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2022.5.23事例

モダナイゼーションによる新しい価値とは?NTTデータの戦略と事例

DX推進の足かせとなりえる既存レガシーシステムを、価値を生み出す資産に変えるのがモダナイゼーションだ。モダナイゼーション成功のためには優先度をつけ、ビジネス戦略とIT戦略をつなげて考えることが大切だ。新旧さまざまなシステムをつなげることで新たな価値を生み出す手法に迫る。
目次

残り3年を切った「2025年の崖」

経済産業省は2018年に公表した「DXリポート」の中で「2025年の壁」というキーワードを用い、このままDXが進まなければ日本経済に12兆円の損失が発生するという警告を発しました。ところが経済産業省が実施した調査によると、43%の企業がDXに取り組んでいません。取り組んでいる企業でも51%は成果が出ていない、もしくは分からないと回答しています。

しかし今、コロナ禍により多くの企業はビジネスモデルの転換を迫られています。そこにアナログ的な業務の問題点や生き残りをかけたDXの必要性を認識し、結果として88%の企業がDX予算を増加させようとしています。
そこで注目されるのが、既存のレガシーシステムをデジタルで生まれ変わらせる「モダナイゼーション」と、それを推し進めるモダナイゼーション戦略です。71%の企業が、新規ビジネスを生み出すためにはレガシーシステムが足かせになると感じており、一般的に大きく3つの課題があります。(1)保守にかかる費用が高い、(2)価値あるデータを活用しにくい、(3)開発アジリティが低い、です。

では、レガシーシステムのモダナイゼーションを成功させるにはどのようなポイントがあるのか、詳しく見ていきます。

モダナイゼーションを阻む要因と次なるステップ

システムのモダナイズを阻む代表的な要因は3つあります。
1つ目はロードマップの欠如です。DXの攻め所が定まっておらず、体制や計画も決まっていない。とにかく何かを作ろう、と無計画にPoC(概念実証)を始めてそこで止まってしまうのがよくあるケースです。
2つ目はシステムのブラックボックス化です。長年動き続けているシステムの設計書が管理されておらず、システムの仕様を詳しく理解している技術者がいない。これは、システムのモダナイズのコストやリスクの見積りが非常に困難になります。
3つ目はシステムの肥大化です。長年、改修を重ねてきた巨大なシステムは、一度メスを入れると影響範囲が広範囲に及びます。一方で、システムの品質は現行の水準を維持することが求められるため、システム維持のコストが嵩み、計画から実行に移すまでのリードタイムが長期化してしまうのです。

これらの課題をクリアするには、優先度をつけて確実にモダナイズを進めることが必要です。そのための4つのステップを紹介します。
1)企業や組織、現行システムがそれぞれどの程度DXを前進することができる状態なのかを知るデジタルアセスメントの実施。企業の戦略部門や情シス部門に対しデジタルアセスメントを行って課題を明確化し、現行システムのアップデート計画を立てます。
2)技術の老朽化を最小限にとどめることを検討し、小さく実践することでトータルコストを削減。ここでは同時並行して新しいシステムの検討に入ることが大切です。新しいシステムへ予算をシフトさせ、データを利活用できる形でつないでいきます。
3)新旧のシステムを連携させるタイミングを決め、新しい価値を生み出すシステム開発に進み、さらにエンドユーザーへの間口を広げていきます。
4)システム全体の開発アジリティが向上する。

ビジネス戦略とIT戦略をつなぎながら進化する

次に、NTTデータが目指す、アプリケーションモダナイゼーション像の一例を紹介します。

まず、競争領域(攻めのIT)と非競争領域(守りのIT)を分け、全体のバランスを取りながらいかに刷新すべきかを考えます。従来の基幹系業務システムが大方当てはまる非競争領域の一部を最新技術で切り出し、残りは塩漬けにしておきます。上の図は、SoR(System of Record、情報の記録を主目的に構築される情報システム)のうち、一部を最新技術で切り出した例です。
そしてその他の競争領域となるデジタルシステム群やサービス群を、ビジネスニーズに合わせてスピーディーに構築していき、競争領域と非競争領域内の各システム群をそれぞれAPI連携で「つなぐ」ことで、データの利活用を推進。このような全体像に向けた、具体的なロードマップを描いていきます。

ここで大事になるのが、ビジネス戦略とIT戦略をそれぞれ独立した形でとらえないことです。特にIT部門主導でDXを進めようとすると構築するシステムに目を囚われがちになり、限りある資源をどの程度まで投入してよいか判断がしにくくなることが起こりがちです。関係者がビジネス戦略とIT戦略をしっかりと理解した上でシステムの現状を紐解き、競争領域では高速かつ作らない開発手法を取り入れ、非競争領域では作る部分の極小化をし、この2つの領域をつないでいく。こうすることで、中長期で作り続けながら進化するアプリケーションができあがっていきます。

新しい価値を生み出すため不可欠な「つなぐ」

DXを推進するキーワードは「つなぐ」です。新旧のさまざまなシステムをつなぎ合わせることで、従来の単独のシステムでは実現できなかった新しいビジネス価値を生み出すことができます。ここでは2つの事例を紹介します。

1つ目の事例である金融業界のお客さまの場合、グループ企業共通のデータ連携基盤を整備する要望がありました。そこでiPaaS(Integration Platform as a Service)と呼ばれる、システムやサービスをつなぐことを得意とするプラットフォームを活用。グループ企業各社や複数のテナントをつなぐインターフェースをひとつひとつ作る場合一般的には稼働とコストが嵩みますが、iPaaSの特徴であるAPI共通化と再利用により、コスト削減と開発速度向上を実現しました。

この案件でのポイントは3つあります。1つは、オンプレミス(自社運用)側に既存システムが乗っている状態でインターフェースを作り直す必要がありましたが、NTTデータが蓄積してきた既存システムに関するノウハウを活用しながら、クラウド側での新システム開発を並行して進めたことです。2つ目のポイントは、金融業界特有のセキュアな要件を満たせる運用ルールの整備も行ったことです。
3つ目のポイントは、オンプレミス側の従来領域を含めた全体のアーキテクチャーを、グループ企業の特徴を踏まえシステムを構築したことです。例えば通信分野での事例では、蓄積された顧客接点データを高度化し、よりインテリジェントにしながら柔軟に活用できるようにしたいという要望に対応しました。もともと巨大な一枚岩だった既存の基幹システムから、API化・疎結合化することで変化対応力や外部連携力を強化しました。注目したいのは、APIでつなぐことによってデータ連携を疎結合にし、一貫したユーザーエクスペリエンスを提供できるシステムに変えていった点です。基幹系システムのデータを安全に公開することで、システム外部パートナーやユーザーに近いフロント側のシステムが効果的かつ効率的に拡張できるように、基幹システムの省力化とスリム化、機能のオフロード化を実施。柔軟で安全なデータ活用を下支えしました。

IT投資効果の最大化に向け増える共同利用型

お客さまのなかでは、ITシステムをどのように調達や選定するのかが課題になることが多くありますが、今後はIT投資効果の最大化のため、業界他社と手を組み協調領域を作り、共同で利用できるようなプラットフォームが増えることが予想されます。これは今後のデジタル社会を考える上での基盤となるでしょう。NTTデータはiPaaSの統合プラットフォームと、金融業界向けに提供してきたANSERやMEJARなどの共同利用型サービスのナレッジを融合させ、共同プラットフォームを実現させていきます。

「2025年の崖」は、目の前に迫っています。モダナイゼーションでIT技術負債をビジネス価値に変え、ともにDXを実現しませんか?

本記事は、2022年1月27日、28日に開催されたNTT DATA Innovation Conference 2022での講演をもとに構成しています。

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