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アジャイルにおける「継続的な改善」の重要性
企業を取り巻く環境が急速に変化するなか市場における優位性を獲得するためには、顧客ニーズを反映したプロダクトを迅速かつ継続的に市場投入することが重要です。そのために、組織運営にアジャイルを取り入れる企業が増えています。しかし、そこには多くの問題があります。例えばあなたの組織は、顧客が求めるものを高頻度にリリースできているでしょうか。顧客が何を求めているかについて、組織内で認識合わせできているでしょうか。アジャイル導入前より確実に良くなったと断言できるでしょうか。
アジャイル導入による効果を最大化するためには、組織の成熟度を定期的に評価し、課題を特定して素早く改善することが重要です。アジャイルソフトウェア開発宣言の背後にある原則(※1)においても、アジャイル組織における定期的な振り返りと改善の重要性についての記述があります。また、大規模組織でアジャイルを推進するためのフレームワークであるScaled Agile Framework®(SAFe)(※2)においても、4つのコアバリューのうちのひとつとして「たゆまぬ改善」が定義されており、継続的な改善の組織文化を構築する重要性について記載されています。
従来型のソフトウェア開発とは異なる手法を実践していた17名の軽量ソフトウェア開発者が、開発へのアプローチについて議論し、2001年に公開。
Scaled Agile, Inc社が提供する「大規模アジャイル開発」のためのフレームワーク。
「継続的な改善」におけるよくある困りごと
ScrumやSAFe®といったアジャイルのフレームワークでは、定期的な振り返りと改善のためのイベントが設計されています。例えばScrumでは、スプリントの最後に実施する「スプリントレトロスペクティブ」がそれに該当します。しかし、フレームワークに則ってイベントを実施したとしても、メンバー一人ひとりのなんとなくの印象に基づく問題点の洗い出しに終始してしまっては、組織の課題を正しく把握できない可能性があります。振り返りイベントを真に意味あるものにするためには、現状把握のためのファクトを収集したうえで客観的な評価を行うことが重要です。しかし、アジャイル推進担当は以下のような課題に直面する傾向があります。
- アジャイル導入がうまくいっているかどうか判断できない
- 成熟度評価のためのヒアリングやアンケートの準備や実施、分析などに時間がかかる
- パフォーマンス改善のためにどのような手を打てばよいかわからない
困りごとの解決アプローチ
こうした課題に対して、NTT DATAでは組織の成熟度評価とアジャイルコーチによる改善支援を提供しています。
図1:継続的な改善における課題と解決のアプローチ
具体的な評価と改善の流れは以下の通りです。
Step1:ヒアリングを行い、アセスメントを準備する
一言にアジャイル導入といっても、「リリースの頻度を増やしたい」や「組織の文化を変革したい」など、その目的は様々です。まずはアジャイルコーチが組織のビジョンや現状の課題感についてヒアリングを行い、改善の方向性について認識合わせを行います。その結果をもとに、進め方や具体的なアセスメントの内容を決定します。
Step2:アセスメントを実施し、組織を評価する
改善の方向性が決まったら、実際に組織を評価していきます。アセスメントは事前に用意された質問項目に対して回答する形で行いますが、より正確な情報を把握するため、メンバー自身に回答してもらいます。匿名での回答とすることでネガティブな意見も書きやすくなります。
Step3:組織の課題を分析する
続いて、アセスメント結果を分析して組織の課題を特定します。分析はアジャイルコーチによるファシリテートのもと、組織全員での振り返りセッションによって行います。その際にアセスメントの結果を分析したレポートを参照することで、ファクトベースの議論ができます。
Step4:改善策を立案し実行する
最後に、特定した課題を改善するための対策を立案し実行します。改善策を決めるのは組織のメンバー自身ですが、アジャイルコーチによる提案も行います。決定した改善策はバックログなどに追加しておき、実施時期や責任者を明確にしておくことで、確実に実施されるようになります。また、改善策の実施後に再度アセスメントを行うことで、改善効果を確認することも重要です。
アセスメントと改善の効果を最大化するAgilityInsights®
上記のようなサービスを提供するうえで、NTT DATAではAgilityInsights社が提供するアセスメントプラットフォームであるAgilityInsights®を活用しています。
図2:AgilityInsights®の特徴
AgilityInsights®には組織全体の成熟度やロールごとのパフォーマンスなどを評価する様々なアセスメントのほか、結果の分析機能や改善策を見つけられるポータルサイトなどが用意されています。これを利用することでより効率的で効果的な改善を実施できます。
事例紹介
海外の金融サービス企業にAgilityInsights®を導入し、成熟度評価と改善を実施した事例をご紹介します。
目指す姿・抱える課題
お客さまはビジネスアジリティ向上を目的としてアジャイルプラクティスに投資をしていましたが、大きな成果を得られていないという課題を抱えていました。また組織の状態が不明瞭で、課題がどこにあるのかわからないという状況でした。
アセスメントの実施アプローチ
まずは組織の状態を可視化し課題を特定するため、約90チームに対してTeamHealth®というアセスメントを実施しました。その結果、合計で約900の課題を特定することができました。これらの課題に対策を打ったうえで、四半期ごとにアセスメントを継続して実施し、現状の評価と改善を繰り返しました。
見つかった課題の例
- 長期的なロードマップ、プロセス、バックログが不明瞭
- 不十分なバックログリファインメント
- 組織の戦略とチーム目標の不整合
- 上位層の説明責任の欠如
得られた成果
上記の取り組みの結果、以下の成果が得られました。
- プロセスの改善により600万$のコスト削減につながり、かつ月間の納品数が267%増加した
- 組織全体のアジャイル成熟度の可視化により、投資対象の決定ができた
- 新たなプラクティスの導入による品質や顧客満足度の向上に貢献した
さいごに
アジャイルにおける改善の重要性と難しさは多くの方々が実感されていることでしょう。NTT DATAでは、お客さまのアジャイル導入を成功させるため、今回ご紹介したアセスメントおよび改善支援のほか、チームの立ち上げ支援やSAFe®導入支援など様々な形でサポートして参ります。
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