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2021.12.21技術トレンド/展望

「金融×DX」のアクセル、API連携によるモダナイゼーション

金融機関のDX推進に必要な、既存IT資産やレガシーシステムのモダナイゼーション。その実現をスムーズにするIntegration Platform as a Service(iPaaS)製品の一つにMuleSoftがある。MuleSoftのAPI連携によって「既存IT資産とクラウドサービスやあらゆるチャネルのデジタル領域の融合」が可能となり、金融機関はその中からデータの価値を見付け、マネジメントをする機能が求められている。DXを推進する金融の未来の姿を探る。
目次

着実に進むアプリケーションモダナイゼーションの流れ

マイナス金利や、他業種からの新規参入によるマーケットの激化など、金融業界を取り巻く環境は厳しさを増し、抜本的なコスト削減とともに、新たな収益機会を確保し競争の優位性を確立することが求められています。一方、金融業界は他業界に比べて既存の基幹システムにレガシーシステムが多く残っており、それらがデジタル・トランスフォーメーション(DX)の足かせになっていることはご承知おきのことと思います。

図1:レガシーシステムの存在状況

図1:レガシーシステムの存在状況

これまでのレガシーシステム脱却手段としては、既存レガシーシステムの全面刷新や、構造は変更せずオープンな技術へと移行するマイグレーションが一般的でした。しかし全面刷新はもちろんのこと、長年の利用で複雑化、ブラックボックス化しているレガシーシステムのマイグレーションは、技術面やコスト面においてハードルが高いものです。これらの課題を解決するために注目されている手法に、アプリケーションモダナイゼーションの中のリインターフェースという考え方があります。アプリケーションモダナイゼーションとは、守るべきIT資産と思い切って作り変えるIT資産を切り分け、優先度とコストを勘案して現実的な落とし所を目標に、段階的にDXのあゆみを進めていくことです。その中の手法の一つであるリインターフェースは、既存レガシーシステムとクラウドシステムを連携させることで、既存システムを温存させつつ、新たな顧客価値を創出することが可能となります。

これまでのIT投資を有効活用、iPaaSを用いたモダナイゼーション

図2:iPaaSとは

図2:iPaaSとは

リインターフェースという概念を実現する手段として今注目されている技術がiPaaSであり、その有力製品がMuleSoftです。MuleSoftは、企業が保有するアプリケーションとデータを既存IT資産‐デジタル領域間(オンプレミス‐クラウド間)で、APIをベースに接続・連携する統合プラットフォームです。
ガートナー社の「フルライフサイクルAPI管理についてのマジック・クアドラント」と「エンタープライズiPaaSについてのマジック・クアドラント」の2つのレポートで、MuleSoft社はリーダーの1社と評価されています。(※)

iPaaSを用いれば、簡単にモダナイゼーションが実現できるのでしょうか。もちろん非常に効率的にはなりますが、モダナイゼーション実現のためにはいくつか重要なポイントがあります。
例えば、既存レガシーシステムが連携するデジタル領域の外部サービスにはさまざまなルールや制約が伴います。モダナイゼーションを実現するには、高いセキュリティレベルに準拠した開発や運用のあり方を考慮し、全体アーキテクチャを描きながら着実にプロジェクトを推進させることが求められます。

またプロジェクト推進にあたっては、扱う開発ツールや技術の変化に対応して、どのように上流工程で品質を作り込むか、下流での品質検証や製品の定期バージョンアップへの対処をどうするかなど、システム構築の経験やナレッジが必要です。

さらに、システム開発現場のニーズについても考慮する必要があります。R&Dやシステム開発、コンサルティング・提案を行う人員のローテーションにより、最適なアセットを準備することでスムーズなMuleSoft導入によるモダナイゼーションの実現が可能となります。

これまでMuleSoftを導入したモダナイゼーションの事例では、1つの企業や部門に閉じた範囲でのトータルコスト削減や、システム間の同期ためのデータ連携を背景とした案件が主流でした。これは各業界、各ビジネスが縦(バーティカル)で完結していた世界と言えます。
今後、金融業界は激動の環境の変化に迅速に対応していくためにも、さまざまな業界とオープンな形でつながることで新たなビジネスを創り出すことが求められています。

「つながる」と「オープン」で実現する未来の金融機関

金融機関の状況を、IT投資の視点でもう少し深堀りしてみます。

昨今、他業態企業による金融サービスへの台頭が著しく、他業態企業による金融サービスの台頭があります。2021年の国内金融IT市場規模は前年比0.2%増の2兆2,760億円に対し、他業態企業におけるFinTech関連・エコシステムIT支出規模は同32.5%増の638億円となっています。
金融機関のIT投資予測では、地域金融機関は経営難でIT支出の抑制傾向が続き、大手金融機関は新たなビジネスモデルの構築において積極的なIT投資を行う方向が見られています。

図3:DXのポイント

図3:DXのポイント

では、金融機関のIT投資、DXのポイントは何でしょうか。NTTデータでは「つながる」と「オープン」の2つだと考えています。いかにして外部とつながりニーズに対応したサービスを提供していくか。この「つながり」は排他的なものではありません。「オープン」で多様な可能性を考えながら、テクノロジーを活用していくことが必要です。
テクノロジーは手段であり目的でもゴールでもありません。「つながり」と「オープン」を念頭に置き、さらにどのような姿を目指すべきなのかを明確にしなければなりません。

「つながり」と「オープン」が実現する具体例として、最近注目されているEmbedded Finance(組み込み型金融)があります。これは、金融以外のサービスを提供する事業者が、金融サービスをシームレスに組み込んで提供するサービスです。金融機関がエンドユーザーに直接サービス提供する直販から、間に事業会社を介在させることで金融機能を盛り込んだ多様なサービスがエンドユーザーにもたらされる、いわゆる間接モデルができる仕組みです。例えば店舗のアプリ内で決済ができ、プリペイド機能をもたせることも可能になることなど多彩な展開が見込め、今後さらに普及していくでしょう。
金融機関にとってEmbedded Financeのメリットは、金融機能を事業会社に提供することで新しいサービスが生み出せること、事業会社にとってのメリットは提供される金融機能により自社のサービスに付加価値をつけられることです。新しい金融サービスの主体は事業会社ですが、それを金融機関が背後から支えプロデュースする流れが出てくるでしょう。
金融機関はDXに加え、顧客である事業会社の顧客をより意識し、オープンイノベーションを通じてエンドユーザーへのアプローチを実践。金融をベースにした新規サービスの創出を提供することで、収益力強化を図ることができるようになると考えられます。

図4:収益力強化も視野に入れた新たな金融機関像

図4:収益力強化も視野に入れた新たな金融機関像

3つの「オープン」で新しい価値を創出

これらを実現させるためにNTTデータは「Open Service Architecture™」を提案しています。オープンにすべきはAPI、イノベーション、プラットフォームの3つです。
従前、APIは各社がそれぞれ開発していますが、個別対応であり、どこに何があるのか分かりにくい状況でした。そこでNTTデータだけではなく他社を含めたAPIマーケットプレイス「API gallery」を提供し、API利用者・提供者が効率的につながることができるようカタログ機能やコミュニティ機能を用意しています。

最終的にはさまざまなAPIとつなぎ、新規サービスの創出を促進する、金融エコシステムを目指していますが、さまざまなAPIとの連携部分で活用可能なプラットフォームとしてMuleSoftも含まれています。

NTTデータには、これまで培ってきた共同システム運営のナレッジを活用したAPIの共同利用型ユースケースの拡大や、オープンイノベーションを加速させる業際といった観点の取り組みといった実績があります。MuleSoftを活用することで、このような状況下における更なる打ち手としてより一層モダナイゼーションを加速させていこうと考えています。これにより、データドリブンに新しいビジネスやサービスの創出、業界のコラボレーションの契機や機運が生まれる社会を目指します。

今後は会社や業界の枠を超え、APIやその中を流れるデータがつながりあっていく社会になるでしょう。そのような社会の中で金融機関に求められるのは、行き交うデータの評価および目利き力、そしてデータマネジメントに関わる機能です。この機能は、お金を軸に金融機関が従来担ってきた役割にそのまま通ずる部分があります。その特性と強みを活かす形で、従来通りの金融機能を担いながら、異業種連携のビジネスをプロデュースできるのではないでしょうか。

NTTデータでは、信頼されるビジネスパートナーとして、お客様がめざす方向にしっかりと寄り添い、ビジネスの変革を支援していきます。

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