NTT DATA

DATA INSIGHT

NTT DATAの「知見」と「先見」を社会へ届けるメディア

キーワードで探す
カテゴリで探す
サービスで探す
業種で探す
トピックで探す
キーワードで探す
カテゴリで探す
サービスで探す
業種で探す
トピックで探す
2022.3.16業界トレンド/展望

簡単図解!マーケティングROIのよくある悩みと解決策

多くの企業でおこなわれているマーケティング活動。その成果を計る指標のひとつである「マーケティングROI」の考えは広く知られていますが、利益とは何の利益を指すのか、費用とは勘定科目で何を指すのかなどを明示するケースが少ないため、実践出来ずお困りのマーケティング担当者の方は意外と多いのではないでしょうか。本記事では、そんなマーケティング担当者の抱える「あるある」なお困りごとに合わせた解決方法をひとつずつ紐解いていきます。

NTTデータのマーケティングDXメディア『デジマイズム』に掲載されていた記事から、新規事業やデジタルマーケティング、DXに携わるみなさまの課題解決のヒントになる情報を発信します。

岡本 直也
株式会社NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 スマートライフシステム事業部 交通・観光統括部 デジタル推進チーム 課長代理
前職では、マーケティングコンサルタントとしてリテール事業者・メーカー各社様へのマーケティング戦略策定支援・実行支援や、販促オペレーション部門の管理者として数千万人に対するデジタル・リアル媒体のサービス企画・運営・業務改善に従事。他、新規事業やサービス立上げにおけるプロジェクトマネジメントなど幅広く担当。

マーケティングROIあるある①:そもそもどう計算するの?

あるマーケティング部門での会話

Aさん「今回の販促施策の効果はどうだったの?」
Bさん「今回の施策は、前回よりも売上が〇%増加して、CVRが〇%改善されました。」
Aさん「では、使った費用に対していくら儲かったの?」
Bさん「・・・・」

みなさんもこのような場面に遭遇したことはないでしょうか?もしかすると、Bさんは商品をいかに多く売るか、販売目標だけを追っていたのかも知れません。使った費用に対していくら利益が出たか、このシンプルな問いに答えられずに悩んでいるマーケティング担当者は意外と多いと思います。それでは、マーケティング部門としてどのような視点が必要なのでしょうか。

マーケティングって何?

そもそも、マーケティングとは何のことを指すのでしょうか。

マーケティングの定義は諸説ありますが、概ね共通しているのは、「顧客に価値を提供することにより、企業が継続して利益を生み出すためのさまざまな活動」ということです。つまり、最終的に「いくら売り上げたか」だけでなく「いくら利益が出たか」を検証する必要があります。「効果を利益に換算するといくらになるのか」「掛けた費用に対して見合う効果かどうか」など費用対効果の視点で見直してみると、取り組んできた活動の課題に気づくかも知れません。

マーケティングの費用対効果って何?

費用対効果とは、文字通り、掛けた費用に対して得た効果(利益)を指します。費用対効果を図る指標としてROI(Return On Investment)が使われることが多いですが、マーケティング活動においては、ROIの計算式は以下で示されます。

マーケティングROI
=[粗利(売上-原価)-販売費-マーケティング費用]÷マーケティング費用×100

<計算例>
マーケティング費用に1,000万円掛け、売上が1億円だった。(原価7,000万円)。
販売に掛かる費用は500万円発生した。

マーケティング費用:1,000万円
売上:1億円
原価:7,000万円
販売費:500万円*原価に含まれない販売に至るまでの費用(広告宣伝費・輸送費・人件費など)

((1億円-7,000万円)-500万円-1,000万円)÷1,000万円×100
マーケティングROI=150%

マーケティングによる利益とROIを図解すると?

マーケティングによる利益

マーケティングROI

販売費とは?

「販売費」は、商品・サービスの販売に直接必要となる費用を指します。マーケティングROIにおいて、販売費を引く理由は、「マーケティング費用には含まれないから」です。マーケティング費用が広告宣伝費を指す場合は、販売費の中の広告宣伝費分を重複して引いてしまうことになるため、粗利からマーケティング費用は引かず、販売費全体を引きましょう。

勘定科目

内訳

広告宣伝費

広告費(TVCM費、WEB広告、チラシ代など)

販売手数料

委託業者や販売代理店などへの手数料

荷造運賃

商品を顧客に発送するための郵送運賃

給与手当

営業担当の従業員の給料や手当

旅費交通費

営業における移動賃や出張費など

効果検証をする前に

マーケティングROIを把握するためには、施策を計画する段階からどのデータを使って効果検証すべきか、事前に決めておく必要があります。マーケティングROIを把握する目的は、その後の改善につなげることですので、集計作業に時間を取られすぎないように注意しましょう。

マーケティングROIあるある②:マーケ施策無しで買う人は効果に入れるの?

マーケティング部門での会話

Aさん「今回の施策では、使った費用に対していくら儲かったの?」
Bさん「今回の施策では、〇円使って〇円の利益が出ました。ROIは□です。」
Aさん「それって施策をしなくても買う人もいるんじゃないの?」
Bさん「・・・・・」

マーケティング施策による純増分をどう算出するか?

前章の計算では、1,000万円の費用を掛けて150%の利益を得た計算となりましたが、果たして本当にそうでしょうか。仮に1,000万円の費用を掛けなかった場合と比べて利益はどれくらい増えたのか、それがAさんの問いです。

マーケティング費用を掛けてゼロの状態から新規顧客や新たな販路を獲得した場合は、全てが純増となるので良いのですが、明確に純増分と既存分が区別出来ない場合はどうすればよいでしょうか。

その場合は、マーケティング施策を行った場合の成約率としなかった場合の成約率を比較して、その差分から施策の効果を図ります。なお、マーケティング施策を行わない対象者をコントロール群と呼びます。

純増利益 計算式

施策実施者の成約率
=施策実施者の成約者数÷アプローチ数

施策非実施者の成約率
=施策非実施者の成約者数÷施策非実施者数(=コントロール群)

施策によって純増した成約率
=施策実施者の成約率-施策非実施者の成約率

アプローチ数×純増成約率=純増成約者数
純増した成約者数×客単価=純増売上

マーケティングROI
=[純増粗利(純増売上-原価)-販売費-マーケティング費用]÷マーケティング費用×100

純増(成約数増分)利益を図解すると?

純増(成約数増分)利益を図解

純増利益算出のポイント

施策の成果は、施策をした場合と施策をしなかった場合との差になりますので、コントロール群の設定は忘れずに行いましょう。コントロール群の数を設定する際、コントロール群の数が少なすぎると検証の精度が落ちますし、逆に多過ぎても本来施策でアプローチしたい人数が確保出来ない場合があります。統計的に意味があるコントロール群の数を設定したい場合は、以下の計算サイトを参考にすると良いでしょう。

カシオ 生活や実務に役立つ計算サイト ABテストのサンプルサイズの計算

マーケティングROI③:複数施策を組み合わせた時の費用対効果って?

複数施策を組み合わせた時、何が成約につながったのか

例えば、デジタル広告→オウンドメディア→メールのように、複数の施策(媒体)を組み合わせて成約に至った場合、マーケティングROIはどのように評価すべきでしょうか。

  1. 成約直前に実施した媒体(=メール)の費用に対する効果で評価する
  2. 成約直前かどうかに関わらず、全媒体の費用に対する効果で評価する

答えは2です。なぜなら、消費行動プロセス(認知→興味関心→検索→行動)において、成約直前の媒体だけが成約に貢献しているとは限らないためです。

もし、成約直前の媒体だけしか評価しない、つまりその媒体しか取り組まないことになってしまったら、実際に得られる効果は期待を下回る可能性があります。各媒体の効果を図るためには、下記のようにプロセス毎に場合分けをして、CVRを比較する必要があります。CV数とCVRとROIのバランスから最適な組み合わせを探していきましょう。

消費行動プロセスごとに図解すると?

消費行動プロセスごとに図解

メールを送信した施策は①③④です。CV数とCVRが高いのは①>②>③の順、ROIが高いのは③>②>①の順となります。もし、成約直前のメールだけを残してそれ以外を止めてしまった場合は、ROIは向上するかもしれませんが、CV数やCVRは変更前を下回る可能性があります。

複雑化するマーケティングROI。でも原理原則を忘れずに!

本記事では、マーケティング施策の費用対効果について、よくあるケースを取り上げてみました。実際に同じような体験をした方も多くいらっしゃったのではないでしょうか。

顧客接点の多様化やマーケティングツールの進化にともない、マーケティングROIの算出は年々複雑化しています。しかしながら、マーケティングROIの計算そのものは、掛けた費用に対する利益を算出することに変わりはありません。原理原則を押さえて今後のマーケティング活動にお役立ていただけましたら幸いです。

お問い合わせ