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高まる災害発生リスク。NTTデータのめざす防災・減災とは
近年、巨大地震や集中豪雨などの気象災害は頻発化・激甚化しています。加えて、これまでに経験したことのない感染症の流行などにより、生活の安心・安全を脅かすリスクは拡大しています。いつ、どこで、何が起きるかわからない災害から一人ひとりの命と暮らしを守るためには、生活者、企業、行政それぞれが連携し合い、防災・減災を当たり前のものとして取り組んでいくことが不可欠です。
今回は近未来の一例として、“Smarter Society Vision”が唱える、災害からかけがえのない命を守るための、生活者一人ひとりに寄り添った避難支援と、その先の復興に向けた暮らしのサポートが実現する、新しい社会のかたちを紹介します。
生活者視点で考える、新たなサービス創出への挑戦
みなさんは、災害に対してどのような備えをしていますか?
防災に関する生活者アンケート(※1)の結果では、日頃からの備えが「大切だと思う」人は95.1%と、大多数が重要性を認識しており、防災意識の高さがうかがえます。一方で、家庭における災害への備えは88.3%が「十分ではない」と回答しており、防災意識は高いながらも、日常生活における実際の行動につながっていないことが見て取れます。
そこでNTTデータでは、生活者の生の声を聴き、災害に対峙する生活者の潜在的なニーズや課題を追求しながら、プロダクトアウトではなく生活者視点で真に価値のあるサービスの創出に挑戦しています。検討においては山形県酒田市の皆さまにご協力いただき、実際に被災や避難をされた方や市の関係組織・自治会・ボランティアの方々へのインタビューを通して、生活者の行動や意識の把握に取り組んでいます。
図1:生活者の行動・意識の把握と、サービスコンセプトの立案
インタビューを通して浮彫りになったのは、事前準備も不十分な中で緊急事態に直面し、限定的な情報を頼りに何とか災害から避難する不安な現実でした。
酒田市では近年、集中豪雨による浸水被害や土砂崩れの恐れから避難指示等が発令され、避難者が数百人規模に上った事例が発生しています。東京都23区同等の広さのある全域を、市役所の人員が公助としてカバーするには限界があります。いくつかの自治会は共助の体制づくりに奮闘していますが、地域によって温度差のある状況において、生活者自身が災害から身を守ることが必要不可欠になっています。
しかし生活者は、忙しい日常の中で防災について家族で話すことは少なく、避難所の確認や訓練・準備を行うといった機会も少ないのが現状です。そうした中で災害は突然発生し、テレビやインターネットの一般的な情報を頼りに近所の状況や離れている家族の安否もわからないまま、着のみ着のままの避難をなんとか行うことになるのです。
このような生活者の現実を見つめると、解くべき課題は多くあります。
- 災害が発生した際に、避難行動に移る判断をどうやって促すか?
- 正しく避難場所を認識し、安全にたどり着くには?
- 家族や知人の安否を確認し、互いに助け合うには?
- そもそも平時から防災を意識し、備えさせるには?
- どのような団体・企業と連携することで、生活者に価値のあるサービスが実現できるか?
そこでNTTデータが取り組んでいるのが、災害にあった際に少しでも不安を取り除き、生活者一人ひとりに寄り添うサービスの実現です。より使いやすい、だれ一人取り残さないサービスによって、生活者の安全と魅力ある街づくりにデジタルの力で貢献したいと考えています。
図2:酒田市防災サービスの取り組み
本人の位置情報からパーソナライズ化した逃げ時を通知し、一人ひとりの状況にあった避難経路をスマホに表示することで、防災・減災を図るソリューション。NTTデータの「AI技術」や「3次元地図技術」に加え、シミュレーション技術を得意とする専門のスタートアップ企業と協業し、時系列での雨量予測をもとにした浸水予測も行います。
被災後の暮らしを支える、生活者・企業・行政が連携するプラットフォーム
防災・減災では命を守ることが最優先ですが、その先の暮らしに向け、いち早く日常を取り戻すことも大切です。そこで、Smarter Society Visionが唱える一つの例が、生活者と企業や行政が連携することで、被災後の生活者へ高度なサービスをワンストップで提供する「被災者支援プラットフォーム」です。
「被災者支援プラットフォーム」は、人工衛星やドローンを活用して、高精度な画像データなど被災状況の把握に必要な信頼できる情報を取得し、企業や行政に提供します。企業や行政は生活者の本人同意にもとづいてマイナンバーカードなどのパーソナルデータを提供します。このように、被災時の混乱した状況の中でも相互かつ正確に情報連携をすることで、生活者にワンストップで、高度なサービスの提供を行えるようになります。
「被災者支援プラットフォーム」については、自治体、金融機関、その他復興支援企業と連携した具体的なユースケースをデジタルムービーとして公開しました。
なお、今回のデジタルムービーはユースケースアイディアの検討から動画の作成まで、NTTデータ社員が1からつくりました。自分たちでデジタルコンテンツをアジャイルでつくり、継続的に改善していくプロセスを実践したいという想いからです。
日々試行錯誤を重ね、今後も“Smarter Society”を発信していきたいと考えています。
NTTデータでは、他にも災害対策業務をトータルで支援するデジタル防災プラットフォーム「D-Resilio(※2)」を中心に、様々な防災・減災に関するソリューションを提供しています。AIや衛星・ドローン等、NTTデータの持つデジタル技術を活用し、あらゆる危機に対するレジリエンスを高めることで、「社会全体の総合力」として危機・災害対応力の底上げをめざします。
“Smarter Society”の実現に向けて
4回の連載にわたって、“Smarter Society Vision”がいま描く社会の姿を紹介してきました。NTTデータは、本ビジョンを通してお客さまや様々な関係者とめざす姿を共有し、新しいこれからを実現していきたいと考えています。また、本ビジョンは今後も社会トレンドや技術トレンドを常に考慮し、毎年継続的に必要な見直しをかけて最新化し、常に5年後のありたい将来像を示していく予定です。
一人ひとりのために、そして私たちが暮らす社会のために、NTTデータは信頼されるパートナーとして“Smarter Society”の実現に挑戦していきます。
図3:Smarter Society Vision