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2022.5.31業界トレンド/展望

オンラインとオフラインを“融合”する「OMO」とは?O2O、オムニチャネルとの違いや最新事例を解説!

スマートフォンが身近なツールとなり、ECでの購買体験も当たり前となった今、オンラインとオフライン双方の連携が小売業の必須の課題となりました。そこで今回は「OMO(Online Merges with Offline)」について、注目されるようなった理由、「O2O(Online to Offline)」や「オムニチャネル」との違い、国内外の事例までを解説します!

NTTデータのマーケティングDXメディア『デジマイズム』に掲載されていた記事から、新規事業やデジタルマーケティング、DXに携わるみなさまの課題解決のヒントになる情報を発信します。

OMO(Online Merges with Offline)とは?

OMOは「Online Merges with Offline」の略で、直訳すると「オンラインとオフラインの融合」を意味します。

小売業などにおいては、オフラインの顧客タッチポイントであるリアル店舗のほかに、ECサイトやスマートフォンアプリ、SNSなど、オンライン上でも顧客とのタッチポイントを持つことが当たり前になりました。一方で、Amazonに代表されるように、ECが先行していた企業が新たな顧客とのタッチポイントとしてリアル店舗を展開する動きもみられます。

このように、オンラインとオフラインのチャネルを有する企業が、双方の垣根をなくし、顧客に新たな顧客体験を提供するための一連のマーケティング施策をOMOと総称しています。

オンラインには、移動を伴わずにほしい商品にすぐアクセスでき、購入できる圧倒的な利便性のメリットがあります。一方で、オフラインのリアル店舗には、商品を実際に確かめられる、接客サービスを受けられるなど、固有の顧客体験があります。こうしたオンラインとオフラインそれぞれのメリットを掛け合わせることで最良の顧客体験を生みだすのが、OMOの基本的な考え方です。

OMOは最良の顧客体験を生みだす考え方

OMOとO2O、オムニチャネルとの違いは?

「オンラインとオフラインの垣根をなくす」といっても、具体的にイメージしにくいかもしれません。そこで、類似するマーケティング用語である「O2O」「オムニチャネル」と比較して、OMOの特徴をより明らかにしてみましょう。

O2OとOMOはどう違う?

O2Oとは「Online to Offline」の略語で、顧客をオンライン(ECサイト、スマホアプリ、SNSなど)からオフライン(リアル店舗)へと誘導するマーケティング施策を指します。たとえば、リアル店舗で利用できるクーポンをECサイト上で配布し、リアル店舗への来店動機を促すことは、典型的なO2O施策です。

このO2Oは、基本的にオンラインからオフラインへの一方通行の導線を想定しています。それに対してOMOは、オンラインとオフラインを相互に行き来する、あるいは併せて利用することで新たな顧客体験を生みだすものです。一方通行か、双方向かという点がO2O とOMOの主な相違点です。

たとえば、次のようなオンラインとオフラインを行き来する顧客体験がOMO施策の一例です。

<例>

  • アパレルブランドのECサイトで今季新作のスカートをチェックし、お気に入りに登録。
  • お気に入り登録したスカートのサイズや着用感を確かめたいと思い、友達と映画に行く約束をした日に待ち合わせ時間より早めに出かけてアパレルショップに来店。
  • 入店時にアプリでチェックインすると、店員さんがECサイトでお気に入り登録したスカートとそれに合うブラウスをオススメしてくれた。
  • スカートは気に入ったため、その場で購入を決断。ECサイトで決済し、商品は自宅配送を選択して手ぶらで映画館へ。
  • その後、購入のお礼に関するアプリプッシュ通知と併せてポイントが貯まっていることを確認。
  • 貯まったポイントを使って、先日店舗で試着したが購入を保留していたブラウスをECサイトで購入した。

また、O2Oは、基本的にオフラインの店舗へ来店誘導する「販売促進」をねらいとした施策です。対して、OMOは顧客にとって最良の体験を提供し、顧客エンゲージメントを高めることに主眼が置かれています。すなわち、顧客の「体験」にフォーカスしていることが、O2Oとの相違点です。

オムニチャネルとOMOの違い

オムニチャネルとは、「オムニ=Omni(すべての、あらゆる)」「チャネル=Channel(販路)」という言葉が表すように、オンライン・オフライン含めた自社のすべての販売チャネルを統合する戦略を指します。顧客とのタッチポイントを増やすことで、どのチャネルでも同じ商品を購入できることを目的とした施策であり、「購買」にフォーカスしているのが特徴です。

一方、OMOがめざす顧客体験は「購買」に限定されません。商品を購入する前の検討段階から、購入した後のアフターフォローまでの一連の顧客体験を、オンライン・オフラインの区別なく向上させる施策がOMOです。

また、オムニチャネルは「チャネル=顧客とのタッチポイント」を増やし、同時にチャネルごとの物流を最適化することで、販売機会の損失を防ぐという企業側の意向が強い考え方です。対してOMOはオンラインとオフラインを融合して「新たな顧客体験を生みだす」という「顧客」を起点とする考え方です。その点でも、OMOとは異なるといえるでしょう。

  • OMOとO2O、オムニチャネルの違い
  OMO
(Online Merges with Offline)
O2O
(Online to Offline)
オムニチャネル

概要

オンラインとオフライン(店舗)の垣根をなくし、どちらも変わらぬ顧客体験を得られるようにするマーケティング施策 顧客をオンラインからオフライン(店舗)に誘導する販売促進施策 顧客とのオンライン/オフライン含めたタッチポイントを設計し、どのタッチポイントにおいても同じように商品が購入できるようにする施策

目的

顧客にとって最善の体験を提供することでエンゲージメントを高める 店舗誘導による販売促進 購買接点を増やして購買機会を増やす

具体例

オンラインで事前に購入手続きした商品を実店舗で受け取る WEB広告で、リアル店舗で利用できるクーポンを配信する 店舗でしか買えなかったものをECでも買えるようにする

タッチポイント

商品購入前〜アフターフォローまで 購買 購買

OMOが注目されるようになった理由

これまでオンラインとオフラインを連動させる施策としてO2Oやオムニチャネルが先行していた中で、なぜOMOが注目されるようになったのでしょうか。

OMOという言葉は、元Google Chinaのトップで、後にシノベーション・ベンチャーズを創業した李開復(リ・カイフ)が提唱したものです。2017年12月に経済誌に発表されたことを機に、マーケティング業界を中心に広まっていきました。

少子化や、D2Cブランドの台頭などによる市場競争の激化といった背景から、商品そのものの価格や機能などでは差別化が図りにくくなるなか、顧客が商品を検討する段階から、商品の選定、購入、購入後のアフターフォローに至るまでの一連の顧客体験(CX:カスタマーエクスペリエンス)を向上させることが新たな競争軸となりました。それに伴い、オンラインとオフラインを融合して新たな顧客体験を生みだすOMOという概念が生まれたのです。

顧客体験の向上が新たな競争軸となったことで、「販売促進」にフォーカスしたO2O、「購買」にフォーカスしたオムニチャネルよりも、OMOが重視されるようになったといえます。

顧客体験の向上が新たな競争軸となったことでOMOが注目されるようになった

OMO施策の国内事例

OMOは既に、国内でも先進的な企業の事例が数多く生まれています。ここではその中から、いくつか具体的な国内事例をご紹介します。

<事例➀>スターバックスコーヒーの「Mobile Order & Pay」
もっとも身近でわかりやすいOMOの事例として、スターバックスコーヒーのモバイルオーダーシステム「Mobile Order & Pay」があります。スマートフォンアプリで店舗を選択し、商品を予約注文し、店頭で受け取るシステムです。オーダー時の待ち時間を減らせるという明快な顧客体験の向上を、スマホアプリとリアル店舗の融合によって実現しています。

スターバックスコーヒーの「Mobile Order & Pay」

<事例②>ザ・ノース・フェイスの在庫一元管理システム
アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」を展開する株式会社ゴールドウィンでは、ECシステムの全面的なリプレースに伴い、直営店とECサイトの在庫一元管理システムを構築しました。同ブランドのECサイトを訪れると、商品の在庫状況がECだけでなく、全国の直営店も含めて一覧表示され、常にリアルタイムで在庫状況を確認できるようになっています。ECにある在庫を指定する直営店に取り寄せることも、直営店に残っている在庫をECで購入することもできます。

ザ・ノース・フェイスの在庫一元管理システム

<事例③>ウォークスルー店舗「Catch&Go ®(キャッチアンドゴー)」
Catch&Go®は、NTTデータが提供する、レジを通さずに買い物ができる「ウォークスルー店舗」です。顧客が持ち帰った商品は登録されたクレジットカード情報によって自動決済されるため、レジでの支払いが必要ありません。買い物に伴うレジ待ちや支払いのわずらわしさが解消されるという、これまでにないストレスフリーな顧客体験を実現しています。

また、Catch&Go®の店内では顧客が手に取って棚に戻した商品や、どの棚の前で立ち止まったかといった行動も、棚の重量センサーと店舗に設置したカメラによって自動検知されます。したがって、これまでのリアル店舗では取れなかった多くの行動履歴をデータとして収集することができます。オフラインで得られたデータを、オンラインでの顧客体験向上に活用することができるという点でも、まさにオンラインとオフラインが融合した事例といえます。

話題のウォークスルー店舗”CATCH&GO”でお買い物!筆者もビックリの購買体験とは?

レジを通らずお買い物ができる「ウォークスルー店舗”CATCH&GO”」が2021年9月にNTTデータ社内にオープンしました。株式会社ダイエーさまと共同展開するこの店舗では、当社のレジ無し店舗サービス”Catch&Go®”を活用しています。本...

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OMO施策の海外事例

国内事例につづき、海外のOMO事例も見ていきたいと思います。

<事例>アリババグループ「フーマー」
中国のEC最大手・アリババグループは、2016年に「ニューリテール(新小売)」という概念を提唱し、オフラインサービスを強化しています。その象徴ともいえるのが、スーパーマーケットの「フーマー(盒馬鮮生)」です。

フーマーは、オフラインならではの顧客体験が得られることが魅力です。海鮮売り場では生け簀で泳ぐ魚介類を実際に見ることや、店内で購入した食材をその場で調理してもらうことができます。店頭で購入する商品を決めてから、フーマーのアプリでQRコードを読み取ってECのカートに入れ、後日配送してもらうことも可能です。オンラインとオフラインの双方のメリットを活かして、顧客が自分に最適なサービスを柔軟に選択することができるように設計されています。

商品の価格や機能による差別化が難しい今、OMOによる顧客体験がカギ!

OMOについて、言葉の定義から注目されるようになった理由、国内外の事例まで解説しました。事例をみても、既にコーヒー、アパレル、生鮮食品など非常に幅広い業態で、オンラインとオフラインを融合したユニークな顧客体験が数多く提供されています。

OMOによって新たな顧客体験を創造することが、これからのマーケティングの大きなカギと言えるでしょう。

監修者:藤川 真由子

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