NTTデータのマーケティングDXメディア『デジマイズム』に掲載されていた記事から、新規事業やデジタルマーケティング、DXに携わるみなさまの課題解決のヒントになる情報を発信します。
前回の記事はこちら。
BDSの基本構造は「4+8+25=1」
BDSは「普通の会社員でもできる、新規サービス企画の第一歩」の基本コンセプト通り、みなさんが新たなサービスアイデアを考えた直後、まさに第一歩から始まります。考えたサービスアイデアは面白そうな気がする、でもそこからどうやって考えを深め、良いものかを判断し、人に説明すれば良いか分からない……。BDSは正にそういった場面で使っていただくものです。(そもそもサービスアイデアをどうやって考えるの?というご質問もたくさんいただきますが、その回答は別記事でさせてください。)
そんなお悩みに対して、BDSでは、考えを深めるための「4つの視点」、4つの視点を具体化した「8つの検討ポイント」、8つの検討ポイントをさらにブレイクダウンした「25のキークエスチョン」を提供しています。そして、それらの考えをひとつのビジネスプランとして統合し、良し悪しを判断するための「オリジナルピッチフォーマット」を用意しています。
ビジネスデザインスプリントの基本構造
実際には、キークエスチョンをより深く理解するための「Tips」や、BDSの効果的な使い方をまとめた「進め方編」もあるのですが、基本的な構造は非常にシンプルです。とは言え、基本構造だけを見てもピンとこないと思いますので、ひとつずつ説明していきたいと思います。
4つの視点=企画初期の問いかけの凝縮版
まずは「4つの視点」を見ていきたいと思います。これはBDS開発メンバーが今まで新規サービス企画の初期に問われてきたさまざまな問いを凝縮したものです。
- ウケるか
- 儲かるか
- できるか
- 勝てるか
「ウケるか」は、お客さま企業、そして利用するユーザ(消費者もしくは従業員)に受け入れてもらえるものになっているか、という視点(注1)です。どんなサービスも使っていただく相手がいなければ始まりません。なので、BDS開発チームでは、4つの視点の中で最も重要なものと位置付けています。
注1)BDSはBtoBtoXサービスを前提としたものなので、ユーザーだけでなく、提供先となるお客さま企業に対する目線も含まれています。
次に「儲かるか」。これは読んで字のごとく、自社がどれだけ儲けをあげられるのか、という視点です。ただ、この視点を強く持ちすぎると、短期的で広がりの無いサービスが生まれることが多いため、バランス感覚が重要になります。また、このサービスを通してお客さま企業がどれだけ儲かるか?という視点も含んでいます。
そして、「できるか」。BDSはデジタルサービスを前提としているので、「(先進的な)技術の実現性」を指すものと考えてください。実際に企画を進めると、法的な制約や事業リスクなど、さまざまな「できるか」問題が出てきますが、企画の初期段階はポジティブな部分の評価を重視し、「できるか」は最小限の評価とすることをおススメします。
最後に「勝てるか」。このサービスが世の中に受け入れられ、成功するためのカギは何か、という視点です。時間と共に変化し、かつ相対的なものなので、BDS開発チームとしてはこの視点が一番難しいと考えています。こちらも詳細は別記事でご説明します。
また、分かりやすさのために4つの視点は断定的な書き方「~るか」をしていますが、実際には企画の初期段階ですべてを明らかにすることはできません。したがって、この4つの視点は以下のように「~そうか」と読み替えていただければ、考えやすいと思います。
- ウケそうか
- 儲かりそうか
- できそうか
- 勝てそうか
この4つの視点は非常に強力で、BDS開発チームが新規サービス企画の相談に対応するとき、まずはどの視点が欠けているかをチェックするだけで、何を考えるべきかが見えてきます。ここで重要なのは、「4つの視点で考えきれていないアイデア」=「筋の悪いアイデア」では無い、ということです。BDSではこの4つの視点を粗くても良いのでクイックに考えてみて、そのアイデアの良し悪しを評価することをおススメしています。
8つの検討ポイント=4つの視点を掘り下げる要素
4つの視点が強力とは言え、それだけでは実際の検討活動には不十分です。そこで、4つの視点を掘り下げていくための要素として、「8つの検討ポイント」があります。ここでは概観のみをお伝えし、次回以降の記事で、検討ポイント毎にその詳細とキークエスチョン、そしてTipsをセットでご紹介していきます。
ビジネスデザインスプリントの8つの検討ポイント
8つの検討ポイントの概観は、上図のとおりです。図と繰り返しになりますが、簡単にご説明していきたいと思います。
1. 課題仮説
誰のどんな課題(期待)か?を明確にします。前述のとおり、BDSはBtoBtoXサービスを前提としているので、ここでは「企業」と「ユーザ」のそれぞれの課題を掘り下げます。また、その課題をすべて解決できた場合の金銭的な規模(≒市場規模)も明らかにします。
2. サービスモデル
課題をどういう仕組みで解決するか?を明確にします。提供するサービスの全体像、つまり、誰から誰へ何を提供し、それによって課題がどの程度解決できるのか、を明らかにすることが重要です。
3. ユーザエクスペリエンス
サービスを利用するユーザーの視点から見た、サービスの姿を明らかにします。ユーザーがサービスをどのように利用するのか、それによってどう変わるのか、そのメリットは明確か、ということを明らかにします。
4. ビジネスプロセス
サービスを導入・運営するために発生する新たな業務や、変更が必要となる業務を洗い出します。BtoBtoXサービスの場合、お客さま企業の既存業務への影響を考えておくことが重要です。影響ある業務について、それをサポートするサービスを提供するかどうかも、この検討ポイントにて考えます。
5. ビジネスモデル
いわゆるお金の流れの可視化です。誰からどのような費目でサービスの対価をいただくのか、その全体像を明らかにします。ビジネスモデルには、サービスモデルでは出てこないプレイヤーが出てくる可能性もあります。
6. システムモデル
サービスを実現するためのコア技術と、それを組み込んだシステム全体像を明らかにします。コア技術の実現可能性に加え、「4.ビジネスプロセス」と同様に、お客さま企業の既存システムへの影響を考えることが重要となります。
7. 独自の価値
前章で述べた4つの視点のうち「勝てるか」が該当します。つまり、このサービスが世の中に受け入れられ、成功するためのカギとは何かをこのポイントで明らかにします。課題解決力の大きさや、サービスの手に入れやすさ、実績や権威付けなど、多角的な検討が必要です。
8. ビジネススケール
自社にとってのビジネス規模を明らかにします。「1.課題仮説」では、課題すべてを解決できた場合の金銭的な規模でしたが、ここでは、自社が実現可能な範囲(相手や解決度合い)を踏まえて、どの程度のビジネス規模になるかを明らかにします。
8つの検討ポイントは1から順番に考える必要はありませんが、4つの視点でもお伝えした通り、粗くても良いのでクイックにすべてのポイントを網羅することをおススメしています。そうすることで筋の良さを見極め、自社として検討する価値があるかを評価できるようになります。
また、4つの視点と8つの検討ポイントの関係も整理しておきます。ここで見て頂きたいのは、視点と検討ポイントの対応関係だけでなく、デジタルサービスが「ビジネス」「サービス」「システム」の3つの階層で成り立っている、という点です。
ビジネスデザインスプリントの4つの視点と8つの検討ポイントの関係
3つの階層を意識して考えることで、各検討ポイントで考えるべきことがシンプルになるだけでなく、各検討ポイントの依存関係(こちらも別記事でご説明します)が分かりやすくなるので、ある検討ポイントを変更した場合の影響度合いが見えやすくなります。
ひとつのピッチに統合し、継続検討を判断する
最後に、8つの検討ポイント(とそれに紐づくキークエスチョン)の検討結果を、オリジナルピッチフォーマットとしてひとつに統合します。下図がそのオリジナルピッチフォーマットです。番号は、各検討ポイントに対応しています。
ビジネスデザインスプリントのオリジナルピッチフォーマット
ピッチフォーマットと言うワンストーリー(ひとつの文章)にすることによって、各検討ポイントが一貫性のあるビジネスプランになっているかを検証することができます。
こうして、みなさんのサービスアイデアは、ようやくビジネスプランとして評価できるようになりました。ただ、ここで評価・判断すべきことは、「このビジネスプランは実行すべきかどうか」ではなく、「このビジネスプランは継続検討する価値があるかどうか」です。かつ、その評価・判断は、企画者であるみなさん自身がまず行うことが重要です。
評価基準についての考え方も別記事でお届け予定ですが、簡単に言えば、みなさんが取り組んでいる「テーマ」と「目標」に合致しているかどうか、が基準となります。(言い換えれば、テーマと目標をあらかじめ決めておくことが、BDS着手前に重要です。)
まだ机上検討の段階に過ぎないビジネスプランではあるものの、内容に可能性を感じるようであれば、お客さま企業やユーザーへのヒアリングといった検証活動に進んでいく判断をします。反対に、継続検討の価値無しと判断するのであれば、ビジネスプランの再検討(検討ポイントをひとつ変更するだけで、ガラッと変わることもあります)や、異なるサービスアイデアで再びBDSを進めてみる、といったアクションに繋がります。
いずれにせよ、できるだけ短い期間でピッチフォーマットまで落とし込んで継続検討の価値を判断することにより、素早く筋の良さそうなアイデアをどんどん具体化してみる、というのが、BDSの基本的な使い方となります。
今回は、BDSの概観として、その基本構造と構成要素、そして基本的な使い方までを一気にお伝えしました。次回からは、検討ポイントの詳細を順番に解説していく予定です。次回もご期待ください!
ビジネスデザインスプリントの挑戦 ①めざすデジタルサービスと企業の”あるある”
https://www.nttdata.com/jp/ja/trends/data-insight/2020/082590