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2021.6.21INSIGHT

デジタルの力で災害被害を最小化するためには

近年、豪雨などの頻発により自然災害に対する意識が高まっている人も多いのではないか。ここでは被害を最小限に抑え迅速な復興をめざす「JAPANレジリエンス」の取り組みに焦点を当て、NTTデータが描く未来の社会にせまる。

頻発・複雑化する自然災害の被害を最小化する

近年、豪雨や台風などの自然災害が頻発し、いずれ来るといわれている東南海地震などへの警戒など、自然災害に対する意識が高まっています。災害が複雑化していると感じる方も多いのではないでしょうか。たとえば洪水が起きて川が氾濫したとき、家屋の浸水被害が発生するだけでなく、さまざまな事情により避難が間に合わずに救助要請する人が出る場合もあります。また、高度経済成長期に造られた道路や橋の寿命が近づいており、災害時に老朽化した人口建造物の倒壊被害が起きる可能性もあります。従前の防災ソリューションは確かに有効ではあるもの、ある一定範囲の事象を対象にしているものもあるのが現状です。こうした複雑な事象を背景とした被害にはもう一歩踏み込んだ対応が必要となるでしょう。

NTTデータでは、従前からさまざまな防災にかかるシステム構築やソリューションを提供してきました。昨今の状況を踏まえ、より大きな視点からデジタル技術を活用した新たな防災の取り組みを進めています。私たちはこれを「JAPANレジリエンス」と呼んでいます。“レジリエンス”はしなやかな、という意味です。この観点は東日本大震災以前から政府の委員会でも議論されていますが、さまざまな要素を有機的につなげることで、全体として災害に強くしていこう、という考え方です。NTTデータ内にも多岐にわたる防災ソリューションがあります。それらソリューション群を複合的に見てフェーズごとにマッピングし、連携することで対応速度の向上を図り、不足している部分があれば補っていく取り組みです。

公共・社会基盤事業推進部長 松本良平

たとえば、無人ドローンで道路などのインフラをモニタリングしたり、IoTを活用して水道をモニタリングしたりすることで、ひびなどの不具合箇所をAIで検知するソリューションがあります。これは、平時においては、予防の役割を果たします。

そして、ひとたび自然災害が発生した場合、まず被害などの状況を把握する情報収集フェーズとなります。ここでもドローンを飛ばして周りの状態を確認したり、人の流れがどう変化しているかを把握したりするソリューションなどが活用できます。
情報を複合的に集めた上で共有・分析するフェーズでは、危機管理の情報共有のしくみがあります。被災箇所がどこかを地理的に確認できるソリューションや、「減災コミュニケーションシステム」という指示情報・防災情報の伝達ができるソリューションなども活用しながら逃げ遅れを防止します。
その後の行動支援フェーズでは、たとえばICUが満床になった場合、他の病院のICUを遠隔運用できるソリューション、復興に向けてはスマートシティなど新たな街づくりの取り組みなどがマッピングできます。ただ、まだまだ各フェーズで必要となるソリューションを網羅できていません。また、各フェーズで取得した情報を連携し、もっとスピーディーに指示伝達をする方法を模索しています。

コンセプトは「日本全国・国土の健康管理」。平時も使える防災ソリューション

私も皆さんも、日々の健康管理としてバイタルデータをモニタリングすることで、病気になりにくい健康なからだ作りをするほか、万が一病気になったとしてもいち早く体調の異変を発見、対処することで、重症化を防ぎ早期に回復することができます。同様に、日本全国の人・もの・国土などの状態をモニタリングすることで、平時における各種施策の評価や改善ができるほか、災害などの異変に対し早期に対応することで被害を最小限に抑えられれば、迅速な復興も可能となります。この、災害時だけでなく平時も含めて考えていくことが、JAPANレジリエンスのコンセプトです。

日本全国・国土の健康管理

モニタリングにはコストがかかります。コストを回収するしくみも必要となります。そこで考えているのが、平時と災害時でユースケースを変化させることです。
たとえば現在、電力の利用量はスマートメーターで電子的に取得しています。プライバシーへの配慮が必要ですが、これを活用することで電力データ使用量は時間帯ごとの在宅有無の情報となる可能性があります。この情報を活用すると社会問題化している宅配便の再配達削減に寄与する可能性があり、平時には物流企業と連携しコストの回収をするということも考えられます。
一方で、災害が起きて避難を呼びかけた際、電力を使用中の家庭があればそこに何らかの理由で避難ができない人がいる可能性があり、さらなる避難誘導を呼び掛けたり、救助隊を派遣したり命を守る活動に活用できます。ソリューションとしては同一ですが、異なるユースケースで情報の意味が変わってきます。
ビジネスとしても成り立たせながらソリューションとして展開する際には、NTTデータグループが持つさまざまなお客様とのつながりやこれまでの実績が強みになると考えています。

ユーザー目線で人に寄り添うサービスを

2021年は東日本大震災から10年の節目の年です。当時私自身は、政府系のお客様の営業部長として、ディザスターリカバリー、BCP(事業継続計画)の策定に携わっていました。直接の復興支援ではありませんでしたが、水や電気などと同じくらい止まってはならないITシステムのBCPを通じて、防災や危機管理に注目するようになっていきました。 その経験を活かし、現在はより直接的に被災した人に寄り添う取り組みとしてJAPANレジリエンスを推進しています。

JAPANレジリエンスの成果で実際に形になっているもののひとつが、アプリ「デジタル・マイ・タイムライン」です。これは、各自のプロフィール、特に後々の避難に関わってくる自宅や職場の場所などを入力すると、わかりやすい地図情報とともにその場所にあるリスクを示します。また自分の災害時の行動計画をあらかじめ作成する機能もあります。気象庁から発表される警戒レベルがいくつになったときにはこんなことをしたらどうですかと、アプリが選択肢を提示します。各選択肢には同じ境遇の方がどのぐらいその行動を選択しているかのパーセンテージも示しています。このときになったら食料を買いためておこうとか、このときに避難しようとか簡単に災害時の計画を立てることができるのです。そして実際に、たとえば気象庁から警戒レベル2が出たときには、自分が選択しておいた行動をアプリが教えてくれ、慌てずに行動できるよう支援します。

デジタル・マイ・タイムライン(※)

災害に直面する方々の不安で混乱している状況では、誰かからの提案が少しでも救いになるのではないか。この思いで開発したソリューションです。ユーザー目線でその人の立場に寄り添いシステムやしくみを考えていくことを大事にしています。

(※)デジタル・マイ・タイムライン

台風の接近等、災害リスクが高まっていく中でその時々に自分が何をするべきか、防災行動を時系列でまとめるマイ・タイムラインをアプリでかんたんに作成できるようにするもの。デジタルのメリットを最大限に活用し、気象庁の警報等と連動し予め計画していた行動をリマインドし必要な行動を促すとともに、近隣の避難所の混雑状況の可視化や避難所の予約などコロナ禍での避難の新たなあり方を提案している。

災害被害が最小化され、復旧・復興が早い社会をトータルデザイン

東日本大震災以降、完全な復旧・復興への道のりはまだまだ長いと感じます。原状復帰するだけでなく、次の住みやすい街、防災の整った街づくりなど、経験したからこそできる災害に強い街づくりをめざしていく。そのためのJAPANレジリエンスの検討の軸は「特定地域」と「広域」の2つがあります。
特定地域の検討で想定されるのが防災都市としてのスマートシティです。一方、各地域や自治体、国が連携し、情報共有から派遣支援などの協力が全国区で実施可能な状態の実現が広域の観点では必要です。

技術力を備え、デジタルで実現できるからと、なにもかも実装すればよいわけではありません。その土地に住まわれている方々の心理・心情への配慮が必要です。
例えば、高度経済成長、人口増加の社会では土地が不足し市街化が郊外へ進んでいきましたが、その結果、土砂災害のリスクの高い土地に住宅地が形成されています。今の人口減少社会ではコンパクトシティがうたわれていますし、防災の観点からも安全な地域へ移住するのが望ましいと考えますが、住民がその土地や家に愛着を持つのも当然です。
災害の危険性をシミュレーションなどで伝えて移住を促す方法もありますが、新たな土地での生活をイメージするためにVRを活用するとか、今の家をデジタルアーカイブし思い出に残せるようにするとか、前向きな気持ちで移住できるように支援するなど、NTTデータとしてはデジタル技術を活用して心理・心情にも配慮したサービスを提供していければと考えています。
地震が起きるか起きないかの予測は難しいですが、起きたときにどうすればよいのか、過去の事実や今起きている情報などから一定程度その答えを類推できる。それが復旧・復興を早め、災害被害の最小化につながります。そういう社会の実現に、われわれNTTデータは貢献していきたいと思います。

災害被害が最小化され、復旧・復興が早い社会をトータルデザイン

- NTTデータは、「これから」を描き、その実現に向け進み続けます -
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