NTTデータのマーケティングDXメディア『デジマイズム』に掲載されていた記事から、新規事業やデジタルマーケティング、DXに携わるみなさまの課題解決のヒントになる情報を発信します。
山本 潤
NTTデータ SDDX事業部 マーケティングデザイン統括部 デジタルマーケティング担当
メディア業界を中心に小~大規模のシステム開発、維持、運用に従事。2018年からBtoC向けシステム・サービスの開発、運用に従事後、2019年からデジタルマーケティング領域に参画。
Salesforce認定 Marketing Cloud アドミニストレータ/メールスペシャリスト
西澤 茂隆
NTTデータ デジタルビジネスソリューション事業部 CRM統括部
通信事業者向けマーケティングシステム、大手小売業者電子マネーシステム、電力業界における社会インフラシステムなど、業種業態を問わず幅広い大規模システムの開発プロジェクトに参画。近年は製造業や小売業などのCRMシステム導入プロジェクトに、PM/コンサルタントとして参画。
Salesforce認定 Marketing Cloud メールスペシャリスト、Pardot スペシャリスト
三宅 聡史
NTTデータ デジタルビジネスソリューション事業部 CRM統括部 Salesforce担当
2014年からデジタルマーケティング/マーケティングオートメーションのスペシャリストとして従事し、BtoC, BtoB向けマーケティングオートメーション活用のための豊富なノウハウを保有。
Salesforce認定 Marketing Cloud コンサルタント/デベロッパー、Pardot コンサルタント
内舘 町子
ネットイヤーグループ株式会社 デジタルビジネスデザイン事業部 マーケティングクラウドチーム
外資IT企業複数社にて経歴を重ね、2016年よりネットイヤーグループに参画。製薬、自動車、エネルギー、銀行、アパレル、百貨店などでのSalesforce Marketing Cloud の案件において、主にPM、ディレクター、コンサルタントの役割を担う。
Salesforce認定 Marketing Cloud コンサルタント
良い顧客体験とは?その実現に足りないものとは?
― いまお客さまが企業に求めているサービスや体験はどのようなものだと思いますか。
三宅さん:あらゆるモノやサービスがあふれ横並びになっている昨今、お客さまが求めているのは、そのサービスでないと得られない「体験」だと考えます。便利で使いやすいという物理的な満足感だけではなく、精神的な満足感があることが必要です。
例えば、YouTubeやSpotifyといったサービスは使いやすいことはもちろんですが、精度が高くパーソナライズされたおすすめの動画がどんどん表示されますよね。そのため、使っているだけで楽しくなってくる、という精神的な満足感が高いサービスだと感じます。
内館さん:私はこれまでアパレルの企業と多く仕事をしてきましたが、ECと店舗で同じ商品を並べてもECだと購入されないという話はよく耳にしてきました。その大きな理由は、カリスマ店員の存在です。
実店舗に来たお客さまは、店員との会話や商品のおすすめによって気持ち良くなるという体験を通じ、購入に至っていました。一方、ECでは店員とのコミュニケーションという精神的な体験が切り取られてしまったのです。販促のチャネルや販売の手段はさまざまにありますが、実店舗での気持ち良い体験を代替する体験を、お客さまは求めていると感じています。
三宅さん:お客さまがサービスに「楽な体験」を求める傾向も以前より強くなったのではないでしょうか。こだわりを持って自ら商品を探すのではなく、システムに商品を選んでもらうことに好意的な人が増えている印象です。お客さまが受動的になってきた現在では、商品の存在をしかるべきお客さまにレコメンドしていく重要性が増してきました。
山本さん:企業がお客さまに何をレコメンドするかということ自体が企業の一つの価値になっているように思います。YouTubeやSpotifyでも、自分自身最初はレコメンドに対して懐疑的だったように思いますが、繰り返し利用していくにつれて徐々に信頼度が高まっていきました。
一方で自分がひとりの消費者として普段買い物をする中では、多くの企業からのレコメンドに対していまだ懐疑的な気持ちがぬぐえていません。この違いは何でしょうか。
内館さん:やはり問題は、企業がお客さまを十分に理解しきれていないことだと思います。お客さまの感じていること、欲しいもの、好きなものといったデータを集め理解を進めることがないままコミュニケーションを取っていると、好意的な感情や信頼を獲得しようとしているのに、皮肉にも全く逆のコミュニケーションになってしまうことがあります。
西澤さん:確かに、昨今のデジタル先進企業は、総じてお客さまを深く理解している印象ですね。よくある課題としては、顧客データを数多く持っていたとしても、各組織に散り散りになっていることにより、一貫性のないコミュニケーションをしている企業も多くあります。これらを一つに統合し、企業として相対するお客さま像を鮮明にしていく必要があると感じます。
お客さまを“全方位的”にカバーする顧客体験に必要なこと
―企業の課題であるお客さま理解にどのように取り組んでいけばよいのでしょうか。
山本さん:NTTデータが共感しているのが、セールスフォース・ドットコム社が推進しているCustomer 360という考えです。Customer 360は、お客さまを中心とした一連の体験を全方位的にカバーしていこうという思想であり、NTTDデータもこの世界観をめざしてセールスフォース・ドットコム社とともに取り組んでいます。
全方位的にカスタマージャーニーに関わっていくということは、企業内のさまざまな部門・システムが連携していく必要があるということです。最近ではデジタルトランスフォーメーション(DX)という文脈で部門横断の取り組みが増えていますが、推進にあたってつまずくポイントを私たちも一緒になって解決していきたいと思っています。
三宅さん:先ほどの話のとおり、お客さまのさまざまなデータは、ほとんどの場合別々のシステムに分散しています。例えばそうしたデータを基幹システムに集約すると言っても、大掛かりな取り組みとなってしまうため、自前でできる会社はごくわずかです。さらに、全社的なDXとなるとデジタルマーケティング以外の知見も必要になってきます。
山本さん:NTTデータは元々システムインテグレーションを大きな強みとしているので、基幹系システムに関するノウハウが豊富です。加えて、顧客管理の領域に限らず、さまざまな部門の方とビジネスを進めてきた経験から、企業のさまざまな部門を巻き込んで総合的に実行していくことが可能です。
西澤さん:組織間に縦割りの文化が未だ色濃く残っている企業もまだまだ多く、こうした状況下では、組織間での連携やデータの統合は一筋縄でいかないケースも多々あります。それらを打開するには、「経営層がゴールと方向性を示し現場の理解を得ること」、「現場で少しずつ取り組みを開始し、小さな変革の成功体験を積み重ねて伝播させいくこと」の、トップダウンとボトムアップ両面からの取り組みが必要です。
SalesforceをはじめとするSaaS製品は、最小限のカスタマイズでスピーディに導入可能ですぐに利用できるので、ひとつの組織から小さく試してみる「ボトムアップ」のアプローチに適しています。小さな成功事例を積み重ねていくうちに、変革に付き物である社内の抵抗勢力の理解が進んでいくことは多く、実際にこうした方法での成功事例も増えてきています。
内館さん:顧客体験・カスタマーサクセスといった領域は変化のスピードが著しく速いことも特徴です。ゼロからプラットフォームを作っていると、出来上がったころには世の中が求めているものが全く違うものになっている可能性も十分にあり得ます。最低限のインテグレーションでプラットフォームが構築でき、かつ小さく試せるSalesforce製品はこのスピード感にもマッチしています。
西澤さん:Salesforce製品はファミリー製品間での連携がしやすいというメリットもあります。デジタルマーケティングだけではなく、営業やアフターサービスなども含めた顧客接点をカバーしたい場合に、シームレスでリアルタイムかつインタラクティブな顧客体験をスピーディに提供できるプラットフォームになっています。もともと、一貫性のある顧客体験の思想を軸としてCRM領域を全方位的にカバーする製品ラインナップを提供しているため、こうしたメリットが生まれていると言えます。
本当に重要なのはカスタマーサクセスを通じた企業価値の向上
内館さん:多くのITベンダーは製品の導入部分に力を入れて話してしまいがちですが、企業にとって本当に肝心なのは、それを運用することで実際どのような価値が出せたのか、だと思います。企業の価値とは売上や規模拡大はもちろんのこと、モノやサービスの差別化要素が少なくなった昨今においては、顧客体験の価値向上も非常に重要です。
どのようなお客さまが何をどのように購入してくれたのかを理解することによって、物理的にも精神的にもさらに心地よい体験を提供することができます。このような「カスタマーサクセス」の実現を通じて、企業価値を高めることが、真に私たちが取り組んでいくべきことだと思っています。
山本さん:企業価値の向上という考え方に基づいて、NTTデータとネットイヤーグループでは、お客さまにどのような体験をしていただきたいかを企業と一緒に検討し、その方針に沿って運用を伴走する、カスタマーサクセス業務支援も行っています。
「カスタマーサクセス」という言葉を概念に終わらせず、企業にとってどういった状態となることかを定量・定性両面から明らかにし、その実現に必要なマーケティング施策の立案から実行、評価、改善までをサポートしています。
内館さん:言うまでもなく、こうしたマーケティング施策の推進にはデジタル化が当たり前です。つまり、企業価値を高める質の高い運用を行う上で、そのベースとなるシステムが安全確実に動くことは当然求められます。カスタマーサクセス業務の立ち上げ・運用から、それを支えるシステムの導入・活用まで、取り組まなければならないことは多岐に亘ります。
これまで業務設計からシステム運用までを幅広く取り組んできたNTTデータの強みと、顧客体験のデザインや実現に強みを持つネットイヤーグループの強みによって、こうした多岐に亘る課題にワンストップでお応えできるものと考えます。
西澤さん:加えて、Customer360を掲げ、より良い顧客体験の実現に投資を集中してきたセールスフォース・ドットコム社とのアライアンスによって、企業価値向上に一層貢献できるものと考えています。セールスフォース・ドットコム社 は CRMのみに注力しているだけあって、投資の規模も大きく、製品機能の充実、進化においてリードしています。これは製品選定時の判断基準としても、重要なポイントになるのではないでしょうか。
―良い顧客体験とは何か、そしてその体験を全方位でカバーするために必要となる多岐に亘る課題にどう取り組むべきか、さまざまなヒントがあったのではと思います。本日はありがとうございました。
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