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2024.11.15業界トレンド/展望

金融機関のCX変革を実現するSalesforce活用戦略

金融機関向けITサービスで国内No.1のシェアを持つNTTデータ。これまで勘定系・決済系のSoR(Systems of Record)領域をビジネスの柱としてきたが、今後の戦略においては「CX変革」を掲げ、金融機関のデジタル化進展とテクノロジーの進化を背景に顧客接点領域でのビジネスも拡大している。特にCRM領域はグローバルNo.1のSalesforceに注力しており、4月に発表した株式会社テラスカイ(以下、テラスカイ)との資本業務提携もその戦略の一つだ。
NTTデータが考える金融機関向けSalesforce展開戦略とともに、テラスカイと進める地域金融機関向けのソリューション化について説明する。
目次

金融機関のSalesforce活用におけるポイント

・銀行システムにおけるCRMと既存システムの連携

銀行にとってCRMシステムは、銀行の勘定系システムに次ぐ重要かつ巨大なシステムであり、多岐にわたる既存システムとの連携が必要となってきます。
例えば、販売プロセスでは「ニーズ発掘」→「セールス活動」→「契約」とプロセスがブレイクダウンしていきます。その中でCRMシステムは最上流の「ニーズ発掘」にあたります。次のフェーズである「セールス活動」で既存システムと接続して使っていくことが必要です。
また、「営業店」で全行員が毎日使うなど、利用ユーザや利用シーンに関してもすそ野が広く、多数のシステムと連携する必要がある大きなシステムです。

・CRMに求められる連携先拡大

CRM機能強化の重要性

昨今、CRMシステムの連携先は拡大しています。
それは規制緩和に伴い、融資先に融資提案を行うもともとあったビジネスモデルに加えて、ビジネスマッチングや経営コンサルのような取引先事業者との幅広い業務が発生してきたことに起因しています。
さらに、地域のプラットフォーマーとして取引先事業者の先のエンドユーザにまでサービスを提供し、取引先事業者を成長させる役割も求められています。
このようにスコープが広がる中、その中核としてお客さま情報を集め管理するCRMはますます重要となっているのです。

Salesforceへの注目・期待

国内の金融システムの多くは、各金融機関の特色に寄せてきめ細かく作りこまれています。良い点とも言えますが、昨今のビジネス環境変化への追随性(機能追加のリードタイムやコスト)には課題があります。そこで、Salesforceへの注目度が高まっています。

・CRMシステム刷新に立ちはだかる課題

CRMシステムの効果を出していくには、ツールをどう選ぶかよりも営業戦略の合意が何より大事です。
CRMシステムの刷新は誰がやっても難事業であり、営業戦略の社内合意の他にも超えるべき山が存在します。プロジェクトの推進にあたっては、多岐にわたる部門の参画や、現行レベルまでシステムを踏襲すること、関連システムとのインターフェースやコストの問題などがあります。

・Fit to Standardの理想

図1:“Fit to Standard”の理想と現実解

Fit to Standardとは、業務内容に合わせてシステム開発や機能変更をするのではなく、システムの標準機能に合わせて業務を変えることです。SalesforceをはじめベンダーはFit to Standardを理想として、グローバルのベストプラクティスに業務を寄せていくことを考えます。理想的ではありますが、実際は綺麗ごとでは終わらない側面もあります。
今からCRMを新規導入するケースは多くありません。それを考えると、現行の優れたシステムでできていたことを再現、超えるシステムを作ろうと多くの方が思うはずです。
Fit to Standardの理想である「カスタマイズを極力をおさえることで高い保守性、コスト抑制、Salesforceの進化への追随が可能」に対して、現行システムが作りこまれている場合、ネイティブSalesforceの機能では表現の限界やガバナー制約といった壁が立ちはだかってきます。
また、「全社員が一元化されたデータを共有することで、情報の利活用が促進され顧客体験の高度化が実現される」という理想の中で、現実では投資費用や多岐にわたるシステム連携の壁があります。
これらの課題を解決する特効薬はありませんが、重要なのは、理想は理想としつつ、意見を調整しながらゴールを見据え合意して進めていくことです。基本となる柱を共有しながら、「標準実装とカスタマイズ比率の可視化」「周辺ソリューションの取込・連携」「金融機関向け基本機能の部品提供」「主要既存システムとの連携実績」を活かして支援させていただくことがNTTデータの価値だと考えています。

NTTデータの金融機関に対する実績

NTTデータは、金融分野での取り組みを50年来続けてきました。基幹システムを長年預かってきた実績があり、「お客さまとの強固な信頼関係」を築いています。その中で、大きな特徴である「金融業界の大規模インフラシステムを提供」するとともに、堅牢で大きなシステムを扱うほか、デジタル化の対応やメインフレームの脱却のためのオープン化の取り組みを行っています。
国内の金融分野のITベンダーではトップクラスの位置付にあり、国内勘定系システムでは圧倒的なシェアを確保しています。

図2:NTTデータの国内勘定系システムシェア

NTTデータとテラスカイが協業パートナーとして果たす役割

・協業で強化されるソリューションやノウハウ

CRMシステムの刷新には、カスタマイズの範囲を見定め可視化するノウハウや、ネイティブで不足しているソリューションを補うといった作業が必要です。さらに、機能面の他にもユーザの使いやすい操作性を補うにはテラスカイの提供する「SkyVisualEditor」「mitoco」「mitoco X」や、SaaS特有のセキュリティ対策としてNTTデータが提供する「A-gate」といった情報漏洩対策に適したソリューションを組み合わせていくことがポイントです。
また、NTTデータでは金融機関のCRMで必要な検索機能や移管処理などを部品で提供しています。例えば、預金残高で1000万円以上の方を抽出するというシーンでは、Salesforceのネイティブな機能だけで抽出するのは困難であるため、それを補う機能を部品提供する実績を持っています。

・優秀なSalesforce技術者人材

NTTデータとテラスカイは、Salesforceの特長を生かした開発手法であるプロトタイピング中心の開発スタイルを得意しています。両社にはSalesforceの技術者が多数在籍しており、NTTデータグループとテラスカイグループを合わせると国内トップの技術者数になります。金融業界で導入実績の高いグループ会社との連携や金融機関で長年培ってきた知見によって、Salesforce導入において両社のシナジーが発揮できると考えています。
Salesforceの導入完了は終わりではなくスタートです。サービス開始してからの定着化がうまくいかないという話をよく耳にします。導入プロジェクトでは高いスキルを持つエンジニアが招集されますが、プロジェクトを成功させると解散していきます。導入後にサポートに残された体制はどうでしょうか。私たちは、導入後も一定の体制の維持は必要と考えています。サービス開始後から進化していくところがSalesforceの真価であると考えるNTTデータでは、ビジネス成果の創出までのサポートも含めた伴走支援を行っています。

まとめ

NTTデータでは、お客さまの『成果』の実現に向けて、特に顧客接点の改革(CX変革)が重要と捉え、テラスカイとの協業を進めています。対面・非対面における顧客接点の設計は重要な領域です。
金融機関を取り巻くビジネス環境が大きく変化する中、CRMの役割にも変化が迫られており、グローバルスタンダードであるSalesforceへの期待は大きくなっています。その一方で、Salesforceを導入すればすべてが解決するというわけではなく、CRMシステム刷新はいずれの金融機関にとっても難事業であり、ツールはその解決策の一部でしかありません。そこで、インテグレーションパートナーが持つ技術力、実績、アセット、動員力が成功のカギとなります。NTTデータとテラスカイが協力していくことで、CRM刷新プロジェクト、ひいてはお客さまの営業改革の成功のお役に立てると確信しています。

※本記事は、2024年10月3日に開催されたTerraSkyDay2024および、2024年10月17日に開催されたFIT2024(金融国際情報技術展)での講演をもとに構成しています。

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