NTTデータのマーケティングDXメディア『デジマイズム』に掲載されていた記事から、新規事業やデジタルマーケティング、DXに携わるみなさまの課題解決のヒントになる情報を発信します。
インタビュイー・インタビュアーの紹介
左から
栖関 邦明
株式会社NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 スマートライフシステム事業部 主任
大塚 遥 様
小田急電鉄株式会社 顧客価値創造部 企画・戦略担当 事務員
新田 稔 様
小田急電鉄株式会社 顧客価値創造部 企画・戦略担当 課長代理
阿部 永 様
小田急電鉄株式会社 顧客価値創造部 企画・戦略担当 事務員
次世代顧客と新たな収益の獲得をねらいに小田急ポイントカードのアプリ化を推進
-まず、小田急ポイントアプリとデジタルマーケティング基盤を導入しようとした経緯をお聞かせください。
新田さん:小田急電鉄では、新宿ミロードやフラッグスなどの商業施設や沿線の加盟店で利用できる「小田急ポイント」サービスを提供しています。沿線人口の約25%の方にご利用いただくなどご愛顧いただいていますが、一方で小田急ポイントカード会員の高齢化やデジタルチャネルへの対応遅れが課題となっていました。
具体的には、会員とのコミュニケーション手段は店舗での対面や紙媒体のダイレクトメール、そして一斉配信のメルマガが中心で、きめ細かなコミュニケーションが取れていませんでした。また、全社的にデジタルトランスフォーメーション強化を重点課題として設定した経緯も追い風となって、今回の検討となりました。
今回の取り組みは、次世代顧客と新たな収益の獲得をねらい、小田急ポイントカードをアプリで利用できるようにすることでお客さまごとにきめ細かなサービスを提供するものです。NTTデータの提案は、顧客データを一元管理するためのDMP(Data Management Platform)と、DMPに蓄積した顧客データをもとに最適なプロモーション施策を実施できるMA(マーケティングオートメーション)を導入し、アプリを顧客接点として、お客さまごとに最適なコミュニケーションが取れるというもので、当社にとって非常に魅力的でした。
小田急ポイントアプリ デジタルマーケティング基盤イメージ
ビジネス面から伴走できる体制・実績がNTTデータ採用の決め手
-NTTデータをご採用いただいたのはどのような理由からでしょうか?
新田さん:デジタルマーケティングの推進にあたり、当社としてはビジネスモデルと収益性を検討するためのコンサルフェーズと、アプリを含むデジタルマーケティング基盤を構築する開発フェーズのふたつに分け、それぞれ支援候補として複数社を検討していました。そのような中でNTTデータに魅力を感じた点は大きく3つあります。
1つめは、コンサルフェーズから開発、運用まで一気通貫で対応できる体制・実績を有していたことです。ふたつのフェーズを別々の会社にお願いする前提で考えていた当社にとって、1社で担っていただけることは魅力でした。
2つめは、既存サービスに対する深い理解です。既存の小田急ポイントシステムを支援いただいていた経緯から、NTTデータは既存のポイントシステムや関連システムに詳しいだけでなく、当社のビジネス環境やポイントサービスについても深く理解いただいていました。こうした点もNTTデータを採用する大きな要因となりました。
3つめは、プロジェクト開始前から、データ活用やデジタルマーケティングなどのさまざまな勉強会を開催いただき、経営層同士でコミュニケーション・信頼関係が構築できていたところです。当社課題の深い理解に基づき、どうすべきかを一緒に議論し、形にしていくことができることは私どもには大変魅力的に感じました。
顧客価値創造部 新田さん
プロジェクトを通して実感した、NTTデータの知見と丁寧な伴走力
-プロジェクト実行時に特に印象に残っている出来事がありましたら、お聞かせください。
新田さん:アプリのサービス検討に初めて携わる当社メンバーが多い中、サービス設計やUI設計、機能設計など検討すべきことが多く、NTTデータと密にコミュニケーションを取りながら進める必要がありました。NTTデータからは、システムに詳しくない当社メンバーに対しても、お客さま目線の要望をシステム観点、デザイン・UX観点で分かりやすくアドバイスいただいたおかげで、形にしていくことができました。
また、リリース後はMA(KARTE、Salesforce Marketing Cloud)、BI(Tableau)と複数のツールを使いこなしていく必要がありました。NTTデータは、運用マニュアルの整備だけでなく、実際に当社まで来て使い方を毎週対面で教えていただけるなど、手厚くフォローしていただきました。おかげで基本的な機能は使えるようになってきており、非常にありがたいと感じています。
大塚さん:プロジェクトを進める中で、実現したいサービス仕様をどのようにアプリ内の機能として盛り込むかに難しさを感じました。システム上実現可能な仕様と実現したいサービス仕様に差異が出たこともありましたが、さまざまな制約がある中でどのような方法で実現可能かをアドバイスいただけたことが良かったです。
顧客価値創造部 大塚遥さん
阿部さん:これまで、紙媒体のダイレクトメールではセグメント分けをしてお客さまごとに個別の内容を送付していましたが、メルマガは一斉配信をしていました。今回の取り組みで、お客さまのセグメント、ステータス、ポイント利用状況に応じてメール、アプリPUSH通知、ポップアップとそれぞれのチャネルを使い分け、適切な頻度とタイミングで情報をお届けすることができるようになりました。NTTデータからは、開発期間中にお客さまとのコミュニケーションについてもアドバイスをいただき、MA配信シナリオを策定できるようになりました。
顧客価値創造部 阿部永さん
「小田急ポイントアプリ」で次世代顧客の獲得と施策の反応率改善を実現
-2021年2月のローンチから約1年が経過しました。現時点での目標達成度と成果についてお聞かせください。
新田さん:小田急ポイントアプリの会員登録数は、新型コロナウイルスの影響が大きくなかなか伸びませんでした。やはり最初は実店舗でのコミュニケーションが中心となるので、実際に店舗に来てもらったお客さまにアプリのことを知ってもらい、会員登録までフォローをしていくことが重要ですが、うまく進みませんでした。
また、アプリをダウンロードしたお客さまの中でも、会員登録まで完了していないケースがありました。離脱の原因調査・対策検討をNTTデータに相談したところ、会員登録フローの中で離脱が多い箇所を調べていただき、離脱理由の深堀とそれを踏まえたアプリ改修に繋げることができました。
ダウンロード数や会員登録数と言った当初の目標は未達成になりそうですが、一方で小田急ポイントアプリを用いてセグメント毎に内容を出し分けしたところ、反応率がこれまでのダイレクトメールなどと比較して改善しています。さらに、性別・年代といった属性情報のみではなく、過去の購買履歴や、アプリの閲覧履歴などをもとにしたセグメント配信についてNTTデータより提案があり、効果検証を行いながら改善を行っています。
また、アプリ会員の平均年齢がこれまでの小田急ポイントカード会員全体の平均年齢と比較して約10歳程度低下、さらに年代間の偏りもこれまでより少なくなっています。目標としていた次世代顧客の獲得はできているので、今後、新規会員獲得のためのプロモーションを継続して実施することで、さらなる獲得をめざしたいと考えています。
顧客価値創造部 新田さん
経営ビジョンに沿ったデジタル活用で、沿線住民のさらなる満足をめざす
-経営ビジョン「UPDATE小田急」には、「デジタルプラットフォーム構築による顧客価値創造」が示されています。今回のアプリ・デジタルマーケティング基盤との関連についてお聞かせください。
経営ビジョン「小田急UPDATE」よりデジタルプラットフォーム構築による顧客価値創造イメージ
新田さん:当社は、もともと発展している拠点間をつなぎ、交通の利便性をあげることで収益を伸ばしてきましたが、日本全体で人口減少段階となり、競合との競争が激しくなってきています。
そのために、地域価値創造型企業として魅力ある街づくりを推進していく必要があると考えています。一つの方向性として、デジタルを活用して沿線地域を活性化していく、そのためのデジタルプラットフォームが今回構築したアプリとデジタルマーケティング基盤にあたります。小田急ポイントアプリはお客さまとデジタルプラットフォームを繋げるためのチャネルとして位置付けています。そこにMAを用いることで適切なタイミングでコミュニケーションを取っていくことができるようになると考えています。
また、小田急の持つさまざまなサービスにアクセス可能な統一IDである「ONE(オーネ)」との連携も重要と考えています。「ONE(オーネ)」では、沿線住民の方の利便性を向上させるため、暮らしに役立つさまざまなサービスを提供しています。そのサービス提供にあたり、マーケティングの一部を小田急ポイントアプリが担うことで、沿線住民の方のさらなる満足を実現できるのではと期待しています。
-今後の具体的なサービス構想・展開があればお聞かせください。
新田さん:2022年4月1日から「ONE(オーネ)」の新サービスとして「小田急おでかけポイント」が始まりました。「ONE」の会員登録をした上でPASMOを登録していただくと、小田急線のご利用で小田急ポイントを付与するサービスです。ポイント付与率は乗車回数に応じて段階的に変動し、乗車運賃に対して0.5%から最大12%の小田急ポイントを付与します。今後は小田急ポイントをPASMOにチャージできる機能も検討しており、より利便性の高いサービスの提供をめざしています。
おでかけポイント始まる!キャンペーン(ポスター)
https://one-odakyu.com/odekake-point
また、当社ではMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)としてさまざまなモビリティをシームレスに繋ぐサービスプラットフォーム「EMot」を運営しています。その「EMot」と今回構築したデジタルマーケティング基盤との連携も検討していきたいと考えています。「EMot」へのお出かけ先の提案と、周遊チケット・クーポンも合わせて、デジタルマーケティング基盤から送客するなど、利便性を高めることで小田急沿線住民の方の満足度を高め、住みたい街と思ってもらえるようサービス改善に努めていきたいと考えています。
https://www.emot.jp/
-今後の展開にあたって、NTTデータへの期待はございますか。
新田さん:統一IDである「ONE ID」と今回のアプリ・デジタルマーケティング基盤が、当社の掲げるリアルとデジタルが融合したきめ細かなサービスを提供するためのプラットフォームになっていくと思います。今後も、PASMOデータをはじめ小田急グループのさまざまなデータを活用しながら、小田急沿線住民の方に満足していただける新たなサービスを提供していくために、NTTデータの協力に期待しています。
-本日はありがとうございました。