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顧客のDX変革をリードするSalesforce Global One Team
NTTデータは世界各国で「Salesforce」の認定資格・知見を持つプロフェッショナル人財が顧客のDXを支援している。Salesforce Global One Teamのリーダーを務めているNTT DATA Servicesの安積 泰は、チーム発足の狙いを次のように話す。
「多国籍チームのメンバーは30カ国に点在し環境もばらばらですが、DXを中心とするコンサルティングサービスでは、顧客の現場に入り、課題解決を一緒に進めていく必要があります。そのため、一極集中での人財投資・オペレーションにはどうしても限界が生じてしまいます。我々のようなITを中心とするビジネスだけではなく、グローバル全域に展開するあらゆる業種の顧客が、グローバルによるガバナンス・効率化とローカルによる機動力・差別化のバランスを模索しています。NTTデータは、Salesforce Global One Teamという運営組織とTechnology Focus Areaという戦略投資プログラムを駆使し、持続可能な成長を実現、顧客へのサービスを展開しています」(安積)
Salesforce Global One Teamの人材は実に多様だ。例えば中央ヨーロッパのドイツ、スイス、クロアチア、ルーマニアにおけるSalesforceプラクティスを見てみても、従来は男性中心であったり、年齢層が偏りがちであったが、現在はシステム開発の現場組織においてもジェンダー・年齢・国籍が多様化している。
「成長著しいDX人財の多様化に向けた採用・育成などの取り組みは、そのリソース枯渇への対応という視点だけではありません。アーキテクチャやデザインなどのデリバリー強化として、組織の効率化や新たな視点による競争力の強化につなげるためにも必然となっているといえるでしょう」(安積)
DXをリードする人財の育成・強化は、NTTデータ単独ではなく、顧客とともに共同で推進している事例もある。
「欧州大手の銀行とは『Salesforce BANKING CAMP』というプログラムをつくり、SalesforceのプラットフォームやDXに関する知見を持たない社員に対し、8週間の初期トレーニングコースを整備しました。その後は現場OJTとレベルチェックのテストを実施し、顧客とNTTデータで認定するSalesforce BANKINGコンサルタントの認定資格を授与しました。我々は一過性のベンダー的な役割を担うのではなく、長期的視点からお客様と一緒にDX人財の育成・強化に取り組んでいます」(安積)
NTTデータのSalesforceサービスは着実に実績を積み重ねており、世界的アナリスト企業であるネルソンホール社による最新レポートでは、Salesforceサービス業界全体のリーダーとして格付けされている。また、Salesforce社の全案件を対象とした「Partner Innovation Awards」も3年連続で受賞している。
NTT DATA Spainによるスペイン大手銀行BBVA社のDXプロジェクト
Salesforce Global One Teamの代表的な事例の1つが、スペイン大手のビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行(BBVA社)への「Net Zero Cloud」の導入、およびコンサルティングサービスだ。SalesforceのSaaSプロダクトであるNet Zero Cloudは、企業の環境データを迅速に収集・分析・報告しGHG排出量の削減につなげる製品サービスである。
NTT DATA SpainのBBVA担当マネージャーを務めるIvan Ruiz Ibanは、NTT DATA SpainとBBVA両社の関係について次のように説明する。
NTT DATA Spain
BBVA Spain Client Manager, Partner
Ivan Ruiz Iban 氏
「NTT DATA Spainは20年以上にわたりBBVA社をサポートしてきました。BBVA社は経営戦略としてグローバルかつ包括的な方法でのデジタル変革を重視しており、組織構造、企業文化、顧客との関係、日常業務の遂行方法などで大きな進化を遂げています。私たちは、グローバルマーケット部門において、世界最高水準の技術ソリューションの展開と統合に協力しています。また、クラウド移行やデータ分析、顧客管理プラットフォームのデジタル変革といった支援も行っており、複合的なアプローチでBBVA社のDXをサポートしています」(Iban)
BBVA社では近年、サステナビリティ推進が重要視されている。NTT DATA Spainの気候変動・環境テクノロジー担当マネージャー Jesus Carrascoはその背景を次のように説明する。
NTT DATA Spain
Climate Change and Environment Technical Manager
Jesus Carrasco 氏
「近年は、サステナビリティ=経営的・経済的にプラスの影響をもたらすものという考え方が主流であり、そのことからビジネスは経済性・利益と同様に、環境への配慮も求められています。環境・社会・経済は相互に作用するため、企業は自社のプロジェクトが自然環境にどう影響するのかを考えなければいけません。また、男女平等や多様性への取り組みが企業の収益やクライアントに好影響を与えることもあります。ESG経営は環境・社会・経済における課題に企業がどのように取り組んでいるかを示す青写真であり、持続可能なビジネスへの移行を推し進めていくためにも、データを統合・活用して意思決定を加速させる必要があります」(Carrasco)
BBVA社はサステナビリティを推進するためのツールとして、Salesforceの「Net Zero Cloud」の導入を決め、支援パートナーとして、長年の実績からSalesforce業務を熟知しているNTTデータを選んだ。
NTT DATA SpainのSalesforce Net Zero Cloud担当マネージャー Pablo Rubio Yuberoは、BBVA社への導入効果について次のように説明する。
NTT DATA Spain
Salesforce Net Zero Cloud Practice Leader, Manager
Pablo Rubio Yubero 氏
「Net Zero Cloudの導入前は、データ収集とデータの品質確保に多大な時間と労力を要していましたが、現在は、自社オフィス・業務の主要な環境指標を容易に監視できるようになりました。さらに、環境コミットメントと比較した環境戦略を分析するためのさまざまな予測・シナリオを作成することもできます。例えば7,000カ所以上の自社拠点のGHG排出量を管理し、100以上のKPIを用いた環境戦略の進捗分析も可能になります。プロビジョニング(予測)に要する時間も16%短縮できる見込みです」(Yubero)
BBVA社のサステナビリティ推進はまだ始まったばかりだ。今後は、環境問題解決に特化した資金調達、グリーンファイナンスへの取り組みを加速させ、カーボンフットプリントの削減などにおいて自社が掲げた高い目標の達成もめざしていく。
「最もインパクトのある目標は、世界中の大規模産業の持続可能な変革を後押しするグリーンファイナンスへの挑戦です。2025年までに2,000億ユーロという目標を設定し、コミットメントを倍増させています。さらに再生可能エネルギーの使用やカーボンフットプリントの削減など、多くの分野で非常に野心的な目標を掲げています。Net Zero CloudはBBVA社の先進的な環境戦略プロジェクトの基盤となることが期待されています」(Iban)
サステナビリティを意識したビジネス推進は「もはや必要不可欠」
NTTデータの安積は、日本国内におけるGHG排出量可視化プロジェクトの一例として、製造業のケースを挙げた。
この事例では、GHGプロトコルのスコープ3——すなわち自社以外の広範囲なサプライチェーンも含めた温室効果ガス排出量の把握・可視化を視野に入れ、特に製造業で発生する多種多様な部品・部材レベルから遡り、完成品あたりの温室効果ガスをトラッキングできるシステム構築に取り組んだ。
「膨大な部材単位・部品単位のトラッキングには、さまざまな情報ソースからのデータ抽出が必要で、複雑な構造や集積能力を要します。その要素の一部にもSalesforceのSaaSプラットフォームが使われています。これにより、グローバル全域に及ぶ部品表・商品マスターの一元管理が可能となり、最終製品に含まれるGHG排出量を連結ベースで可視化できます。最終製品に含まれるGHG排出量をGHGプロトコルで定められるスコープ別にブレイクダウンさせることで、正確なアクションができるようになります。モニタリングから分析・削減に向けたアクションまで、サプライチェーン全体に及ぶ活動をカバーできるシステムだといえるでしょう」(安積)
NTT DATA Services
Salesforce TFA & Global One Teamリーダー
シニア・ディレクター
安積 泰 氏
安積は「人財のダイバーシティや環境課題など、サステナビリティを意識したビジネス推進は、もはやビジネスの現場で必要不可欠な状態」だと語り、協業によるサステナビリティ推進を加速していきたいと意気込む。
「NTTデータでは、当社の持続可能な組織・人財強化とお客様課題の解決に向けて、グローバルの現場レベルでさまざまな取り組みを行っており、NTTデータ内のサステナビリティ推進が、競争力・サービス力の強化にもつながっています。そして、昨今のDXの取り組みにあわせて環境課題への取り組みでは、特にデータ収集の自動化・可視化、分析・予測可能なプロセス・システムの構築が重要となっており、その膨大で複雑なデータをいかに効率・効果的に活用するかがポイントです。データの収集、排出量算定、結果の活用——これら3つの目的を実現することが求められていくと考えます。
そのような状況下で、お客様、Salesforce、NTTデータによる共通の取り組みが成功のキーとなっており、サステナビリティ課題の共通認識が変革に向けた実行を加速します。共同のパートナーを含めた協業により、人財・知見・実行段階でのベストプラクティスなど効率的に取り組みながら、プロジェクトを成功に導いていきたいと考えています」(安積)
NTTデータのSalesforceソリューションについて詳しく知りたい方はこちら
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/salesforce/
本記事は、2023年1月24日、25日に開催されたNTT DATA Innovation Conference 2023での講演をもとに構成しています。