTTデータで得たスキルを如何なく発揮してもらえた、と評価する。

2人の参画に対し、NTTデータでサステナビリティを担当する金田はこう語る。
「NTTデータは、本業であるITを通じた社会課題の解決を目指しています。社会課題に日々向き合うNPOとの協働経験を持った社員は、課題の背後にある具体的な事象や関係するステークホルダの存在を知ることで、社会課題解決のためのデザイン力と、どの部分でITが役立つかの目利き力を高めることができると考えています。将来の課題解決型事業の創出にも貢献するでしょう。」

本人たちにとっても普段とは異なるフィールドでのチャレンジ。そこには苦労もあったが、得たものも大きかったという。

増田:企業とNPOの行動様式の違いを感じました。NPOは目の前の多様な課題に対応する必要があるため、優先順位付けが難しい。参画したメンバも私同様ボランティアで、スキルもバックグラウンドも異なったのでまとめるのは大変でしたが、手探りでゴールを探す経験をすることができました。

今後、お客様自身もさまざまな社会課題解決を考えて事業に取り組む必要があるなかで、パートナーのNTTデータとして、様々なステークホルダを巻き込んでより良いものを作るお手伝いができると思っています。

今回2人が体験したようなプロジェクトの進め方は、一般的に「ソーシャルプロジェクトマネジメント」と呼ばれ、日本でも東日本大震災以降注目されているマネジメント手法である。今後の社会課題解決のためには、このような手法も身につけた、ITと社会課題を橋渡しする人財の育成が急務となっている。

NTTデータでは、2019年度より、日本NPOセンター、Code for Japan、ETIC.が進める「STO創出プロジェクト」を支援している。STOとは、Social Technology Officerの略称で、経営の観点からNPOに対してITの利活用をアドバイスする日本初の職業である。増田と丹羽はNTTデータ社内でもSTOの在り方に共感し行動に移した、先駆けともいえる社員だ。

丹羽は今回の経験をこう語る。
「現場の生の声を聞き、課題を肌で感じることで、人々に寄り添うことの大切さを痛感しました。NPOとの協働体験によって、自分自身の可能性を広げることができたと考えています。」

NTTデータは広くSTOの人財育成支援を通じて、ビジネス・イノベーションとソーシャル・イノベーションを同時に起こせるようなIT人財を創出し、社会課題の解決に貢献していく。

(※)NPOのための新型コロナウイルスお役立ちサイト

https://stopcovid19-for-npo.jp/

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