ここ最近、米国のBeyond MeatやImpossible Foodsなど、代替肉関連企業の躍進がメディアを賑わせています。日本においても、大塚食品が肉不使用ハンバーグを発売、日清食品ホールディングスは東京大学と共同で世界初のサイコロステーキ状のウシ筋組織の作成に成功し、一部の飲食店でも肉不使用のベジタリアンバーガーを提供開始するなど、メディア等でにわかに脚光を浴び始めています。このような食にまつわる新たな取り組みは代替肉だけではありません。巨大な工場で野菜を栽培する垂直農業や、3Dプリンターによる調理、食の安全性を担保するブロックチェーンなど、以下(図1)のようなフードテックの取り組みに、スタートアップ企業だけでなくネスレ、ユニリーバ、カーギルなどの食品・飲料製造業のグローバルジャイアントもこぞって参入しています。長らく変わることのなかった食が、フードテックによって大きく変わりゆく時代の転換点に、まさに今、私たちは立っているのです。
図1:フードテックの取り組みに関するキーワード
フードテックの盛り上がりの背景
フードテックへの投資額は2014年頃から増え始め、2018年は約170億ドルにまで到達しています(※2)。
図2:フードテック投資額推移
このようなフードテックの盛り上がりは、世界人口爆発や地球温暖化等による食料危機、フードロス、廃プラスチック問題などといった地球規模の社会課題に対する関心が高まってきていることが背景にあります。また、これらの社会課題に対し地球や我々人間社会の持続性そのものが危ぶまれており、2015年9月の国連サミットでの「持続可能な開発目標(SDGs)」採択以降、先進国/新興国関わらず民間企業の戦略の中枢にSDGsが置かれてきていることも、フードテックの取り組みを加速させています。
さらに、我々の消費意識が変わり、食の価値観が多様化してきていることも大きく影響しています。従来とは異なる思想をもつ「ジェネレーションZ」世代の存在、アニマルウェルフェア(※3)に対する意識の高まりなどによるエシカル消費(※4)の拡大、肥満や糖尿病などの生活習慣病患者の増加による健康意識の高まりなどです。
Key Food Tech Trends
先に触れた代替肉は現在、間違いなくフードテックの領域におけるKey Trendの1つであると言えるでしょう。代替肉ビジネスは海外では大きく「アニマルテック」という呼ばれ方もされ始めていますが、そのアニマルテックのもう1つのトピックは、畜産へのAI・IoT活用となっています。
畜産へのAI・IoT活用に関しては、穀物メジャー・畜産会社として有名な米国Cargill社が2019 年2 月から3月を目途に、牛の個体認識・追跡に関するデジタル技術活用の商用展開の加速を公表しており、先進的な取り組みをしている会社の1つとなっています。中国においては大手EC企業であるアリババ集団やJD.comらが、企業連携・産学連携を中心に畜産へのデジタル活用を進めています。日本においては、畜産従事者の負担軽減等が社会的課題となっており、農林水産省も「農産新技術の現場実装推進プログラム」を公表して畜産のデジタル化を加速させようとしています(※5)。
私たちNTTデータもニッポンハムグループ様と共同で、畜産現場に根差した持続可能な仕組みづくりを目指し、AI・IoTを活用して飼育員と豚の双方にとって幸せな環境をつくる「スマート養豚プロジェクト」を開始しました。現在ニッポンハムグループ様の養豚事業会社であるインターファーム様の農場へIoT技術を導入し、AI技術開発を進めています(図3)。
図3:スマート養豚プロジェクトの概要
おわりに
※1「Space Food X」 宇宙と地球の食の課題解決を目指す共創プログラム
※2AgFunder AgriFood Tech Investing Report – 2018
https://agfunder.com/research/agrifood-tech-investing-report-2018/
※3家畜の誕生から死を迎えるまでに期間に、ストレスを可能な限り最小限に抑えて健康的な生活ができる飼育方法を目指す畜産のあり方。
※4人や社会、地球環境、地域に配慮した製品やサービスを自発的に選択して消費すること。
※5「農業新技術の現場実装推進プログラム」の公表について(農林水産省)