NTTデータのマーケティングDXメディア『デジマイズム』に掲載されていた記事から、新規事業やデジタルマーケティング、DXに携わるみなさまの課題解決のヒントになる情報を発信します。
内藤一章
株式会社NTTデータ ITサービスペイメント事業本部 SDDX事業部 マーケティングデザイン統括部 デジタルマーケティング担当 部長
大混乱だった2020年、それでも顧客体験価値が高い企業とは
今回の講演は、大混乱だった2020年の振り返りから始まりました。
「みなさまにとっての2020年はどのような年でしたでしょうか。生活そのものが大きく変わり、コミュニケーションのあり方から財・サービスの売り方までもが変質し、新しいやり方に順応していく必要があった年だったかと思います。」
「このように大きな環境変化があった中でも、普遍的に顧客体験価値が高いブランドや、大きく順位を伸ばしたブランドがありました。その両者には『ニューノーマルへの即応』と『生活者への寄り添い』に配慮したサービスという共通点がみられます。」と内藤さんは読み解きます。
さらに、この共通点をもう一段ブレイクダウンすると、顧客体験価値が高い企業の特徴が見えてくると、話は続きます。
「C Space Japanによると、顧客体験価値スコアの高い企業に共通する特徴は(後述の)5つあると言われています。また、「顧客体験価値スコア」と「生活者の購買意欲」には高い相関があるとの調査結果も出されています。」
● Relevance(私向けのものだと思える)
● Ease(私にとって意味がある)
● Openness(オープンで、正直である)
● Empathy(私の立場で考えてくれる)
● Emotional Rewards(いい気分にさせてくれる)
顧客体験価値スコアの高い企業に共通する5つの特徴
5つの特徴の共通項に目を向けると企業人は、新型コロナウイルスのような大きな変化に関わらず、常に生活者の気持ちに寄り添うことが、顧客体験価値を高める重要なポイントだと言えるでしょう。
企業人がこれから直面する抗えない4つの事実
一方、国内マーケットをマクロな観点から捉えた際に、内藤さんは今後向き合わなければならない事実が4つあると挙げました。
①日本は急速な人口減少前夜にある
1つめは、みなさまもご存知の日本の人口変化です。
「人口推計より、人口増加のピークは2004年に超え、2030年には1億1000万人にまで減少し、高齢化率は30%を超えてくると報告されています。そして2100年には明治末期と同人口になるとの予測からも、私たちは急速な人口減少の真っ只中に生きていることを再確認する必要があります。」
②世代交代 X世代→Y、Z、ポストZ世代が支える時代へ
2つめも、昨今よく語られているY世代・Z世代について。
「Y世代、Z世代は生まれながらにしてデジタルネイティブな生活を送っており、多様性や個性を重んじる傾向があります。デジタルに慣れ、情報を大量に摂取しているが故に『社会課題意識が高い』という世代がこれからの日本を支えていく時代になるということを忘れてはいけません。」
③超成熟社会
3つめは、1つめとも関連する超成熟社会について。超成熟社会とは、経済発展により世の中にモノやサービスが満たされ、自由で便利な生活はできるが、経済成長がピークに達している社会のことです。
「既に世の中には商材が溢れていて、どの商品も機能差がつきにくい状況になってきています。」
④パレートの法則
最後は、ビジネスやマーケティングで広く利用されるパレートの法則について。
「上位2割のお客さまの購買が売上の8割を占めるというパレートの法則を改めて考えた時に、『誰を』対象に、『何を』大事にするのか見えてくるのではないでしょうか。」
この4つの事実を踏まえ、「特に若い世代に対するマスマーケティングの効力が低下している中で、デジタルマーケティングを淡々と行うのではスパム化してしまう状況となってしまいます。このような観点からも私たちは『短期・獲得の狩猟型ではなく、長期・育成の農耕型へ、マーケティングという言葉の根底のマインドセットを変える必要がある』と考えています」と今後のマーケティングの大きな方向性の変化について説きました。
マーケティングという言葉のマインドセット
そして、「商品や企業を本当に愛してくれる人(ファン)と、企業として作りたい世界観を共に育んでいく感覚が大事」であり、「これからは企業(人)と生活者(人)が共生していくB with Cの時代になる」と今後の時代のありかたを示唆しました。
企業と生活者が共生する時代に大切な”3つの鍵”
では、企業と生活者が共生するB with Cの時代において、どのようにして良質な顧客体験を考えるべきでしょうか。その鍵は3つではないかと内藤さんは問いかけます。
①Customer Success(生活者の成功を追究し続ける)
1つめは、Customer Success。ここ数年、さまざまな企業が語ることの多くなったこの言葉について、「生活者にとっての本質的な願いを支援し、長期的な関係性を構築すること」であると内藤さんは説明します。
そして、私たちがCustomer Successに注目する理由を、「デジタル技術によって常時接続の時代が訪れた今だからこそ、
・つながり続ける技術(デバイス、ネットワーク、クラウド・・・)
・つながり続けることで生まれるデータ
・つながり続けたいと思えるサービス
これらが(下図のように)生活者との長期的な信頼関係と収益の獲得に結び付くと考えているから」と続けます。
信頼関係と収益の関係
つまり、デジタル技術による生活者の変化をふまえ、「生活者の成功を追究し続ける企業とモノを売ることをゴールにしている企業とが今後本格化に競争するにあたり、デジタル(常時接続)の時代には、お客さまの『Customer Success』を考え抜くことが企業存続の鍵になる」ことがひとつめの鍵となる理由です。
②Social Listening(生活者の今から未来を洞察する)
ソーシャルメディアの役割が、企業発信から生活者発信に年々変化する中、代表的なSNSであるTwitterについて、「何気なく発信される生活者の『いま』に耳を傾けてみると、『人が集まりそうな場所』『新しい食べ方』『流行りそうな遊び』など企業にとっては思いもつかないようなアイデアが広がっていることがわかります。」と内藤さんは例に挙げます。
続けて、企業と生活者の関係性について、「企業が『生活者の好みを理解すること』を最も難しい課題だとしている一方で、生活者は『ブランドにフィードバックする機会が欲しい』とのアンケート結果もあります。このことからも実は生活者はブランドとの対話を求めていることがわかるでしょう。」と言及します。
生活者はブランドとの対話を求めている
講演では、その具体例として、当社グループ会社のトライバルメディアハウスが江崎グリコさまと行った「ポッキー&プリッツの日」のTikTokプロモーションの紹介がありました。このプロモーションでは、「生活者にプロモーションを楽しんでもらう」をコンセプトにイベントを仕掛け、ユーザーから23,600件の動画が投稿されたとのこと。
「ポッキー&プリッツ日」事例
このように生活者の「いま」に耳を傾け、企業と生活者の両者でカルチャーを作っていくことが今後ますます重要になってくる、と内藤さんは主張します。
③機能的価値と情緒的価値の追求(模倣されない独自性の追求)
2020年6月に話題となったサザンオールスターズの特別ライブ2020をご存知でしょうか。このライブは無観客にも関わらず、総視聴者が推定50万人(横浜アリーナ収容人数の29倍)に達し、チケット収益も従来比3倍強だったとのこと。この興行結果が示唆するものは一体何でしょうか。
このライブ体験を例に挙げながら、内藤さんは「『きれいな映像がオンラインで視聴可能』というライブ配信のテクノロジーと、『オンラインでのチケット購入』というEコマースとしてのテクノロジーによる機能的価値だけでなく、『アーティストの届けたい想い』といった情緒的価値が組み合わさることで、リモートであっても人の琴線に触れる体験となったのではないか」と分析します。
興行結果が示唆するもの
また、「技術の真似は比較的簡単ですが、そこに思想や文化を伴ったものは簡単に真似できるものではないと改めて感じた体験だった」と続けました。
このような体験から、3つめの鍵は、以下2つのポイントに分かれるとのこと。
①「機能的価値」と「情緒的価値」の掛け合わせにより、独自の体験価値が創出される
②「自社の存在意義(思想・文化)に直結する体験」を中心にカスタマージャーニーを設計する必要がある
3つの鍵において重要なポイント
自社の存在意義に直結する顧客体験を創るには
最後に内藤さんは、重要な振り返りとして、生活者と企業が共生する時代の3つの鍵を改めて強調しました。
・Customer Success:生活者の成功を追究し続けるマインドが根底に必要である
・Social Listening:生活者の日常にこそサービス創出・改良のヒントが溢れている
・機能的価値×情緒的価値:模倣されない独自性の追求には2つの掛け合わせが重要である
3つの鍵
そして、「テクノロジーが人間に置き換わることはありません。どの世代であれ、共感を起こすのは、人と人の関係です。人と人の関係をより良きものにするためにテクノロジーを活用していくということを忘れてはならないのではないでしょうか」と講演を締めくくりました。
NTTデータでは、今回の講演の内容を根底に持ちながら、生活者との共創・共生を通じた事業発展を、その戦略策定からソリューション導入、活用まで、End-to-Endでサポートしています。ご相談ございましたら、ぜひこちらより、お気軽にお問合せください!
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