NTTデータのマーケティングDXメディア『デジマイズム』に掲載されていた記事から、新規事業やデジタルマーケティング、DXに携わるみなさまの課題解決のヒントになる情報を発信します。
インタビュイーの紹介
(写真左から、静 史恵さん、夏 エイチュウさん)
静 史恵
NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部SDDX事業部マーケティングデザイン統括部デジタルマーケティング担当
NTTデータ入社以来、アミューズメント領域における決済系システムの開発・維持/運用に従事。現在はTwitter全量データなどのソーシャルメディアのデータ分析を通した企業へのマーケティング支援業務に従事し、お客さま企業のデータ活用支援を推進している。
夏 エイチュウ
NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 SDDX事業部 マーケティングデザイン統括部 デジタルマーケティング担当
中国出身。2019年にNTTデータに入社して以来、Twitter全量データ活用に従事し、幅広い業種の企業をお客さまとし、マーケティング立案、分析やリスクモニタリングなどに携わっている。
需要予測の重要性とTwitterデータ活用の可能性
静さん:近年、ソーシャルメディアの発達によって消費者自身のメディア化が進み、それが他の消費者の意思決定に与える影響が大きくなってきています。中でもTwitterはリアルタイム性や拡散性が高いという特徴を持ち、消費者心理をタイムリーに把握可能なデータソースとして、消費者理解や市場理解のセンサーとして幅広く活用されています。
NTTデータは国内唯一のTwitter Official Data Partnerとしてこれまで多くのお客さま企業に対して、全量Twitterデータの特性を活かしたマーケティングのご支援に取り組んできました。
一方、消費者ニーズの多様化が進む昨今では、需要と供給が合致しないことで、機会損失の発生や過剰生産・過剰流通によるフードロスが大きな社会問題になっています。ビジネスにおいて「SDGs」や「サステナビリティ」といったキーワードが注目されていることからも、企業の社会的責任として需要を適切に予測する必要性が高まってきています。
こうした背景を踏まえ、NTTデータではTwitterデータの特性(消費者心理の把握)を活かした需要予測の可能性に着目し、これまで多数の実証プロジェクトを実施してきました。具体的には、お客さま企業が保有するPOSデータに加えて、ソーシャル上の発言(話題量や評価)を分析することで、店舗における発注や棚割りの最適化といった取り組みを行ってきました。
需要予測プロジェクトの例
Twitterデータ×DataRobotのデータパートナー、そのメリット・効果とは?
夏さん:このようにTwitterデータを用いた需要予測に取り組んでいたところ、エンタープライズAIプラットフォームのリーディングカンパニーであるDataRobot社よりデータパートナーに関するお声がけをいただきました。DataRobot社とは昨年度、新型コロナウイルスに関するデマ検知の検証プロジェクトでご一緒し、DataRobotにおいて非構造化データとしてのTwitterデータを扱う可能性と有効性を証明することができました。
静さん:そうですね、非常にありがたいお声がけをいただきました。実際にDataRobot社と議論を進めてみて、DataRobotを利用するお客さま企業においても、需要予測のニーズが非常に高いということを改めて認識しました。そのため、消費者理解のセンサーであるTwitterデータを活用して、DataRobotで高度なAI需要予測モデルを構築することができれば、より多くのお客さま企業に対してビジネス価値を提供することができると確信しました。こうしたやり取りを経て、今回データパートナー契約の締結に至りました。
夏さん:一般的にAIでモデルを構築する際、自社データに加えて、さまざまな外部環境データの活用が有効となるケースがあります。今回の「データパートナー」制度は、DataRobotをご利用中のお客さま企業向けに、ビジネス課題に即した外部データ(今回はTwitterデータ)を簡易に提供することが可能となるパートナーシップです。これによって、各企業ではより精度の高いAIモデルを構築することが可能となります。
ビジネススキーム概要
静さん:より具体的に説明すると、DataRobotを利用するお客さま企業には大きく3つのメリットがあります。
1つめは時間的なメリットです。DataRobotのプラットフォーム上からTwitterデータへアクセスすることが可能となるため、契約手続きが簡素化できます。さらに、データの移動時間も短縮できるため、データ調達のリードタイムを大幅に削減することができます。
2つめは金銭的なメリットです。PoCフェーズにおいては、Twitter集計データサンプルを一部無償にてご提供いたします。お客さま企業にとっては、サンプルデータを用いてモデルの精度が向上するかを検証いただいた上で、本格利用に向けた判断を行うことができるため、効率的な意思決定が可能となります。
3つめは技術的なメリットです。DataRobotが直接解釈できるように、前処理を施したTwitterデータ(注)を構造化データとしてご提供いたします。
注)Twitterデータは画像データや動画データと同様に非構造化データと呼ばれています。今回提供するデータは、AIに適切に認識させるために自然言語処理を施すことに加えて、無関係なデータ(BOTなど)を除外するクレンジング処理やデータ特性を踏まえた各種前処理を施したデータです。
ご提供データイメージ
夏さん:今回の「データパートナー」制度をフル活用いただいて、ぜひこれらのメリットを実感していただきたいですね。ちなみに、静さんから見た際に、3つのメリットの中でも最も価値があるものはどれだと考えますか?
静さん:やはり、3つめの技術的メリットだと思います。
今回は、需要予測用途に特化した形でTwitterデータから特徴量を抽出したデータをご提供するため、お客さま企業としては大きなコストを払わずに、即座に自社データと組み合わせてDataRobotで需要予測モデルを構築することが可能です。これは、当社がこれまでTwitterデータを活用した需要予測の分野で試行錯誤を繰り返してきたからこそ発揮できる価値だと感じています。
夏さん:今回での取り組みでは、私が提供データの技術検証を進めました。とある期間の清涼飲料水10商品について小売店での売上予測を時系列解析でモデリングしたところ、従来のモデリングと比較して、10商品中7商品の予測精度向上を確認できました。具体的には、Twitter上の話題量、関連ツイートの拡散度合などの特徴量が、商品の需要変動にインパクトを与えていることが分かり、これがモデルの精度向上にポジティブに働いていました。個々の商材の特性によって多少の差は生じるものの、Twitterデータが、需要予測(売上機会の損失防止や在庫過多による廃棄ロスの抑止など)の観点で、大きく貢献できることが期待できます。
商品需要だけでなく未来のトレンド予測まで、ソーシャルデータの新たな用途開発へ
夏さん:私としては今回の取り組みをきっかけに、これまでのノウハウを最大限活用して、DataRobot×Twitterデータ活用のご支援を加速させていきたいと考えています。静さんはいかがでしょうか?
静さん:今回の「データパートナー」制度では、自社商品の在庫最適化を目的とした需要予測に取り組んでいきますが、実は社内ではよりマクロな需要予測として、Twitter上の投稿から未来のトレンドを発見する試みにもチャレンジしています。これは端的に言うと、次のタピオカは何?といったテーマです。消費者トレンドの早期予測によって、商品開発やマーケティングの各種施策への応用まで、多数の側面からお客さま企業をご支援していきたいと考えています。
さらに、需要予測以外の用途としても、ターゲティングやレコメンデーションなど、AIにおけるソーシャルデータの新たな用途開発にもチャレンジしていきたいと考えています。