- 目次
1.クラウド市場における新たなマーケットと成長率
クラウド市場はこれまで、以下5つのマーケットで定義されていました。
- コンサルティング(Consulting)
- 開発(Deployment/Development)
- 運用(Managed)
- 移行(Migration)
コンサルティング、開発、運用、移行といったライフサイクルを踏まえて複数のマーケットをワンストップで対応するマーケットとして「エンドツーエンド(End-to-End)」が新たに定義されました。(※1)
図1:クラウド市場における各マーケットの規模と成長率
図1のように、従前から定義されていた5つの個別マーケットの規模は小さくなり、年平均成長率(CAGR)がマイナスとなるものあります。従前から最も成長率の高かった運用(Managed)市場は引き続き高い成長率を維持しています。(※2)
一方で、エンドツーエンドのマーケットは非常に大きく、2026年には約33兆円($247B)(※3)に到達すると予想されています。クラウド市場は、単にクラウドを利用するのではなく、ビジネス成果を最大化するためにどのようにクラウドを活用するかというニーズへ変化しています。複雑かつ多岐に渡るクラウドサービスを適切に活用しつつ、ビジネス成果を最大化させることは簡単ではありません。ビジネスプランの検討、計画したプランの実行、ITシステムの運用、ビジネスプランの改善といったフルライフサイクルをエンドツーエンドで対応することが求められているのです。
グラフ/チャートはGartnerリサーチに基づきNTTデータが作成したものです。ここに記載のある数値は、NTTデータにより算出されたものです。出典:Gartner®, Market Opportunity Map: Cloud IT Services, Brandon Medford et al., 16 Sep 2022
為替レート135円/USDにて算出したものです。
2.エンドツーエンドを支える人財とコンポーザブルテクノロジー
クラウドに関するコンサルティング、開発、運用、移行を個別に支えるテクノロジーやサービスは多数存在しており、成熟しているものもあります。では、エンドツーエンドのマーケットでは、何が求められるでしょうか?
(1)フルライフサイクルをカバーする人財とテクノロジーアセット
エンドツーエンドのマーケットは、コンサルティング、開発、運用、移行といったフルライフサイクルにまたがります。そのため、それぞれの工程を高速化、高品質化、省人化するような人財とテクノロジーアセットが必要です。
図2:フルライフサイクルにおいて必要となる人財とテクノロジーアセット
不確定要素の多い状況の中、特に重要になるのが構想立案や企画検討フェーズ(工程)を支えるコンサルタント人財や、テクノロジーアセットです。ビジネス成果を最大化するために、どのような手段を取るか、クラウドを活用することで、迅速かつ高品質、さらには適正コストで実現できるかなど、多岐にわたる知識や経験が求められます。
開発フェーズの取り組みは進んでおり、さまざまな知見が蓄積されています。たとえば、クラウドアーキテクトやエンジニアの育成、開発テンプレートやIaC(Infrastructure as Code)スクリプトの標準化などです。
ビジネス成果を最大化するためには運用フェーズの改革も必要です。従来の、決められた手順による安定運用と維持から、運用状況を可視化し、改善ループを迅速にまわすことで変化に柔軟に対応することが求められています。そのためには、自動化などの仕組みを用いて継続的な改善を実現するxOpsと呼ばれる技術や、ソフトウェア技術を用いて改善するSRE(Site Reliability Engineering)人財が必要です。
(2)ビジネス成果を迅速に提供可能とするコンポーザブルテクノロジー
エンドツーエンドでビジネス成果を迅速に達成するためには、フルライフサイクルといったフェーズの観点だけでなく、ホリゾンタル(全業種・業界向け)からバーティカル(業種・業界特化)への対応も求められます。
特定業種・業界向けをサポートするテクノロジーとして注目されているのが、「コンポーザブルテクノロジー」です。Gartner社のハイプ・サイクルにおいても、コンポーザブルテクノロジーは、今後2~5年の間に飛躍する技術として、現在期待のピークに到達しています。
図3:エンタープライズアーキテクチャーの進化
図3はこれまでのシステムアーキテクチャーの進化を示しています。システム全体をパッケージングするモノリシックなアーキテクチャーから、ある程度の粒度のサービスを組み合わせてシステムを実現するマイクロサービスへと変化してきました。モノリシックなアーキテクチャーでは、システム全体を1つの大きなアプリケーションとして管理するため、管理が容易な反面、全ての機能が密結合されているため、変更が難しい課題があります。マイクロサービスは、個々のサービスがモノリシックなアプリケーションと比べて小さく、独立しているため変更が容易である反面、それぞれが独立しているため全体の管理が困難という課題があります。
モノリシックとマイクロサービスの中間に位置づけられるのが、コンポーザブルアーキテクチャーです。コンポーザブルアーキテクチャーは、ビジネス的な意味を持つアプリケーションをPBC(Packaged Business Capability)としてカプセル化し、PBC同士を連携させてシステムを実現する仕組みです。PBCを組み合わせることで業務アプリケーションの提供速度をあげ、モノリシックな管理容易性とマイクロサービスのような俊敏性を両立できます。
図4:コンポーザブルアーキテクチャーの概要
コンポーザブルアーキテクチャーに基づくアプリケーション、「コンポーザブルアプリケーション」の開発方法を図示したのが図4です。さまざまなPBCをマーケットプレイスで管理し、複数のPBCを「コンポーザブルプラットフォーム(Composable Platform)」上へデプロイし、統合することでコンポーザブルアプリケーションを迅速に開発できます。
コンポーザブルアーキテクチャー実現のためには、APIなどのシステム連携技術やコンテナオーケストレーション技術、データ連携技術、UI/UX開発技術、Agile/DevOps技術、ローコード技術など、さまざまな技術が必要となります。また、PBCを用いて、コンポーザブルアプリケーションを開発するコンポーザー(開発者)と呼ばれる人財が重要です。
コンポーザブルアーキテクチャーを用いたサービスも市場に出始めてきており、スタートアップや大手ITサービス・プロバイダーの中にはPBCの形式でサービス提供している企業もあります。
エンドツーエンドの狙いでもあるビジネス成果を迅速に達成するためには、全業種・業界向けのホリゾンタルな仕組みだけでなく、業種・業界に特化したバーティカルな仕組みが必要です。そのために特定業種・業界の機能をパッケージし、組み合わせて迅速にサービス提供を可能とするコンポーザブルテクノロジーの実現が鍵となります。
3.独自の「クラウドテンプレート」で、さらに高速にエンドツーエンドを実現
NTTデータは多岐にわたる業種・業界のノウハウや経験、さらに特定業種・業界向けのサービス(PBC)を有しています。それらを活用し、図5のように特定業種・業界向けのPBC開発に必要となるクラウドテンプレートをインダストリアル・テンプレート(Industrial Template)として整備し、コンポーザブルアプリケーション開発をさらに高速に実現できます。
図5:NTTデータにおけるコンポーザブルアーキテクチャーの取り組み
またNTTデータでは、フルライフサイクル(コンサルから開発・運用まで)およびフルスタック(ホリゾンタルからバーティカルまで)に対応できるテクノロジーアセットの整備とクラウド人財の育成にも取り組んでおり、素早くビジネス成果を最大化したいお客さまをサポートします。
図6:フルライフサイクルにおけるNTTデータの取り組み
4.まとめ
クラウド市場と共にエンドツーエンドのマーケットは大きく成長すると予想され、その中でフルライフサイクルのワンストップ対応やバーティカル(業種・業界特化)への対応が求められると考えられます。
これまでも、NTTデータではクラウドに関するコンサルティング、開発、運用、移行といったフルライフサイクルをワンストップでサポートしてきました。今後はグローバル含めたグループ全体で、多岐にわたる業種・業界のノウハウや経験を基にしたコンポーザブルテクノロジーを活用し、お客さまのビジネス成果最大化を実現します。
図7:NTTデータのクラウド技術戦略(※4)
iRES:https://dc.jp.nttdata.com/iRES/index.html
iQuattro:https://iquattro.nttdata.com/
OpenCanvas:https://portal.opencanvas.ne.jp/cloud/
A-gate:https://agate.nttdata.com/
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