NTTデータのマーケティングDXメディア『デジマイズム』に掲載されていた記事から、新規事業やデジタルマーケティング、DXに携わるみなさまの課題解決のヒントになる情報を発信します。
SNSユーザーをより深く理解するには?
SNSデータを分析する際、投稿内容だけではなく、投稿した人についても分析したい、と考える方も多いのではないでしょうか?実際にNTTデータにも、「自社商品についてツイートしている人がどんな人なのか知りたい」という声をよくいただきます。しかし、Twitter社が公開しているTwitter APIでは、ユーザー属性に関する情報は提供されていないのが実情です(2023年3月1日時点)。
そこでNTTデータでは、対象アカウントの性別や年齢といったユーザー属性を推定できる「TwitterユーザプロファイルDB」というサービスをご提供しています。
「TwitterユーザプロファイルDB」は、NTTデータが国内で唯一ご提供可能なTwitter全量データを元に対象アカウント群の過去ツイートを分析、ユーザー属性等の推定を行うサービスです。性別、年齢、居住地(都道府県)といったデモグラ情報に加え、趣味嗜好やライフイベントと言った情報の推定まで可能となっており、幅広い用途でご活用いただけます。
「TwitterユーザプロファイルDB」で推定可能なユーザー属性
よくある「TwitterユーザプロファイルDB」の活用例を2つほどご紹介します。
<活用例①>商品購入層をより深く理解する
ある商品カテゴリーに対し、その購入者をより深く知りたいと考えることはよくあることだと思います。Twitter上には、アンケート等には現れづらいちょっとした思いやささいな行動に関するツイートが溢れているので、上手く活用することで、新たな気づきを得られる場合があります。
例えば、ビール購買者から抽出したアカウント群に対し、「TwitterユーザプロファイルDB」を使って趣味嗜好を推定します。すると、「ダイエット」に関する関心が高く、その中でも特に「ヨガ(ホットヨガ)」関連のツイートが多いという傾向が見られました。「健康のために体を動かすこと」と「ビールを飲むこと」は、一見相反する行動のようにも思えます。しかし、「汗をかいた後のビールは最高に美味しい」と捉えることで、ヨガ好きな人たちを対象にしたプロモーションや、同じ文脈を用いた別商品のプロモーションを検討できるかもしれません。
<活用例➁>自社商品に合ったインフルエンサーを発見する
インフルエンサーマーケティングを検討する際、まず気になるのはそのフォロワー数だと思います。しかし、フォロワー数の多さだけでインフルエンサーを決めても良いのでしょうか?
NTTデータでは、候補となるインフルエンサーのフォロワー群に対し、「TwitterユーザプロファイルDB」を用いて属性推定を行い、そのフォロワー属性を確認いただくことを推奨しています。純粋なフォロワー数だけでなく、ターゲット層の含有率を考慮することで、実施施策とより相性の良いインフルエンサーを見つけることが出来るかもしれません。
なお、NTTデータでは、「TwitterユーザプロファイルDB」を用いて特定のTwitterアカウントのフォローまたはフォロワーの属性推定を行う「フォローフォロワー属性分析」というサービスも提供しています。
「フォローフォロワー属性分析」のサービスイメージ
フォロワー属性分析から見えること ~ある化粧品ブランドアカウントの実例~
ここからは、実際に「フォローフォロワー属性分析」を使った分析についてご紹介します。今回は、ある化粧品ブランドのアカウントを対象に、フォロワー属性の簡易分析を行ってみました。
<分析①>類似ブランドのフォロワー属性比較
まずは、フォロワー数が同程度で同じ店舗で販売されることも多い、ブランドAとブランドBのアカウントについて、それぞれフォロワー属性分析を行いました。
下のグラフはフォロワーの職業を推定したものです。どちらも会社員が50%を占める一方、2番目に多い職業はブランドAの「主婦(14%)」に対し、ブランドBは「大学生(13%)」でした。ブランドBは主婦も12%いますが、大学生はブランドAが7%、ブランドBが13%と約2倍の差があるようでした。この結果から、大学生向けの企画がより適しているのはブランドBと言えそうです。
化粧品ブランドA・Bのフォロワー属性(職業)
このように職業の違いを見るだけでも、フォロワー数という漠とした数字だけでは見えない情報が見えてきます。そこから新たなプロモーションを考えたり、ターゲットの近い他商材とのコラボを検討したり、より解像度の高いマーケティング施策につなげることができます。
<分析➁>ブランドターゲットとフォロワー属性の比較
実は上記2ブランドは商品コンセプトや価格帯の異なるブランドです。つまり、分析①の差は、生活者が感じるブランドイメージの違いによるものかもしれません。
では、ブランドイメージとフォロワー属性は一致するものなのでしょうか?
この疑問に答えるため、前述の2ブランドよりも高価格帯の商品を扱うブランドC(デパコスに分類されるブランド)について分析してみます。公知情報によると、ブランドCは30代・40代向けのイメージが強いと紹介されています。
下のグラフが、ブランドCのフォロワー属性分析結果です。確かに30代ユーザーの含有率は高い(40%)ものの、20代ユーザーが同程度の割合(39%)で含まれていることが見て取れます。一方、40代ユーザーの含有率は20代ユーザーの半分以下(17%)です。このように、ブランドイメージとフォロワー属性は必ずしも一致するわけではないようです。
化粧品ブランドCのフォロワー属性(年代)
ブランドイメージとは異なり20代フォロワーが多い理由について、NTTデータが提供するTwitter分析サービス「なずきのおと」を使って、ブランドCに関するツイートを基に分析してみましょう。
まずは、ブランドCのどんなところが評価されているのか調べるべく、評判分析を行いました。商品自体の評価が多く語られている中で、「BA(Beauty Adviser)」という単語が見られました。評判の内訳としては「好意」「賞賛」といった肯定的な傾向が表れています。
2022/10/24週~2023/1/23週 化粧品ブランドCのBAに関する評判分析
ブランドCのBAに関するツイートは、以下のようなものでした。
・ BAさんとても良かった…初めて行ったけど優しかった
・ 対応してくれたBAさん、気さくな方で緊張し過ぎず買い物できました🙌
・ 担当してくれたお姉さんめちゃんこいい人で説明わかりやすくて、絶対にまた来ようと誓った。 推しのBAさんに出会うとマジで楽しいな
注)対象ツイート内のBAに関する文脈部分のみを抜粋しています。
私自身、デパートのコスメカウンターへ初めて行った際には、何となく敷居が高く、相手にしてもらえないのではないかと不安に思った記憶があります。ブランドCが30代・40代向けのイメージを持たれていることを考えると、特に20代の生活者にとっては、来店することに気後れしてしまいそうな印象を受けます。しかし、店頭に立つBAさんのコミュニケーションによって、気持ちよく買い物できる場となっているようです。
このような口コミが広がることによって、ブランドイメージよりも若い世代が気兼ねなく来店できるブランドとしての認知が広がり、多くの20代ユーザーが公式アカウントをフォローしているのかもしれません。
続いて、トピック分析(頻出している単語の時系列推移の分析)を行いました。ブランドCは一般的な若年層向けブランドと比べて、商品価格が高めに設定されています。そのため、「価格」に関するツイートが一定数あるようでした。特に新商品の予約や発売の前後ではツイート数が伸びる傾向にありそうです。
2022/10/31週~2023/1/30週 化粧品ブランドCのトピック分析
「価格」トピックに関する実際のツイートが以下となります。
・ 理由なしに買うアイシャドウとしてはちょっと値段が高いから…
・ 値段が私の身分に合ってないしまだ我慢かなぁ…!
・ ちょっとお値段するけど夜だけならコスパ良いし、
・ お値段は張りますけど、現物見るとマジで欲しくなりますわね
・ お値段お高めなので私も手持ちアイテムは少ないのですが、
・ めっちゃ欲しいけど値段可愛くない
注)対象ツイート内の価格に関する文脈部分のみを抜粋しています。
ツイート内容から、「欲しいけれど高価なので買えない層」と「高価ではあるが何らかの理由を付けて購入している層」が存在していることが見えてきました。ブランドCは「憧れブランド」としての地位を築いており、日常的に購入するものではなく、自身へのご褒美やプレゼントといった、特別なタイミングに購入されている可能性がありそうです。
その他にも、若い世代に支持されている有名人がブランドCの商品を紹介していた旨のツイートも見受けられ、ブランドイメージよりも若い世代が接点を持ちやすい好循環が生まれているようでした。
以上の結果から、ブランドCは商品自体の質の良さは勿論のこと、顧客を選ばない分け隔てない接客等から口コミ効果が生まれ、若い世代含めてとっておきを買いたいタイミングに選ばれているようでした。そのため、引き続き「憧れブランド」としてのイメージを維持するとともに、特別なタイミングで選びたくなるようなキャンペーン等を展開することで、更に顧客を広げていくことが出来るかもしれません。
フォロワー「100人」の意味とその価値
今回は、Twitter分析における「ユーザー属性」に着目し、表面的な指標には現れづらい特徴や傾向の抽出をめざしました。
2つの化粧品ブランドの分析では、商品が同じ店頭に並ぶ同規模のアカウントであるにも関わらず、フォロワーのユーザー属性が大きく異なりました。自社ブランドにてこうした分析を行う場合には、競合アカウントとの共通点・相違点を把握し、ブランド戦略にも活かすような活用方法が考えられます。
高価格帯の化粧品ブランドの分析では、一般認知されているブランドイメージとは異なる年齢層のユーザーが、高い関心を寄せていることが分かりました。また、その関心内容を分析することで、アンケート等では見えてこない評価やブランドとのタッチポイントを垣間見ることができました。こうした分析から新たなコミュニケーション施策に取り組むことで、顧客拡大につなげることができるかもしれません。
デジタルマーケティング領域においては、数字で語られるシーンが多くありますが、SNS上の「100人」が意味するのは単なる「100」という数字ではなく、1人1人の気持ちや行動が積み重なった、立体的な意味をもつ指標であると考えています。今後もNTTデータでは、Twitter全量データを活用し、表面的な数字には表れづらい、新たな気づきを得るための仕組み作りを進めてまいります。