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2024.12.12業界トレンド/展望

アクワイアリングの新常識!?アクワイアラのコスト構造を激変させる共同プラットフォーム

活性化するキャッシュレス決済市場は、サービス提供事業者の競争を激化させている。飲食店や小売店をはじめとする決済システムを利用する加盟店と、決済システムを提供する国際ブランドの間を取り次ぐカード会社「アクワイアラ」は収益性が下がるなか、何を課題とし、どのように変化してビジネス拡大をめざすべきなのか。NTTデータ ペイメント事業本部 カード&ペイメント事業部でアクワイアリング共同プラットフォームの企画営業を担う山田浩史と、プロダクトの責任者である深澤宏充がアクワイアリング事業の改善策を提言する。
目次

アクワイアリングとは?

アクワイアリングとは、クレジットカードをはじめとするキャッシュレス決済の取引を金融機関が受け入れ、売上代金が消費者から加盟店に届けられるまでの一連の処理を意味します。飲食店や小売店などの加盟店がキャッシュレス決済を導入するにあたり、VISAやMastercardといった国際ブランドを利用しなければいけません。その際、加盟店は国際ブランドと直接契約を結ぶのではなく、国際ブランドとライセンス契約しているアクワイアラと契約することで決済システムを利用することができるようになります。アクワイアラは、決済システムを利用する加盟店の新規開拓や審査、管理をする金融機関です。

アクワイアラとイシュア、キャッシュレス決済のしくみ

キャッシュレス決済の流れのなかには、加盟店との契約・管理を行うアクワイアラに対して、消費者へクレジットカードを発行するカード会社「イシュア」が存在します。
それぞれの役割を具体的な流れでみていきましょう。

まず、アクワイアラは加盟店から売り上げデータを受け取り、イシュアへ連携します。イシュアは売上代金を消費者から受け取り、アクワイアラへ入金。そしてアクワイアラから加盟店へと入金され、売上代金が消費者からお店へと届けられるのが基本的なしくみです。

図:キャッシュレス決済の基本的なしくみ

その他にも、不正使用が疑われる際の調査や返金、国際ブランドとの精算、加盟店の申し込み審査など、多岐にわたる業務がアクワイアリングと呼ばれています。

アクワイアラに今求められること

政府が2025年までの目標としていたキャッシュレス決済比率が、2023年の時点でほぼ達成されるなど、キャッシュレスの市場は急速に伸びています。また、クレジットカード、電子マネー、コード決済など券種も多様化するなか、アクワイアラは加盟店の販売スタイルに合わせた決済方法を提供していくことが求められていると、山田は今の状況を語ります。

日本におけるキャッシュレス決済比率とクレジット取扱高の実績と予測

「例えば、ファッション関係など店舗とECの両方を抱える加盟店では、店舗とECの決済システムが別々であることが多いですが、これを統合すればECで買ったアイテムを店舗で返品するといった対応が可能になり、在庫管理も統合することができます。今後は生体認証など新たな決済手法の研究開発も進んでいきます。アクワイアラは、より便利で摩擦のない顧客体験を提供したいという加盟店からのニーズに応えていくことが求められていきます」(山田)

一方で、ブランドのレギュレーション変更や法改正への対応も継続的に求められ、アクワイアラには複雑化するシステムへの投資が重くのしかかっています。さらに、ECの増加に伴ってクレジットカード番号の偽装被害が増加。セキュリティーや不正対策のコストも増え続けているのが現状です。

アクワイアラのビジネス拡大における課題

このような事業環境にあるアクワイアラがビジネス拡大していく上で、乗り越えるべき課題はどこにあるのでしょうか。山田はアクワイアラの立場を、次のように解説します。

「アクワイアリング事業にとって一番の課題は、業務自体がコモディティ化し、利益が出にくい構造となっていることです。また決済端末、中継ネットワーク、アクワイアリング業務を垂直統合型で提供する企業も現れるなど、競合も多様化し、競争が激化しています。さらに、加盟店とアクワイアラの間で決済データを扱う決済代行会社(Payment Service Provider)も台頭したことで、これまでアクワイアラにあった加盟店との接点がシフトし、市場価値が相対的に下がってきています。キャッシュレス市場自体は拡大していても、アクワイアリング事業はこのような市場環境において手数料の単価と料率が下がり、収益性が低下しているのです」(山田)

アクワイアリングの事業環境と課題(弊社仮説)

競争が激化し、収益性が下がるアクワイアリング事業にはさらに、リスク対策という課題もあると、深澤は続けます。

「ブランドレギュレーションは、違反するとペナルティーが請求されます。複雑化するシステムでオペレーションミスを起こすと、情報漏えいにつながって社会的な批判にさらされることもあります。もちろん、システムが止まってしまえば加盟店での決済ができなくなり、大きなニュースになるでしょう。さらに、コロナ禍など急に世の中の需要が落ち込んだとしても、システムや人件費といった固定費はかかり続けるなど、アクワイアリングは実に多くのリスクをはらむ事業と言えるでしょう」(深澤)

これからのアクワイアリング事業に必要なこと

このような厳しい環境のなかで、アクワイアラは今どのような変化が求められるのでしょうか。深澤は次のように提言します。

「加盟店はアクワイアリング事業者を選ぶ際、手数料で判断することが多いため、まずはコモディティ化しているアクワイアリングサービスを効率化し、固定費を削減することで価格的な競争優位性を築いていくべきです。そして経営資源を、他社よりも優位性をもって付加価値を生み出す領域へと集中させることが、これからの大きな方向性になるでしょう。もちろん、アクワイアリング事業だけではなく、それを生かした新規事業を生み出していくこともその一つです。アクワイアラには金融機関であるという強みがありますから、例えばレンディング(貸し付け、融資)やファクタリング(債券買い取り)といった金融系のサービスによって加盟店の経営の安定化に貢献するといった付加価値も提供していくことができるはずです」(深澤)

NTTデータが提供するアクワイアリング共同プラットフォーム

NTTデータでは、2025年4月から「アクワイアリング共同プラットフォームサービス」の提供を開始すると発表。サービスの内容について山田は次のように解説します。

「簡単に言うと、加盟店管理や返金対応などのコモディティ化したアクワイアリング業務を丸ごと引き受けることでアクワイアラのコスト削減を実現し、収益を生む加盟店営業やマーケティング活動、サービス開発などに注力させやすくするサービスです。アクワイアリング業務のアウトソーシングによって、アクワイアラはブランドレギュレーションや法改正などに合わせたシステムのアップデート対応に追われることなく、最新の市場動向をキャッチアップし、加盟店にいつでも最先端のサービスを提供できるようになります」(山田)

加盟店からの新しい利用申し込みを確認し、管理する。実際に決済サービスが利用された時には、加盟店から売り上げデータを受け取ってイシュアと連携し、取引金額を加盟店へ入金する。不正使用があったときの調査、返金に向けたイシュアのやりとりなど、多岐にわたるアクワイアリング業務。「アクワイアリング共同プラットフォーム」は審査がグレーな際の意思決定など一部を除き、その業務の大半をカバーすることによって、アクワイアラを上位レイヤーの業務に集中させることができます。その価値について、山田は次のように強調します。

「アクワイアラの方とお話をしていると、例えば加盟店からの申し込みも紙で受け取って人手で一つ一つ確認したり、取引のピーク時には人の手配に苦労したりと、システム化まで至っていない会社さんが多いです。また人手で対応しているからこそ、加盟店ごとの個別対応が生まれたり、システム化している会社でも構造が複雑であるために効率化が進みにくくなったりしているのが現状です。私たちのサービスは、このようなアクワイアリング業務全体を請け負うことで、事業の体制や業務フローを根本的にデザインし直すBPR(Business Process Re-engineering)を実現することがコンセプトになっています」(山田)

NTTデータだからこそ実現できるサービス

カード会社のアクワイアリングシステムを提供するサービスは、「アクワイアリング共同プラットフォーム」の他にもあります。しかし、NTTデータの「アクワイアリング共同プラットフォーム」は、システムをパッケージとして提供するだけでなく、業務運用までを丸ごと引き受ける点が他社サービスとの決定的な違いであると、山田は語ります。

「まず、アクワイアラが業務運用を担ったままでは、アクワイアリング業務に携わる人員は残さなくてはいけなくなります。また、既存の業務運用に合わせたシステム構築がどうしても必要になるため、完全に効率化したアクワイアリング業務に切り替えることが難しくなります。NTTデータはアクワイアラではありませんが、多数のアクワイアラのお客さまのシステムを構築してきた経験によって、アクワイアリングの根本的な変革を阻む業務の運用までを担えるノウハウが蓄積されてきたのです」(山田)

このようなアクワイアリング業務のノウハウに加え、「共同プラットフォーム」というサービス形態においてもこれまで多くの領域で実績を重ねてきたNTTデータ。一元化を前提としたプラットフォームサービスであっても、「個社別の対応」を要求されるケースも少なくありませんでした。どこまでを共通のサービスとし、どこから個社別のサービスとするか、設計のポイントをつかむ感覚にも、NTTデータ独自の経験値が生かされていると言います。

アクワイアリングの効率化を日本の経済活性化につなげたい

2025年4月のローンチを予定する「アクワイアリング共同プラットフォーム」。山田はお客さまへの提案を続けるなかで、大手をはじめとする多くのアクワイアラが業務運用の限界を感じていることが見えてきたと語ります。さらに、サービス提供がはじまった先に実現したい世界観について、深澤は次のように続けます。

「私たちがサービス提供させていただく相手はアクワイアラになりますが、その先には加盟店がいます。その多くは小売業や飲食業ですが、例えば明日からキャッシュレス決済を導入して購買体験を改善させたいという機動的な経営をめざす加盟店に対して、1カ月かかるという回答は時代に合っていません。私たちはアクワイアラにプラットフォームを提供することで、多くの加盟店が最先端の決済サービスを消費者に提供する後押しをしていきたい。そして、アクワイアラ各社にとってはアクワイアリングの負担から解放され、先進的なサービス開発に注力するためのベースとなり、最終的には消費者の購買体験を向上させることで、日本の経済活性化に貢献できればと思っています」(深澤)

アクワイアリング共同プラットフォームに関する報道発表はこちら:
https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2024/060700/

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