NTTデータのマーケティングDXメディア『デジマイズム』に掲載されていた記事から、新規事業やデジタルマーケティング、DXに携わるみなさまの課題解決のヒントになる情報を発信します。
CDP(カスタマーデータプラットフォーム)とは?
CDPとは企業が保有する顧客の属性や行動のデータを一元的に集約して、マーケティング施策に活用するためのプラットフォーム
CDPとは「Customer Data Platform」の略語で、企業が収集・保有する顧客の属性データや行動データなどを一元的に集約して、マーケティング施策に活用するためのプラットフォーム(基盤)を指します。
マーケティングツールのMA(マーケティングオートメーション)と組み合わせることで、MA単体に比べて一人ひとりの顧客行動の解像度が上がり、マーケティング施策の精度を飛躍的に高めることができます。
CDPの基本的な機能
CDPの4つの基本機能
CDPには、大きく分けて➀データ収集、➁データ整形・集計、➂データ統合、➃セグメンテーションの4つの基本機能が搭載されています。
➀データ収集
顧客の属性、趣味嗜好、行動データなど、顧客に関するあらゆる情報を収集することができます。たとえばサイトやアプリを訪問した顧客の購入履歴や、閲覧履歴に加え、一度買い物かごに入れたものの購入に至らなかった商品といった情報まで収集できます。
➁データ整形・集計
収集したデータを整形・集計し、利用可能なデータへと加工できます。複数のチャネルから収集したデータは、そのままでは利用できないことが少なくありません。データの欠損や重複、ノイズ、表記ゆれなどが生じることが多いためです。それらのデータを整形・集計し、使えるデータに加工することもCDPの機能の一つです。
➂データ統合
複数のチャネルから収集したデータを、顧客IDをキーに紐づけ、顧客一人ひとりのデータとして統合することができます。その結果、顧客の属性や行動履歴を、よりくわしく把握でき、最適なOne to Oneマーケティングを可能にします。
具体的には、ECサイトのデータを実店舗におけるPOSデータと連携することで、ECでの行動履歴をもとに実店舗での接客を改善するなど、その顧客の趣味嗜好をより反映したコミュニケーションが可能になります。
➃セグメンテーション
施策の対象としたい顧客について、属性や行動にもとづいてセグメントを定義することができます。顧客の年齢や性別などの属性データとさまざまなタッチポイントから収集した行動履歴をもとに、エンゲージメントが高い顧客を抽出することが可能なため、施策のROIを向上させることができます。
CDPとプライベートDMP、パブリックDMPの違いは?
CDPとDMPの違い
CDPとよく混同されるDMP(データマネジメントプラットフォーム)、その違いとは何でしょうか?
CDPとDMPの違い
CDPとDMPの違いはふたつの観点から確認できます。ひとつは、扱うデータの保有者の観点で、具体的には自社保有データ(1stパーティデータ)か、第三者保有データ(3rdパーティデータ)かという点です。もうひとつは、個人情報を扱うか、匿名情報を扱うかという点です。
DMPは、データ保有者の観点から、パブリックDMP(オープンDMP)とプライベートDMPのふたつに分けられます。先ほどの観点をもとに、CDPとの違いをそれぞれ見ていきます。
パブリックDMP(オープンDMP)
CDPが、さまざまな種類の自社保有データ(1st パーティデータ)を管理するプラットフォームなのに対し、パブリックDMPとは、第三者機関(3rdパーティ)が蓄積した膨大なデータを管理するプラットフォームです。取り扱うデータは個人情報ではなく、IPアドレス、Cookie、デバイスの位置情報などの匿名情報で構成されています。匿名情報とすることで個人のプライバシーは守りながら利用者の間で共有・活用することができます。
このパブリックDMPを導入することで、検索エンジンでの検索情報や他社サイトの閲覧履歴などといった外部サイトでの行動履歴をマーケティング施策に活用し、さらに顧客行動の解像度を高めることができます。
プライベートDMP
プライベートDMPは、自社で収集した行動履歴などのデータ(1stパーティデータ)を蓄積したプラットフォームです。ここでの「プライベート」とは「自社のみで閉じられている」という意味です。
自社で収集したデータプラットフォームという点ではCDPと非常によく似ています。ただし、異なる点が2つあります。
ひとつは、利用の目的と利用者の違いです。CDPは「顧客データプラットフォーム」であり、主にマーケティング施策を目的にマーケティング部門が運用することを想定しています。対して、プライベートDMPは「データ管理プラットフォーム」で、文字どおりデータを蓄積し加工することに主眼が置かれ、システム部門が運用することを想定しています。もうひとつは、保有するデータの違いです。CDPで収集・保有するデータは必ず顧客に紐づいています。一方、プライベートDMPには匿名のデータも含まれています。
CDPが必要とされる背景
CDPが必要とされる背景
CDPが今日のマーケティング施策において必要とされる背景を説明します。
➀One to Oneマーケティングの重要性の高まり
従来は、テレビや新聞などのマスメディアを活用し、多くの顧客に一律のコミュニケーションを行うマスマーケティングが主流でした。ところが、今日では顧客ニーズが多様化しており、顧客一人ひとりに最適化されたマーケティング施策「One to Oneマーケティング」の重要性が増しています。このOne to Oneマーケティングを行うために、CDPを用いて顧客の詳細なデータを収集、分析、活用する必要があります。
➁ 3rdパーティデータの利用に対する規制の動き
EUの個人情報保護規制「GDPR」(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)や日本の個人情報保護法改正など、3rdパーティから得られるCookieなどの情報に対する利用規制の動きがあります。Googleも、2023年までに3rd パーティデータの利用を廃止することを表明しています。この利用規制の動きから、今後はパブリックDMPで収集・活用できる3rdパーティデータにも規制がかかることが見込まれています。この規制が相対的に1stパーティデータの重要性が高まり、CDP需要を押し上げているのです。
CDPとMAツールとの関係
CDPとMAツールの関係
CDPは、顧客データを収集・管理・分析する「データプラットフォーム」です。したがって、CDPとMAを組み合わせることで、豊富な種類・量のデータをもとにさまざまな切り口でのセグメンテーションが可能となり、マーケティング施策の精度を大きく高めることができます。
CDP導入のメリットと重要なこと
改めて、CDPを導入するメリットと、導入にあたっての重要な点を整理しておきます。
CDP導入のメリットと重要なこと
CDP導入のメリット
顧客データを収集し、一元管理できるCDPを導入することで得られるメリットは、主に下記の4つです。
- 複数のチャネルから収集したデータを、顧客IDをキーに紐づけることで、顧客ひとりのデータとして統合することができる
- さまざまな種類のデータや多くのデータを柔軟に収集・蓄積することができる
- 異なる部署間で共有・活用することができる
- 豊富な種類・量のデータソースを活用し分析することで、顧客行動の解像度が上がり、カスタマージャーニーを考慮したマーケティング施策が可能となる
CDP導入にあたって重要なこと
このように、さまざまな顧客行動に関するデータを収集・管理できるCDPですが、もちろん収集・管理が導入の目的ではありません。個人情報保護の規制がますます厳しくなる中で、それらのデータをどう活用して、何を実現したいのかという「望ましいマーケティング施策のあり方」のイメージを描いておく必要があります。
また、導入後の運用や施策実行の体制を構築しておくことも重要です。複数のチャネルのデータを統合していく観点からは、部署を横断してデータ活用の重要性を説明し、導入後もマーケティング施策を推進していけるリーダーの存在も欠かせません。
主なCDPツールの紹介
主なCDPツールとして、➀ Treasure Data CDP、➁Salesforce CDPの2種類を紹介します。
Treasure Data CDP
Treasure Data CDPは、トレジャーデータ社が提供するCDPツールです。データ収集からデータ整形・集計、さらにデータ統合、セグメンテーションまで幅広い領域をカバーしているのが特徴です。マーケターにとっても使いやすいUIとなっており、専門知識がなくてもマーケターが自らセグメンテーションできる点は大きな強みです。
また、外部の既存システムと連携しやすい点、Web上の行動履歴を捕捉するのが得意な点などが強みとして挙げられます。連携先やWebサイトを多数持っている企業に適しています。
Salesforce CDP
Salesforce CDPは世界でも日本でもトップシェアのセールスフォース社のCDPです。「データ統合」「セグメンテーション」を得意とするツールです。データの関連付けと名寄せ、GUI(グラフィカルユーザインターフェース)でのセグメンテーション機能に優れています。
Salesforce製品との親和性が高いため、Salesforce CloudなどのCRM/SFAツールとの連携が容易なのも特徴の一つです。
「CDP+MA」の最適な組み合わせを検討しよう
さまざまなタッチポイントから得られる顧客情報を一元的に収集し、顧客ごとに管理できるCDPは、One to Oneマーケティングの精度を大きく向上させることのできるデータプラットフォームです。ご紹介した以外にもさまざまな種類のCDPツールがあり、カバーする機能領域や操作性に違いがあります。
データを活用したマーケティング施策の強化をお考えの際は、企業の特性や抱えている課題、実現したいマーケティング施策、デジタルマーケティングへの成熟度などをふまえながら、「CDP+MA」の最適な組み合わせをご検討ください。
監修者:林田 慶