社内基幹系システムのクラウドリフト
Project GAIAが立ち上がった2019年4月の時点では、コロナ禍で人の移動が制限される現在の状況は、まったく想像していませんでした。どちらかというと、世界はより小さくなり、人の移動はより活性化し、移動中でもオフィスと変わらぬ仕事環境を、社員に提供することを指向していました。これらを実現するための技術キーワードの一つは「ゼロトラスト」です。システムのグランドデザインを考え始めたとき、まず基本のコンセプトとしてあげたのは、「いつでもどこでもどんなデバイスでも(Anywhere, Anytime, AnyDevice)」でした。
これを実現するためには、ネットワークインフラの整備も必要ですが、そもそも社内基幹系システムが社内ネットワークの中にあり続けることが、自由に仕事をすることの障壁になってきます。社内基幹系システムを、社外からでも自由に、しかも安全に利用できるよう、クラウドリフトするということを基本方針としました。
その後、Projct GAIAは、2020年4月に、システム要件定義に着手します。同時に、コロナ禍で、日本は大混乱に巻き込まれている状況にありました。テレワークでの仕事を余儀なくされる状態は、日本全体に広がっていました。この状況はまったく想定していなかったのですが、Anywhere, Anytime, AnyDeviceのコンセプトは(もともとは活発な人の移動を想定していたのですが)、コロナ禍でのテレワーク推進に必要なシステム要件であることがわかり、よりプロジェクトの重要性が増したといえます。社内からの期待値が日に日に上がっている状況を実感しています。
機能の結合度を低くする
現行のNTTデータの社内基幹系システムは、Inforgridと名付けられ、稼働し始めたのは2006年です。Project GAIAが立ち上がった2019年時点で、すでに13年も使い続けている状況でした。当然、システムの設計思想や、アーキテクチャが古いこともあり、機能追加開発において、非常に生産性が低い状態にありました。
「インフラの基本コンセプトは、クラウドリフトだ。さて、アプリケーションの基本コンセプトはどうしよう?」となると、まず真っ先に浮かんだのは、機能追加開発の生産性の低さでした。この原因は明白です。
- 機能の独立性が低いこと(=結合度が高い)
機能の独立性が低いことの要因の一つに、共通処理の構築があります。10年以上の長期間、システムを使い続けている間に、共通処理に手を入れることが何度もありました。いつの間にか、共通処理が肥大化し、共通処理に手を入れた場合、どこまで影響があるのかを見極めることが困難になってきました。そのため、共通処理に手が入ると、その共通処理を使っている機能全体にデグレードの影響がないかの確認試験をするようになってしまいました。これが生産性を下げている原因の一つです。この機能追加開発の生産性の低さをなんとかしなければいけない。これがアプリケーションレイヤの大きな課題の一つに決まりました。
ServiceNowをLowCode開発のプラットフォームとして活用
もともとNTTデータでは、お客さま向けにITSM(※1)の領域で、ServiceNowを積極的に活用していました。
GAIAの立ち上げ時に、このServiceNowが、aPaaS(※2)としての力量を持っていることに気づき、調査を始めました。ワークフローに強いことは明白です。クラウド前提であることも、我々のコンセプトに合致しています。機能の独立性を担保するための仕組みも、しっかりと備えています。もちろん、スクラッチ開発とは異なる開発プロセスを作り上げなければいけませんが、スクラッチで構築するより、開発量を圧倒的に減らす可能性を持っているLowCode開発は魅力的です。
ITサービスを安定して提供するためのマネジメント活動ならびにITサービスの更なる品質向上や,コストの削減を目的に継続的改善を行う活動
アプリケーションを設計、開発、デプロイ、管理する為の環境を提供するクラウドサービス。サービスサイトと統合開発環境がワンストップで提供され、アプリケーション開発に集中できるメリットがある。
デジタルテクノロジを使うことの必然
Project GAIAでは、さまざまなデジタルテクノロジの活用を検討しています。前述のクラウドリフトしかり、LowCode開発しかりです。
社内システムへのデジタル技術の全面的適用を目指して立ち上がったProject GAIAですが、実はデジタルテクノロジ利用ありきでスタートしたものでは決してないのです。一見矛盾して聞こえるかもしれませんが、現状の問題点を分析し、対応方針を検討してく中で、必然的にデジタルテクノロジを使うことになった結果だといえます。これは、お客さまの課題解決に向けてNTTデータが取っているアプローチそのものです。社内プロジェクトであっても、手段であるテクノロジに振り回されることなく、目的実現のため現状分析から最善の手段を導くプロセスを大切にしています。
図:GAIA.finにおけるデジタルテクノロジ適用領域
今後の連載について
次回の第4回ではGAIA.fin:業務プロセス改革編として、働き方変革の重要課題である社員接点の高度化と財務会計についてお届けします。
- 第1回 “X”の実践 Project GAIA Overview
- 第2回 GAIA.fin 業務プロセス変革編 ~先行BPRと効果検証~
- 第3回 GAIAを構成するテクノロジ ~デジタルテクノロジ活用編~(本記事)
- 第4回 GAIA.fin 財務領域の変革編
- 第5回 GAIA.hr 人財領域の変革編
- 第6回 GAIA.hr データ活用編
- 第7回 Enterprise DX