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2022.8.31業界トレンド/展望

プロダクト開発者が想う、プロダクトの裏にある“美しい”設計とは

世の中には様々なソフトウェアプロダクトがありますが、そこには開発者の想いやこだわりが込められています。今回はポイント/顧客管理SaaS「CAFIS Explorer」の開発の中心人物である藤田浩文さんに、NTTデータのデジタルマーケティング領域をリードする内藤一章さんが問いかけをしながらCAFIS Explorerに込められた想いに迫り、ともにこれからの企業と生活者の関係を語ります!

NTTデータのマーケティングDXメディア『デジマイズム』に掲載されていた記事から、新規事業やデジタルマーケティング、DXに携わるみなさまの課題解決のヒントになる情報を発信します。

対談

写真左:藤田浩文 写真右:内藤一章

藤田 浩文
株式会社NTTデータ ITサービスペイメント事業本部 SDDX事業部 マーケティングデザイン統括部 デジタルマーケティング担当 課長代理

内藤 一章
株式会社NTTデータ ITサービスペイメント事業本部 SDDX事業部 マーケティングデザイン統括部 デジタルマーケティング担当 部長

建築学でものづくりに目覚め、エンジニアの道に

内藤さん:藤田さんはCAFIS Explorerのプロダクトに命を注ぎ込んだキーマンとも言える存在です。建築学部を卒業した背景に、藤田さんのエンジニアとしての魅力が一つ隠れていると私は思っているので、まずはそのあたりから聞かせてください。

藤田さん:私は、大学時代に建築学や都市計画を学んでいました。コンセプトを作り、設計して模型を作ってはプレゼンをするという日々です。そこでものづくりの楽しさに目覚め、「デジタルで人・モノを循環させることで、経済活動が活性化する世界を作りたい」という想いを持って2007年に入社しました。

内藤さん:初めて藤田さんと2人で話した時の印象が鮮明に残っています。藤田さんは「とにかく美しいものが作りたいんです」と私に熱弁を奮ってくれました。エンジニアの想いとお客さま企業のビジネスをいかに接合させるかは、私の入社以来のテーマなので、「来たなっ」と思いました(笑)

藤田さん:内藤さんが私の熱弁に反応してくれて純粋に嬉しかったです。CAFIS Explorerの特徴を問われることはあっても、そこに込めた「想い」に目を向けてくださる方はあまりいないので。

先を見越した設計によって生まれた、“ツギハギ”にならない美しさ

内藤さん:CAFIS Explorerはどのようにして生まれたのですか?

藤田さん:実はCAFIS Explorerは2つの顧客管理システムのDNAが組み合わさってできています。1つは私が関わっていた『PentaSenser(ペンタセンサー)』です。

内藤さん:PentaSenserは百貨店にはじまり、ドラッグストア、GMS(総合スーパー)など幅広い業種のお客さま企業にご利用いただいているシステムですよね。

藤田さん:はい。百貨店向けには、一人ひとりと密な関係を築くために細かいところまでケアするシステムを開発しました。一方でドラッグストアやGMS向けには、百貨店とは桁違いの件数の購買を処理する必要があったため、いかに高速に処理するかを工夫しました。

内藤さん:お客さま一人ひとりと密な関係を築く百貨店と、多くのお客さまに効率よくお買い物をしていただくドラッグストアやGMSでは、システムに求められることが異なっていたんですね。

藤田さん:そんなPentaSenserを開発していた私たちの組織に、国内最大のカード決済ネットワーク『CAFIS』を担当する組織から共同開発の依頼がありました。その組織ではCAFISの知見を活かした『SmarP(エスマープ)』という強固なセキュリティ基盤を持つ顧客管理システムを開発していました。PentaSenserとSmarP、異なる強みを持つ両者のDNAを組み合わせることで、これまでにない顧客管理システムを作れるのではないかという期待のもと、CAFIS Explorerへの投資判断がなされました。

内藤さん:CAFIS Explorerを開発する上でこだわった点について教えてもらえますか。

藤田さん:それは『全体最適思考』という言葉で表現できます。多くのシステム開発では、「こういう機能が欲しい」という要望があったらそれを逐次“ツギハギ”で付け足していきます。そうすると、改修する度にシステムが複雑化していまい、次第に改修が難しくなってしまいます。

CAFIS Explorerの場合は、将来必要となるであろう約400の機能を洗い出すことからスタートしました。ここにはかなり時間をかけましたね。マーケットニーズや自分たちの経験則から、「いつかはこんな姿にしたい」という最終形の全体像を最初に定義したわけです。

さらに、「こんな要件が来たらこの設計データモデルで耐えられるのか」というシミュレーションを幾度も重ねることで、柔軟性の高いアーキテクチャを設計しました。後から新しい要件が入ることを想定して設計しているので、お客さま企業からの要望に合わせてカスタマイズができるようになっています。

内藤さんどれだけ機能を追加してもツギハギにはならない「美しさ」がCAFIS Explorerにはあるということですね。「計画立てて美しくつくる」という点で、建築学部の藤田さんならではの美意識を感じます。

藤田さん:ありがとうございます。『全体最適思考』の考え方は当初は開発チームにもなかなか理解されず、苦労しました。「お客さま企業の要望をすぐに満たしたい」という気持ちもわかりますが、単に言われた通りの機能をツギハギし続けることは全体の構造を崩すことにもつながります。「お客さま企業の要望の本質的な意味を解釈して、全体を見ながら実現方法を工夫しよう」とこだわりきりました。 

藤田さん

CAFIS Explorerに込めたこだわりについて語る藤田さん

CAFIS Explorerに込められたNTTデータの“ベストプラクティス”

内藤さん:世の中には類似のサービスが多く存在します。機能一覧は一見似通っていることが多いので、お客さま企業としては「あとはコストで比較すれば良い」となりがちです。実際それで悔しい想いもしてきました(苦笑)。

そのため私は、機能自体よりも、導入支援やコンサルティングなど機能を活用したサポートについて語ることが多いです。一方で、藤田さんの視点からは「もっとちゃんと機能を見てくれ」という想いもありますよね?

藤田さん:ありますね(笑)。お客さま企業との会話において特に感じるのは、会話の回数を重ねるほど、CAFIS Explorerが業務にフィットしていると感じていただけることです。表面上見える機能は、CAFIS Explorerのごく一部に過ぎません。様々な業務シーンを想定した本腰の議論をする中で、裏側に様々な工夫が施されていることに気づいていただき、安心感を持っていただけるケースが多いです。

内藤さん:そういう意味では、私としてもお客さま企業への伝え方を変えていかなければいけないですね。CAFIS Explorerの裏側の工夫について、もう少し教えてください。

藤田さん:例えばスーパーマーケットやショッピングセンターのレジはトランザクションが多いので、脆弱なシステムだと時間がかかったり処理が詰まったりします。CAFIS Explorerは時間が掛かっても問題ない処理はあえて少し遅めにして、その分レジの処理を速くする、というような工夫をしています。これはPentaSenser時代からの蓄積があるからこそできたことです。

内藤さん:この手の話はキリなく続きそうですね(笑)。先ほど『全体最適思考』の話がありましたが、CAFIS Explorerは一企業の中で様々な事業を持つお客さま企業へ適用できる点もご好評いただいていますね。

藤田さん:はい。例えばJR西日本さまでは、グループ内横断で使える共通ポイントと、商業施設・鉄道・ホテルなど各事業個別のポイントを共存させています。事業ごとにロイヤリティ施策を作り込んだ上で、グループ全体でお客さまは一意に特定することができます。そのため、複数事業をまたいで一貫性のあるOne to Oneマーケティングの実現が実現できます。

CAFIS Explorerには、これまで数多くのお客さま企業に顧客管理システムを導入してきたNTTデータの“ベストプラクティス”が埋め込まれています。一般的な顧客管理はこれで十分に実現できるはずです。その上で、「お客さま企業が導入したいことの80%は既存の機能をそのまま使っていただけます。企業独自のカラーを出すために20%の肉付けをしましょう。」とご案内しています。柔軟性のある構造を駆使することで、それぞれのお客さま企業にあったカスタマイズができるようになっています。 

CAFIS Explore

NTTデータのベストプラクティスに、各社独自のカラーを加えることができる

藤田さん顧客管理のシステムは、企業にとっては水道や電気と同じような重要なインフラだと考えているので、お客さま企業にとって長い間安心して使えるシステムであるべきだと思っています。そういう意味でCAFIS Explorer は自信をもって提供できます。

スクラッチ開発や内製を考えているお客さま企業もいらっしゃいますが、表面的には簡単に動いているように見えるシステムも、実際に作るとなると考えることは膨大です。お客さま企業には、システムの難しい部分は我々に任せていただいて、CAFIS Explorerを活用して「いかに効果的な販促を打つか」を検討することに注力してほしいと思っています。

理想は企業と生活者がお互いに高めあう関係

藤田さん:内藤さんはここ数年の顧客管理やロイヤリティプログラムの変化をどう見ていますか。

内藤さん実は私自身は、「顧客を管理する」「ロイヤリティを高める」という言葉があまり好きではありません。生活者の視点からすると、顧客として管理されるとかロイヤリティを計測されるとか、なんて企業目線・上から目線だろうかと。生活者と企業はもっと対等であるべきだと思っています。生活者は、それぞれの想いをもって企業の提供するサービス・商品・ブランドとつながっています。生活者の想いと企業側が提供するサービスがお互いに高めあう関係性を志向するべきだと思っています。

これを理想論と言う方もいると思いますが、お得感だけで繋ぎとめる関係性は早晩限界を迎えると思っています。日本は人口減少が進みますし、私のような40代と10-20代とでは価値観も大きく異なります。

一方的に企業都合の“お得”を送り続ける従来型のモデルからは、徐々に変わっていかなければなりません。また、私たちはその変革を支援できる存在でありたいと思っています。 

エンゲージメント

企業と生活者の間のエンゲージメントの高め方は多様化

藤田さん:確かにそうですね。でもそうなると、“お得”以外にはどんなつながりがあると考えていますか。

内藤さん:誰にも自慢の行きつけのお店が1つ、2つあると思います。そのお店を、なぜ自慢と思うか、なぜ行きつけか、を考えてみれば答えが出ると思います。そこには必ず“お得”以外の「つながり続けたいと思える要素」があるはずです。

先日対談させていただいた顧客時間の共同CEO奥谷孝司さんがよく取り上げている『YAMAP』という登山アプリでは、登山に行って写真などをアップすると『DOMO』というポイントが貯まります。貯まったDOMOは山の保全や登山道整備などのプロジェクト支援に使うことができます。そこには企業として山が好きな生活者が本質的に求めている価値を突き詰めたいという明確な思想があり、その思想に共感する生活者が集って自然とコミュニティにも似た顧客基盤が構築されています。ある種、企業と生活者の理想的な関係性がYAMAPにはあると思います。

「つながっている価値」がない企業からは顧客が消える!? DX狂騒時代の新しいマーケティングの基本とは
https://www.nttdata.com/jp/ja/data-insight/2022/0712/

藤田さん:そのように企業と生活者の関係が変わると、CAFIS Explorerが果たす役割も変わっていきますね。

内藤さん:私はCAFIS Explorer をレガシーな“お得提供システム”に閉じ込めてしまうともったいないと思っています。企業と生活者の関係性が変化しても十分に追従できる機能は有しているので、あとは私たち自身がどういう世界観を実現したいかというWillにかかっていると思うんです。もっと言うと、私たちサービス提供側の思想そのもののUpdate次第だと思っています。

藤田さん:たしかにそのような機能を実現することは十分に可能ですね。私も、CAFIS Explorer を時代に合うものへと進化させていくことは常に考えています。エンジニアとして時代の流れを感じながら、本質的に求められるものを提供できるソフトウェアを提供していきたいと思います。

対談

対談を終えた藤田さんと内藤さん

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