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2023.4.17技術トレンド/展望

組織のアジリティと意思統一を実現する目標管理手法
—SAFe®とOKRの活用—

大規模アジャイルSAFe®などを適用して組織のアジリティ向上図るためには、組織・チーム・個人などの間で、設定した目標とその達成状況の整合性・透明性を保つことが重要である。これを実現するための手法としてOKRを紹介する。

目次

組織のアジリティを高める大規模アジャイルフレームワーク「SAFe」とは

「Scaled Agile Framework®(SAFe®)」とは、ビジネスアジリティやレジリエンスなど、状況の変化が激しく、数カ月先の将来の予測も難しい現代において、企業や組織への適応力を高めるための大規模アジャイルフレームワークです。SAFeは現場のチームだけでなく、新たな製品やサービスを創出するビジネス層、組織の戦略や投資判断を担う経営層をも参加し、意思決定や方針転換を素早く行い、組織全体に速やかに伝えて実行に移すことで、組織の変化適応力を高めます。SAFeは3か月のサイクルに基づいており、3か月の最初に経営層・幹部やビジネス部門、開発チームが一堂に会する計画会議「PI Planning」を行い、組織の新たなビジョンや戦略を計画に落とし込みます。3か月間の期間中の成果はIteration(2~4週間の繰り返しの実施期間、スクラムにおけるスプリント)で各チームの成果物を統合したデモ(System Demo)により確認し、3か月間の終わりには「Inspect & Adapt」を行い、再度経営・ビジネス・開発メンバーが集まり、成果とプロセスの評価・振り返りを行います。

組織における目標管理の問題点

組織にアジャイルを適用した場合、特に規模の大きな組織で重要となるのが、それに適した目標管理の仕組みの整備です。
目標設定においては、部門やチーム、個人の目標が包括的な企業戦略から切り離されていたり、それらの関係性が明確に規定されていなかったりすると、部門やチームの個人が組織戦略にどのように貢献するのかを認識しづらくなります。また、管理職がチームの業務や課題を十分理解しないままトップダウンで目標を設定した場合、連携するべき関係者と整合性がとれていなかったり、非現実的な目標となっていたりすることもあります。このようにして目標を個人に割り当て、それに基づき成果を測定すると、個人は組織戦略の達成に貢献するための成果創出を意識せず、自己の目標をできるだけ簡単に達成するということに焦点を合わせてしまいがちです。

アジャイル組織に適した目標管理手法「OKR」とは

OKRとは、Objectives and Key Resultsの頭文字から名づけられた目標管理手法です。組織全体の目標管理を意識した手法であり、ビジネスの価値と目標を組織全体で包括的に整合させることに焦点を当てています。OKRでは、組織・部門・チーム・個人といった各階層の目標を、Objective(3-4カ月の期間内に達成する目標)とそれに対する3から5個のKey Result(目標達成を測定するための定量指標)で定義します。

また、各階層間のOKRを関連付け、定期的な確認と見直しを行うことで、目標の整合性や透明性を高めることができます。

OKRを導入することのメリットとしては、以下が挙げられます。

  • 経営・組織戦略と個人目標との整合性・関係性の理解促進
  • 定期的な確認と見直しによる市場の変化への適応
  • 組織間での依存関係の理解と連携の強化
  • 製品・サービス開発における目標の達成度合いの可視化
  • 社員のモチベーションやエンゲージメント(組織や仕事に対する貢献意欲)の向上

SAFeとOKRとの組み合わせ

SAFeは組織のビジネスアジリティを向上させるためのフレームワークですが、OKRと組み合わせることでよりその導入効果を高めることができます。SAFeが戦略を素早く「実行」に移すことができる組織の構築と運営に有効であるため、OKRを使って組織内での「戦略と目的の意思統一」を強化することができます。OKRのイベントは「反復的な検査と適応」を意図して設計されているため、SAFeとの類似性・親和性があります。
OKRでは、組織が変化する方向性を示した中期目標を定めたのちに、3か月周期でOKRサイクルを運用します。OKRサイクルは、測定可能な目標の設定を行うOKRプランニングから始まり、週次でのレビューを実施したのち、サイクルの最後に目標達成のレビュー、内レトロスペクティブを伴います。この点は、SAFeも同様に3か月間のサイクルを持ち、PI Planningから始まり、2~4週間のIterationの繰り返しを経て、Inspect & Adaptで終える点が類似しています。つまり、SAFeを運用している、もしくは導入を計画している組織においては、OKRのサイクルは導入しやすいものといえます。

OKRを運用するためのツール

OKRは組織的な目標管理を意図しているため、ツールによる支援を欠かすことはできません。NTTデータでは、アジャイルをより効果的に行うためのR&D活動を実施しており、その一環としてアジャイルの実践において活用するべきツール類の検証を行っています。ここでは、検証対象のひとつであり多様なツールとの連携に強みを持つ、Quantive社が提供するOKRツール「Quantive Results」(旧名称:gtmhub)をご紹介します。

Quantive Resultsは、OKRフレームワークをベースとしたビジネス管理と自動化のためのプラットフォームです。OKRツールとしての基本的な機能に加え、以下の特徴があります。

  • チームや個人の目標の関係性、目標の達成状況を分かりやすく表示
  • 10人程度のスタートアップから数万人規模の大企業まで対応
  • 170種類以上のシステムと連携可能

基本的な機能として、OKRを設定し、OKR同士をつなげて階層化させることができます。Key Resultについては達成条件と現在の達成状況が管理でき、関連する全てのKey Resultの状況を集計してObjectiveの進捗状況を確認することができます。また、組織やチームの達成状況を集計してレポートとして出力も可能です。

多彩なツールとの連携が可能であり、例えばチケット管理システムと連携することによって、OKRとチケット(アジャイル開発などにおいて「開発する機能」や「実施する作業」が書かれたもの)を関連付け、相互にトレースができるようになります。この場合、チケットに関連する戦略や目標をQuantive Results上で確認したり、Quantive Results上のOKRに関連するチケットの進行状況を確認したりすることができます。

さいごに

世の中の状況やニーズの変化のスピードが加速し、将来の不確実性・予測困難性が高まっていることは、多くの方が実感されていることかと思います。NTTデータは、お客さまの「ビジネスアジリティ」や「レジリエンス」を実現するため、アジャイルを基礎にSAFeやValue Stream Management、OKRなどの方討論とそれをサポートするツールを適切に組みあわせ、お客さまがこれらを活用し効果を最大化できるようサポートして参ります。

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