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2021.4.16INSIGHT

データドリブンカンパニーへの進化論とデジタルサクセス®
‐テクノロジーはどうビジネス価値に転換するのか?‐

AI・データ活用テクノロジーへの注目は高まっているが、それを導入するだけでは、成果に結びつかないと誰しもが気づいている。どのように“テクノロジー”から“ビジネス価値”への転換がなされていくのか?個別の成功事例が着実に出てきているなか、真の“データドリブンカンパニー”に向けた進化のステップを解説する。

コロナ禍がもたらした意外なデジタルの使い道

AI・データ活用の成功事例が増えてきて、その可能性に気付いた企業は、自らの組織・構造をリオーガナイズ(再編)する試みを推進している。こうした動きは、新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)の感染拡大によって明らかに加速している。たとえば、非対面の仕組みが求められるようになったことで、データドリブン型の営業やマーケティングを構築する動きが活発化している。

さらに「AIとBIの併用」という新しい使い方も始まった。あくまでも過去のデータに基づいてモデルをつくるのがAIで、コロナ禍のように状況が激変する中では、十分に機能しないことがある。そこで、BIによるデータ可視化を並行することにより、人間の洞察を上手く活かそうという流れが起きている。

データドリブン企業へと進化するための3ステップ

デジタルテクノロジーによってビジネス価値をもたらし続ける「データドリブン企業」への変革は、どのような道をたどるのだろうか?その過程は大きく下記の3つのステップに分かれる。

ステップ1:プロジェクト単位での実施
ステップ2:全社レベルでの推進
ステップ3:AI・データ活用の民主化を実現

ステップ1では「アフターサービス部門で部品故障の予測モデルをスクラッチで作ってみる」「マーケティング部門で優良顧客のスコアリングモデルを構築するにあたり、ツールを使ってトライする」など、各事業部門で、プロジェクト的にデータ活用を実施する段階となる。この段階では、「データが集まらなかったり不揃いだったりで、なかなか精度の良いモデルが作れない」「なんとかモデルを作ったが定常的な運用が大変」といった課題がよく生じる。

こうした課題を乗り越えて各部門での取り組みを全社レベルまで昇華できるのがステップ2だ。デジタルの専門組織(デジタルCoE)などを立ち上げ、データ活用を全社で推進していく。ここでは「各部門から相談がきて、すべての対応ができない」「実現可能性や効果・有効性に基づく優先度付けが大変」といった悩みをよく聞く。こういった課題に対処するために、業務運用できるデータマネジメントの基盤をつくり、データやシステムのサイロ化を解消するという流れになる。

データマネジメントの仕組みを専門組織だけでなく現場に解放し、自律的に業務に活かしていける段階がステップ3となる。ここまで来れば、テクノロジーの導入だけでなく、IT人財の育成や組織の構築、文化の醸成などが有機的に機能し、AI・データ活用の民主化が実現していく。

こうした、テクノロジーがビジネス価値として根ざしていく流れを「デジタルサクセス®」とNTTデータは呼んでいる。3つのステップを着実に進んでいくためには、テクノロジーだけを見ていてもうまくいかない。最近はAIというアナリティクスの技術ばかりが着目されているが、しっかりとビジネスに落とし込むためには、ROI(Return On Investment)が出るような適用業務を選び、どういった時間軸で進めていくのかという経営の視点が不可欠となる。また、社内外のデータを活用するためには、データを整備し、サイロ化を防ぐ必要がある。さらに、こうしたデジタル変革を牽引する人財・組織をどうつくるのか、考えていかねばならない。

AI・データ活用のテクノロジーはどのように進化しているのか

続いて、ビジネス価値に繋がるテクノロジーの進化について触れていこう。データ活用のテクノロジーは、大きく2つに分かれる。1つは「データ収集」、もう1つは「データ分析(BI・AI)」だ。

レポーティングから発展してきたBIの技術は、“Augmented Analytics”という形に進化してきている。対話型の検索で、ほしい情報にリーチでき、「このデータはこう読み解くといいのでは?」と示唆してくれるようになっている。

AIの領域においては「自動化」が急激に進んでおり、かつてはデータサイエンティストがモデルをスクラッチで作っていたが、モデルの作成や精度維持を自動で行ってくれるシステムが登場している。

一方、データを収集する基盤はどうだろうか。オンプレミス環境下で使うDWH(Data Ware House)のテクノロジーが出発点だったが、現在は、“Elastic(伸縮性)”という特性を備えたものになっている。必要なリソースを必要なときにだけ提供してくれるクラウド基盤が注目されているのだ。

DXのテクノロジーには、“Elastic”に加えて、やりながら修正できる″Agile(即時性)”がフィットする。たとえば、AIの「DataRobot」やデータウェアハウスの「Snowflake」などのように、ElasticとAgileの2つを備えたテクノロジーがマーケットでも特にシェアを伸ばしている。

ビジネス価値を創出するためのポイント

AI・データ活用によってできることは、大きく分けて2つある。それは「予測」と「最適化」だ。ビジネスとは、何かを“予測”し、何かを“最適化”し効率化する業務の固まりといっていいのではないだろうか。こういった事情により、実際、すべての業界のバリューチェーンにおいて、AI・データ活用による優れた事例が生まれている。

ただし、データ活用の成果が出やすい領域と、時間がかかる領域がある。いち早く成功体験を得るためには、成果が出やすい領域を見極めることが重要だ。たとえば「需要予測」は、AIの方が経験と勘よりも強い領域となる。マーケティングの高度化や顧客の離脱防止、在庫の最適化によるロスの低減によって、実際に、年間数億円規模の価値創出が達成されている。

デジタルテクノロジーの導入効果をどう測るのか?という疑問を持つ方がいるかもしれないが、現在、「バリューエンジニアリング」という手法が発展してきている。これは「テクノロジーを導入した結果、ビジネスにどんな価値をもたらすのか」を、さまざまなエビデンスを分析することによって明らかにする手法だ。Snowflakeのようなテック企業がバリューエンジニアリングの専門部隊を設置して施策として推進したり、市場調査会社のForresterが「TEI(Total Economic Impact)調査レポート」として無料公開したりと、確実に浸透しつつある。

価値創出をドライブする組織・人財のありかた

デジタルテクノロジーを活用し、会社全体で継続的な価値を出していくためには、局所的な取り組みだけでは難しく、各部署が有機的に連携していく必要がある。

アプローチの方向性としては、まずデジタルCoE(Cernter of Excellence)を体制化し、現場の相談役として、いずれ現場が自走できるよう伴走していく流れがふさわしいだろう。ポイントは「小さくても成果をしっかり出していく」ことと、「人財育成のサイクルも同時に回していく」ことだ。

そして、意外に思われるかも知れないが、もっとも重要なことは、関係者の「成功したいという意思」である。それを浸透させていくには、たとえば、ユーザー会の運営は、メンバーのマインドを変革するのに役立つ。コミュニティでの交流は、単にナレッジを共有するだけでなく、そこに文化を醸成していく。素地のある人財が、そのコミュニティの中で見つかるかもしれない。

研修やOJTを通じて、いかにデジタル人財を育てていくのか。ROIが見込めるユースケースをどうやって選定するのか。ニーズに対して、柔軟に対応できるテクノロジーを目利きするコツは何か。デジタルCoEに求められることは多いが、NTTデータは「デジタルサクセス®プログラム」によって、データ活用の推進を支援していく。

本記事は、2021年1月28日、29日に開催されたNTT DATA Innovation Conference 2021での講演をもとに構成しています。

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