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2022.3.22業界トレンド/展望

目指すはデザインの民主化!価値を生み届けるサービスデザイン

アメリカ・日本でデザイナーとして活躍した村岸史隆は、2020年にNTTデータに入社した。デザインの第一線を知る村岸は、NTTデータを選んだ理由を「デザインの力で社会価値を創出し社会に届けるため」だと語る。NTTデータがデザインで生み出そうしている価値と挑戦を紹介する。
目次

NTTデータを選んだのは、デザインの力で社会価値を創出したいから

企業の事業創出において、ユーザーエクスペリエンスを意識した「サービスデザイン」の存在感は急速に高まっている。デザインマネジメントの国際団体DMI(Design Management Institute)の研究発表によると、デザインを重視する企業は、そうでない企業に比べて2倍の成長を遂げているそうだ。

NTTデータも早くから世界各地で16カ所のデザインスタジオを運営。各スタジオは『NTT DATA Design Network』として、互いに人財やノウハウの共有、グローバル先進事例の活用やプロジェクト連携を進めてきた。

2020年6月には、NTT DATA Design Networkに所属するデザイナー集団の新ブランド『Tangity』を、日本・イタリア・ドイツ・イギリスの4カ国で立ち上げた。日本の『Tangity』である『Tangity Tokyo』を率いるのは、村岸史隆。2020年1月にADP(アドバンストプロフェッショナル)(※)として入社したサービスデザイナーだ。

村岸は、ニューヨーク工科大学大学院を卒業後、現地のブランディングエージェンシーにデザイナーとして入社。グラフィックデザイナーとして、ミネラルウォーターのボルビックのパッケージやユニセフのキャンペーンポスターなどを手掛けた。

その後、ロサンゼルスのスタートアップに転職。UIデザイナーとしてソーシャル系プラットフォームの構築などを担当。次に、Amazonの子会社であるAlexa InternetでUXデザイナーとして勤務し、データ系プロダクトやサービスプラットフォームのUCD(User Centered Design)チームに配属される。このスタートアップやAlexa Internetで、UXやUIを体系的に学んだという。

日本に帰国後は、事業会社や出版社でUXマネージャーを歴任し、2020年1月にNTTデータに入社した。そうそうたる経歴の村岸だが、NTTデータを選んだ理由を、こう語る。

技術革新統括本部 システム技術本部 村岸 史隆

技術革新統括本部 システム技術本部
村岸 史隆

「デザインファームでも事業会社でも、企業価値やビジネス価値の最大化を念頭に置いて仕事をしていました。ある意味、目の前のステークホルダーとその先にいるお客さんしか見ていませんでした。もちろん、そこで良いサービスをリリースするのは大事なことです。しかし経験を重ねるにつれて、社会価値まで広げて提供できる環境でデザインの力を発揮したい、といった思いが強くなりました。次の成長を考えたときに、保険や製造、金融などさまざまな顧客との仕事があり、そこに公共事業も掛け合わせて価値提供ができるNTTデータで働いてみたいと考えたんです」(村岸)

前職でもNTTデータと仕事をする機会があったという村岸。「いわゆる、“The ITゼネコン”といった印象でした」と笑う。しかし、実際に転職活動を通じて出会ったNTTデータの社員には、「そういったイメージを変えたい」、「新しいことにチャレンジしたい」という思いを持つ人が多かったという。

「入社して感じたのは、柔軟性と受容度が高い組織だということ。新しい取り組みはウェルカムな雰囲気で、とりあえずやってみるか、という環境です。お客さまに対しても、新しいことを一緒にやっていかないとシュリンクしますよ、という姿勢。正直、もっと旧態依然とした考えの組織だと思っていたので、良い意味で裏切られました」(村岸)

(※)ADP(アドバンストプロフェッショナル)

AIやIoT、クラウドなど先進技術領域やコンサルティングの領域において卓越した専門性を有した人材を、外部から市場価値に応じた報酬で採用するしくみ

デザイン視点がないとNTTデータの強みを活かせない

ビジネスにおけるデザインの重要性は浸透しつつある。アクセンチュアのFJORD買収やマッキンゼーのLUNAR買収や博報堂のIDEO出資、電通とfrogの提携など、各企業のデザインファームの買収や提携が活発になっているのも、その証左だろう。

村岸はその背景を「ビジネス的なコンサルティングや、システムやテクノロジーのコンサルティングだけでは、イノベーションを生むのにピースが欠けていることが浸透してきたからだと思います」と分析する。

そのうえで、「社会を支える大きなシステムや枠組みの構築は、テクノロジーやシステムだけでは支えきれなくなっています。ビジネス視点はもちろん、デザイン視点も重視しないと、NTTデータが強みとしているシステムやテクノロジーを活かせません」と課題を指摘する。

では、NTTデータが目指すべきデザインの活用とは、どういったものなのか。

「UIにおける価値提供はもちろんですが、その前段、つまり、どういったユーザーに、どのような価値を提供するべきかという戦略部分が重要です。例えば、『街』を作り上げるスマートシティでは、多くのステークホルダーがプロジェクトに関わってきます。ここで、デザインのプロセスを実施することにより、合意形成やサイロ化した組織の解体などによってゴールを提示して、進む方向をファシリテーションしてあげる。これも、デザイン活用の大きなポイントであり、機能すべきエリアです」(村岸)

実現の道筋を考え、コンサルティングを行う『サービスデザイナー』

NTTデータでは、高度なデジタル技術に加え、ビジネスを深く理解し、デジタル技術の活用を通じて新しい社会のしくみを創出する人財を「アーキテクト」ととらえ、その育成に取り組んでいる。アーキテクトの中でも、エンドユーザー視点に立ち、顧客体験を継続的に実現するためのしくみをデザインし、新たな価値を創出するのが「サービスデザイナー』だ。

図:アーキテクトに求められる知識・能力

図:アーキテクトに求められる知識・能力

NTTデータが描く新たな社会のしくみを具現化するためにサービスデザイナーは欠かせない。村岸は、サービスデザイナーの代表格の一人でもある。その役割について村岸は、このように認識している。

「デザイン思考では、最初に、エンドユーザーのあるべき体験、すべき体験を描く。そして、そのために必要なサービスやコンセンサス、アライアンスなどを考えていきます。つまり、サービスデザイナーは、まず大きなTo-Be像を描き、それを実現するための道筋を考え、コンサルティングを行う仕事だと理解しています」(村岸)

NTTデータのサービスデザイナーがやっていることは、デザインファームのデザイナーと同じではないか?という疑問を持つ読者もいるかもしれない。村岸は、「一見したケイパビリティだけを見ると、その通りかもしれません」としつつ「しかし、お客さまとの関係の深さは全く異なります」と語る。

「サービスデザイナーは基本的にお客さまと直接仕事をします。しかし、間を取り持ってくれるのは、事業部の営業や開発の社員。彼らはお客さまとの関係性が深く、困りごとや課題をしっかりと理解しています。僕は以前、デザインファームに在籍して、直接、お客さまの課題をヒアリングしていましたが、正直、短期的な視点に陥っていると感じることもありました。その点、NTTデータはお客さまが考えている以上に、取るべき戦略やあるべき方向を多方面の視点から見ています。その強みを活かして、お客さまのプロジェクトをデザインできるのは、非常に恵まれた環境です」(村岸)

重要なのは、単なるコンサルティングでお金を稼ぐのではなく、新しい社会のしくみやNTTデータの資産を活用したサービス提供の枠組みを検討し、これまでにない価値を創出することだ。ユーザーが享受すべき体験とそれを提供するためにあるべきサービスは、非常に多様化している。「それを組み合わせて社会に価値のあるサービスをユーザーにしっかり届ける道筋を作れる人財『サービスデザイナー』の存在が必要なのです」と村岸は語る。

もちろん、いかにサービスデザイナーとはいえ、簡単に完璧なTo-Be像や画期的なアイデアが生み出せるわけではない。まずは初期仮説を作るのだが、インタビューやリサーチを重ねることで、良い意味で裏切られることもあるという。村岸は、「それこそ、サービスデザイナーのやり甲斐」という。

「描いていた初期仮説が崩されたあとに、それを上回るものを生み出した瞬間が、やり甲斐や楽しさを感じるときですね。新しい価値を作っていると実感します」(村岸)

サービスデザイナーに求められるのは、不確実性を楽しめること

村岸がサービスデザイナーとしてNTTデータに入社し丸2年が経った。さまざまなUXサービスに携わり、十分な実績を持っている村岸でも、学び、成長することが多かったという。

「NTTデータでは、社会的価値や公共性のあるプラットフォーム事業系のプロジェクトに携わるので、目の前に見えているものだけではなく色々な視点を持つことが求められます。例えば、今携わっているプロジェクトは、銀行のサービスを企画しながら、雇用や医療の視点もあわせ持たないといけない。そうすると、目の前のひとつのお客さまに何かを提供するだけではなく、多面な視点でひとつのサービスプロダクトを作らなくてはいけません。こういった経験を積めることで、成長できていると感じています」(村岸)

村岸は、サービスデザイナーとして最も重要な要素に「不確実性を楽しめる人」という条件を挙げた。

「言われたことをしっかりとやる。確実でないと踏み出せない。そういった人もいると思います。しかしデザインでは、数多くの不確実を紐解き、整理して積み上げながら、確実なものを作っていくプロセスが重要です。最初は、どうしても不確実な状況に飛び込まなくてはならない。それを楽しめることが、大切なマインドセットだと思っています」(村岸)

サービスデザイナーという存在に、大きな期待を寄せている村岸。「サービスデザイナーがプロジェクトに参加することで、チームビルディングや合意形成といった組織課題の解消も付加価値として提供できればいいと思っています。そこから、全体のマインドセットが変わっていくといいですね」と展望を語った。

最後にサービスデザイナーであり、『Tangity Tokyo』のトップでもある村岸に、目指すべき未来を聞いた。

「これまでは、プロジェクトデリバリーにフォーカスしていましたが、今後はしくみづくりに時間を使っていきたい。テーラーメイドでクオリティの高いサービスを提供することは正しいのですが、それをもう少ししくみ化して、色々な人が使えるようにしたいと考えています。そして、組織を大きくして、デザインが出来る人を増やすことが目標です。

そのために、NTTデータの社員に向けてデザイン思考を学んでもらう研修も行っています。営業や開発の社員がデザイン思考を身につければ、より円滑にプロジェクトが実行できるはず。また、サービスデザイナーの数も足りていないので、育成研修にも力を入れる予定です。まさに今、ミラノ工科大と共同で、一気通貫したデザインプロセスを提供できるような研修プログラムを作っています」(村岸)

NTTデータは、サービスデザインを重要戦略のひとつに位置付けており、『Tangity』を展開しながらサービスデザイナーの育成と獲得も積極的に行っている。村岸は言う。

「目指すは、デザインの民主化です」

デザインを主軸におくNTTデータのアーキテクトとして、村岸の挑戦は続いていく。

- NTTデータは、「これから」を描き、その実現に向け進み続けます -
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