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2022.3.15業界トレンド/展望

複雑、高精度なシミュレーションでDXを加速~サイバーファーストなデジタルツインが実現する未来~

デジタルツインとは、サイバー空間上で現実空間を表現し、未来予測やシミュレーションを行う技術だ。サイバー空間で複数パターンのシミュレーションを行ってから現実空間での施策に落とし込む「サイバーファースト」により、実行する前に最適なデザインを探索することができる。具体的な事例とともに、未来のシミュレーションに迫る。
目次

サイバーファーストとは、サイバー空間での事前の検証

「新しく買った家具を置いたら、思っていたサイズ感と違った」―こんな課題を解決するために、AR技術を使って自分の部屋に家具を仮想的に置き、事前にイメージを確認できるアプリが出ています。このアプリのように、現実空間での行動より前に、サイバー空間で事前に導入検証をする。これがサイバーファーストな考え方です。

ビジネスにおいてもサイバーファーストの考え方は活用されています。たとえば製造業では、設計段階から機械をサイバー空間上で構築・動作させることで、より良い設計に生かすCAE(Computer Aided Engineering)があります。また建設業では、図面から建物をサイバー空間上で構築することで、構造計算だけではなく居住者の疑似体験が可能なBIM(Building Information Modeling)も使われています。このように、サイバーファーストのメリットは「実行する前に、より早く、より安く、より適切な結果がわかる」ことにあります。

今後モデリングやシミュレーションの技術が一層高度化されることにより、さらに広範囲でサイバーファーストが実現されると考えられます。

サイバーファーストなデジタルツインが実現する高精度なシミュレーション

NTTデータでは、社会全体のDX(ソサイエティDX)(※)実現のためにデジタルツインの活用を検討しています。
デジタルツインとは、現実空間のモノ・ヒトをサイバー空間上でデジタルコピーとして表現することで、未来予測やさまざまな条件でシミュレーションを行う技術です。デジタルツインの技術と、サイバーファーストの考え方を融合し、「サイバーファーストなデジタルツイン」を実現することが、ソサイエティDX実現の一つのカギとなります。
通常のデジタルツインは、現実空間をサイバー空間上にコピーして作ります。一方、サイバーファーストなデジタルツインでは、まずビジョンを掲げ、その実現のためにサイバー空間上でデザイン、シミュレーションを行います。そして、その結果を現実空間にフィードバックするのです。

サイバーファーストなデジタルツインの具体例として、物流企業の事例を見ていきます。
物流企業では、「将来的な人手不足に対して、どのように配送効率を高めるか」、「CO2排出量をどうやって下げるか」、「今のビジネスを軸にした新しい事業機会はないか」などの経営課題があります。この課題への対応策として、配送網の設計、拠点施設やエリアの見直し、車輌・人材の配備の最適化などが挙げられるでしょう。また、離島山間部でのドローン活用や、他の物流企業との混載なども考えられます。では、さまざま考えられる対応策のうち、何をどうすれば良い結果が生まれるでしょうか。全部実際に試してみる、というのは現実的ではありません。ここで活用できるのがサイバーファーストなデジタルツインです。

図1:物流企業でのDX探索イメージ

図1:物流企業でのDX探索イメージ

サイバー空間である地図上で、拠点や車輌・ドローンの配置・配備のさまざまな条件を変えながら、配送コストやCO2排出量の観点でどの組み合わせが良いかをシミュレーションができる。その結果をもとに、現実空間での施策を実施する。これこそがサイバーファーストなデジタルツインです。

NTTデータでは、実際にこのようなシミュレーションが可能なデジタルツインソリューションを試作開発しました。

図2:サイバーファーストデジタルツインシミュレーションのプロトタイプ

図2:サイバーファーストデジタルツインシミュレーションのプロトタイプ

今後は物流領域に限らず、サイバーファーストなデジタルツインの活用シーンを検討し、さまざまなデジタルツインソリューションを開発していく予定です。また、現実空間とシステムを実際に接続し、リアルタイムな状況変化にも追随して常に最適なビジネスプロセスを駆動させることも目指しています。サイバー空間で探索したデザインに対し、現実空間の状況変化を常に反映させていく。このサイクルを回していくことで、より高精度なシミュレーションを実現していきます。

図3:デジタルツインと現実空間との連携サイクル

図3:デジタルツインと現実空間との連携サイクル

(※)参考:ソサエティDXの実現へ。IOWN構想がデジタルツインを加速する

https://www.nttdata.com/jp/ja/data-insight/2021/0928/

デジタルツイン融合の必要性

ここまで見てきたように、サイバーファーストはさまざまな領域において活用可能な考え方です。一方、さまざまな事象が重なった複雑な課題に対し、シミュレーションの精度・信頼性をどう高めていくかが課題となっています。大半のビジネスプロセスは、複数の事象の複合によって成り立っています。例えば、先に述べた物流の事例では、道路の交通渋滞、気象などの事象が少なからず結果に作用します。
複数の事象をサイバー空間に取り込み、組み合わせてひとつのデジタルツインを構成する考え方を「デジタルツイン融合」と私たちは呼んでいます。デジタルツイン融合は、サイバーファーストなデジタルツインの実現のために必要な技術の一つです。

図4:デジタルツイン融合

図4:デジタルツイン融合

デジタルツインを融合するには、単純にデジタルツインを重ねればよいだけではなく、デジタルツイン間の相互作用を考えなければなりません。例えば、物流企業とタクシー企業のパートナーシップを考えてみましょう。タクシーのトランクに、宅配物も積んで、旅客と貨物配送を同時に行うようなビジネスを考えたとき、それぞれにとっての経済的メリットや、既存事業・顧客への悪影響の有無、どのような条件であれば成立するのか?など、二つのデジタルツインを融合させることで、実際に実証を始める前にさまざまな試行が可能になると考えています。
また、デジタルツイン融合はシミュレーションの精度(再現性)向上だけではなく、誰も予想をしていなかった「未知の再現」を生み出し、思わぬリスクの発見や連携効果を発見する可能性も持っています。

社会全体のDXに向けて

SDGsが注目されているなか、企業は自身のビジネス的な成功だけではなく、その結果、環境にどのような影響があるか、市民にどのような影響があるかなど、多面的な観点をもって社会との調和を図っていくことが求められます。「実行する前に最適なデザインを探索できる」サイバーファーストなデジタルツインは、そのような企業に価値を提供するものとなるでしょう。
NTTデータは、デジタルツインの技術開発を進めながら、それらが社会全体のDXにつながるように、多様な領域でのサイバーファーストなデジタルツインの適用を進めていきます。

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